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第二章 支配に侵された魔の手 第二十二話 救えなかった存在

 

 

魔界大帝國 最上階 会議室

 

そこには、電気の一つも付いてない、月明かりだけで照らされている会議室

 

大きな大理石で出来た細かい装飾のある長いテーブル

席には、2人が座っていた。

 

一人は、テーブルに肘を置いている。

 

 

???

「ヤァ、久しいね。ニヒツくん」

 

ニヒツ

「うん、お久しぶりです」

「先代国王のバアル・ダガヴォール」

 

バアル

「アッハハ、そんな本名まで言わなくてもいいよ」

「ニヒツくん」

 

 

魔界大帝國 第5695代目国王 バアル・ダガヴォール

 

 

ニヒツ

「別に、僕がそう呼びたいから呼んだだけです」

「バアルさん」

 

バアル

「そうかい」

「だが、弟のせいで魔界は醜くなってしまったのか…」

 

ニヒツ

「それに、関しては僕たちにも多少、非はある」

 

バアル

「此処まで、魔界が可笑しくなったのは…弟のせいなんだ」

「アイツが、俺の死如きで…とち狂って…」

 

ニヒツ

「確かに、“ 死如きで ”と言う言い分は分かります」

「バアルゼブルは、貴方を尊敬していた。それが突然、“ 死 ”と言う形で崩れたんです」

 

バアル

「だが、魔界がここまで可笑しくなったのは、私の“ 死(・) ”を受け入れられなかったあの子が…」 

 

ニヒツ

「それを言うので有れば、元同盟国として正しい道に戻せなかった僕にも非は存在する」

 

バアル

「………………」

 

 

沈黙が、部屋を埋め尽くす。

 

 

バアル

「ハッハ…全くバカな弟だ」

「アイツをコチラ側に、連れて来たい」

 

「協力してくれるか?」

 

ニヒツ

「もちろん」

 

バアル

「嗚呼、助かるよ」

「あの子が、契約したのは“ 救済の一手 ”と言う契約だ」

 

ニヒツ

「それを、解く事が出来れば…」

 

バアル

「嗚呼、アイツは、お前…いやアンヘンガー帝國への邪念を取り払える」

「私は、少しでもあの子を楽にしてあげたんだ」

 

ニヒツ

「ですが、そうなると…」

 

バアル

「嗚呼、わかっているさ」

「あの子は、とっくに“ 汚染 ”されている」

 

ニヒツ

「その契約が終われば、残るのは“ 死 ”のみです」

 

バアル

「そうだ」

「“ 汚染 ”されたものは、二度と“ 純白 ”には戻れないのだから…」

 

 

ニヒツは、黙ってしまう。

 

 

バアル

「いいんだよ」

「こっちに来させて、アイツが、魔界でやって来た事の罪を償わせる」

 

ニヒツ

「そうですか」

 

 

バアルは、立ち上がる。

そして、大きな窓の前まで立ち、アンヘンガー帝國を見る。

 

遠くでは、赤黒い光が、宙に浮いていた。

 

 

バアル

「アイツは…」

「憎しみは何も生まないと言うのに…」

 

 

ニヒツも立ち上がり、バアルの隣に立つ。

 

 

バアル

「何故、あそこまで可笑しくなったんだ」

「バアルゼブル!」 

 

「お前は、そんな奴じゃ無かっただろう…」

 

 

バアルは、悔しさからか、目には大粒の涙があり、地面にへたり込んでしまう。

ニヒツもしゃがんで、寂しそうな顔をして、背中をそっと撫でてあげた。

 

 


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