第二章 支配に侵された魔の手 第十二話 秘密の鳥(カラス)
赤い月が、浮かび上がる満月の夜
そんなところを一羽の白い鳥が飛んでいた。
一羽の白い鳥が、洞窟の中に入って行く。
その後をついて行く導とシンソウの菅田があった。
小さな小川が流れ、血の一滴も感じさせない透明な湧き水から構築される小川
小川の周りには、赤い魔薔薇が咲き誇り、奥に進むほど紫色の魔薔薇に変わり、最奥には藍色の魔薔薇が三日月の様な形で咲き誇っていた。
奥は、洞窟だった。
だが、三つの三日月があった。
それぞれ、赤黒い三日月、黒紫色の三日月、藍色の三日月と…
その三月のうち、藍色の三日月は、大きくひびが入っており輝きを失っていた。
神陽導
「……!」
赤黒い三日月の上で、誰かが眠っておりその下には、止まり木とプーラの姿があった。
プーラは、止まり木に止まっていた白い鳥に話しかけていた。
プーラ
「お疲れ様です」
「ご褒美のみみずです。さぁ、お食べください」
白い鳥…いや…白い鴉は、与えられたみみずを無言で食べた後、頭を下げる動作をして、洞窟の入り口へと飛んで行った。
プーラ
「お待ちしておりましたよ」
「ヘルメス様、シンソウ様」
神陽導
「うん、やっと来れた」
「でも、なんでここにいるの?」
シンソウ
「普通でしたら、紅月にいるのでは?」
プーラ
「それは、ルーナー様のご命が危ない為、一時的に此処に避難されているんです」
神陽導
「ルーナーは大丈夫なの!?」
プーラ
「避難してくる時に、大部分の心髄を奪われてしまったので、大半の時間眠りについていますが、命には別状ありませんよ」
神陽導
「よかった…」
心髄
月神の心の中に宿る。“ 原初の月 ”の力のことだ。
月の神は、心髄があれば基本的に食事なども摂る必要がなく、生きる為の力も与えてくれる。
ルーナー
「ん〜?」
プーラ
「起きましたか?お嬢様」
ルーナー
「うん…」
プーラ
「ヘルメス様が、来てますよ」
バッ!
ルーナーは、身体に掛けられていた布団をぶっ飛ばして、下に視線を送る。
ルーナーが、導に気づくと目を輝かせ、三日月のベッドから降りて、すぐさま目の前に行く。
ルーナー
「みーちゃん!!」
そのままの勢いで、導に抱きつく。
だが、勢いが強くて地面に「ドスン」と音を立てて倒れてしまう。
その音を聞きつけてか、三日月の髪飾りのようなものをつけた精霊が現れる。
そのうちの一体が、プーラに近づく。
プーラは、訳の分からない言語を口走ると、軽く微笑む。
その精霊は、仲間の元に向かうと現状を伝えている様だった。
神陽導
「ルーちゃんたらはしゃぎすぎ!」
ルーナー
「だって、此処1000年間、ずっと会えなかっただもん!」
シンソウ
「ルーナー様も主人様の帰りを待っていたお一人でしたのもね」
その後、ルーナーが一通り抱きついたままだったが、立ち上がって、プーラと精霊が
が用意した岩でできたテーブルと椅子に座って話しを続ける。
導は、「失踪していた期間、どこで生活を送っていたのか」など“ 過去 ”について話していた。
ルーナー
「そっか…よかった…」
「他の太陽たちみたいに、居なくなって…また孤独になると思った…」
神陽導
「ごめんね」
プーラが、紅茶を出す。
その紅茶を、受け取りつつ話は続く。
神陽導
「ねぇ、今の魔界はどう思う?」
ルーナー
「いいものでは…ない」
「最近は、厄災みたいな事が多いの」
プーラ
「お嬢様、そろそろ力を貯めておくべきかと」
「ヘルメス様との会話が楽しいのはお分かりですが、現在の貴方様は…」
ルーナー
「分かってるもん!」
シンソウ
「心髄の件ですか?」
ルーナー
「ん〜違うかな」
神陽導
「どう言う事?」
ルーナー
「今日は例の日だよね?」
プーラ
「えぇ」
「そうです。ここからは、私の方から説明しておきますよ」
ルーナー
「魔まだ、みーちゃんと話したいのに…」
ルーナーが、不貞腐れた顔になる。
プーラ
「ダメですよ」
「貴方様の心髄の量と例の事を考えれば、無理に力を使うのは良くないです」
ルーナー
「はぁ〜い」
そう言って、赤い三日月のベッドに眠りつく。
神陽導
「例の日って?」
プーラ
「一旦、外に出ましょう」
「見た方が、口頭で説明するよりも分かります」
プーラの顔が、いつもより真剣だった。
プーラの案内の元、洞窟の外に出ると、月に向かって一本の白い光が伸びて言っていた。
神陽導
「あれ…なに?」
シンソウ
「月に向かって何か伸びてますよ」
プーラ
「あれは、月光を吸収する装置から放たれる光です」
導とシンソウは、耳を疑った。
「月光を吸収する装置」
その様なものが存在しているはずがない。
その装置は、魔界の民に喧嘩を売る様な行動をしているも同然だった。
魔界には、太陽が存在いない。
その為、多くの魔界の民は、月光を吸収する事で必要な栄養分を生成している。
人間で言うビタミンの様なものを作る上で必要な月光を奪う行為だ。
神陽導
「どうして、止めないの!」
「あんなのルーちゃんや眷属である貴方、魔界の民からしたら天敵みたいな装置を!なんで破壊しないの!」
導が、問い詰める。
シンソウも導の意見に同調する様に頷く。
プーラは、冷静に答える。
プーラ
「あの光が伸びている方向は?」
神陽導
「えっ、あっ、えっと…」
シンソウ
「北ですね」
プーラ
「北には、北の支配国こと、アンヘンガー帝國の領土が広がっています」
神陽導
「!?…」
シンソウ
「!…」
「まさか、月光を吸収する装置を開発したのは…」
プーラ
「アンヘンガー帝國、技術開発部の者です」
沈黙が流れる。
そして、導とシンソウは、フルートやトゥアたちがアンヘンガー帝國の者を警戒してる理由が分かった気がした。
神陽導
「そっか、あの装置があったらルーちゃんの回復にも影響が出るよね?」
プーラ
「えぇ…」
「あの装置のせいで、徐々に紅月の月光は弱くなっています」
神陽導
「分かった」
「魔脈の問題もあるけど、先にこっちの方を解決できる様に努力するね!」
プーラ
「とても感謝致します」
その後、プーラが知っている分の魔脈の露出してる場所と破損してる場所の情報を聞いて帰って行った。
導とシンソウの姿が見えなくなって…
プーラ
「これでよろしいでしょうか?」
「アルビノの鴉さん」
アルビノの鴉
「はい、導様の警戒意識をアンヘンガー帝國に向けて頂きありがとうございます」
「それと、これは今日の分の報酬です」
「アルビノの鴉」と呼ばれた鴉は、人間の様に人語を喋り、胸元の装飾品から赤く光る丸い何かが出てきて、プーラの手元へと飛んで行く。
アルビノの鴉
「ルーナー様の体調も良くなる事を心より、お祈り致します」
「それでは、わたしはこれで…」
そう言って、現在も伸び続ける、月光を吸収する装置の光が伸びる北の方向へと飛んで行く。
プーラは、それを見届けると洞窟の奥へと戻って行く。
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魔界と神界を繋ぐ大扉の前に、フードを深々と被った女性が立っていた。
その女性は、開いた大扉を閉めると、灰色の大きな南京錠でその大扉を閉めてしまった。
謎の女性?
「これでいい…」
「そう、これでいいの…これで部外者が入って来れない…」
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一方、月光を吸収する装置の光が月へと伸び続けている。
その横に、一人の赤いピンク髪の女性が、大きな悪魔のような翼を生やし、武器を手に持っていた。
ある種の護衛…いや、監視をしている様にも見えた。
それは、装置が正常に動作しているのを見守っているのか、はたまた…




