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二日目 ADF最速決定戦 (3)

 そもそもこの大会では、使う道具には制限があるが、使う異能には制限が無い。無能力の上官も参加するのに、異能を使っても良いというルールなのだ。

 常時発動型の異能もあるしね……だから、明らかに人類の限界を超えているような記録がどんどん出てくる。

 ……あれ?じゃあ徒競走の時は、なんで御水見さんとかが参加しなかったのだろう?

 まさか、わたしが逃げ出すことを予め読んだ上で、出場者を選んだのか…!?

 さ、さておき、それぞれの種目で叩き出された最高記録の数値とかはいちいち憶えていなかったし、あんまり詳細に説明しすぎても仕方ないので、抜粋してざっくりと説明しておくことにしようと思う。


①拳銃による早撃ち

 これは、的の数とか的との距離とかを変えて色々やってみた。

 総合一位は白銀さんで、総合二位が日倭さん、総合三位が隆谷寺さんだった。


 ……えーと、射撃の上手さに定評のある二人が一位と二位なのは解るけれど、どうして隆谷寺さんが三位に食い込んできた?

 あれか?昭和の戦時中に大日本帝国軍で培(つちか)われた射撃技術があるのかな?そうそう、150歳超えということは、当然、彼は戦争を経験している筈だからね。

 ただ、個人的には日倭さんが一位を獲るんじゃないかと思っていたのだけれど……白銀さん、まじか。

 この人は多分、人間を装った精密機械だ。

 いや、例え機械でも、白銀さんに早撃ちで勝てるかどうかは、怪しいところだった。


②梯子(はしご)を使った高所への移動

 どちらかと言うと消防の訓練でよくやる動きだろう。梯子を自分で掛けるところから始めて、それを登りきるまでのタイムの短さを競った。

 一位は荻原さんで、二位を飛ばして、三位が隆谷寺さんだった。


 荻原さんは、召喚した貪食獣にめちゃくちゃ手伝ってもらうという、非常にずるいやり方で一位になった。

 眷属の貪食獣に梯子を立ててもらいつつ、背の高い貪食獣に持ち上げてもらって、ゴールがすぐそこという位置から登り始めたりとかしていて、もう何でもありだ。

 でも反則じゃないし、なんだかんだ言っても荻原さん自体の動きだって相当良かったんだから、まあ一位くらい獲るだろう。

 隆谷寺さんは4段飛ばしの登り方をしていて、猿かと思うくらいの無茶苦茶な動きだったけれども、梯子を立てる動きも割とスムーズで、まあ早いなーって感じだった。


 え?なぜ二位を飛ばしたのかって?

 それはね、二位の人の名前が判らなかったからだよ。知っている人なのに。

 そう、あの人だ。うちの長野県支部の、ナイフの扱いがやたらと上手い無口なおじさんの上官だ。

 あの人は、結果発表の時にこう呼ばれていた。

「一位、荻原!二位、小刀(こがたな)使い!三位、隆谷寺!」

 いや、なんで一人だけ異名なんだよ。

 本名で呼べよ。

 まさかそれが本名なんじゃないだろうなと思って他の上官に確認してみても、別にそういう訳じゃないらしいし……じゃあ本名は何なのかと訊(き)いてみたら、知らないって言われたし。

 なんで上官も知らないんだよ。

 それじゃあとうとう、誰も名前を知らないということになりかねないじゃん。

 本当に誰なの?妖怪とかじゃないよね?


③何らかの方法を用いた綱(つな)渡り

 綱渡りだが、綱に逆さまにしがみついて攀(よ)じるように進んでいくのもアリだ。とにかく綱だけに身体を支えられている状態をまず作ってから、地面に落ちたりせずにゴールすれば勝ちなのである。

 一位は隆谷寺さん、二位は御水見さん、三位は白銀さんだった。

 ……待て、隆谷寺さんと白銀さんが強いんだが。

 もう出禁だろ、この二人。


 御水見さんについては、まず綱に逆さまにしがみついた状態から自分の真下に水で船を形成し、それに乗って凄い速度でゴールまで飛行した。

 これはルール違反ではない。最初に綱に身体が支えられた状態を作ってからスタートすれば、その後は綱から身体が離れても、地面に付かなければ良いのだ。

 ルール作りの難しさを痛感させてきた御水見さんだったが、しかしその御水見さんをすら正攻法で出し抜いた化け物こそが、隆谷寺さんである。

 彼は、綱の上を駆け抜けた。

 普通に、当たり前のように綱の上を走った。

 結果、初速で御水見さんに勝り、僅差(きんさ)で御水見さんの記録を上回った。

 ……いやどういうことやねん。


「…………」

「え?何?何、深海ちゃん……」

「…………」

 記録が出た直後、御水見さんが隆谷寺さんをじっとねめつけていたのが印象的だった。

 どういう感情なのかわからないけれど、悔しかったのだろうか…?

「…っ!!!」

「!?」

 突然、御水見さんが異常な速度でわたしに振り向く。

 わたしは反射的に目を逸らす。なぜこっちを見てくるのかわからないが、何となく、目を逸らしておいたほうが良さそうだ。

 本当に、どういう感情なのか全くわからないけど。


④早押しクイズ

 なんでだよ。

 趣旨(しゅし)が違うじゃないか。

 内容は、ADFの課業の中で習ったことに関する問題……いやつまらないよ!学校かよ!嫌だ嫌だそんなの!つまらんつまらん!

 因みに上官は参加禁止。そりゃ教える側だからね。

 一位は梨乃ちゃんで、二位は髭根まいさんで、三位が国栖穴さんだった……あれ?


 今回も福島県支部とか山形県支部とかの人達も参加したのに、うちの長野県支部の隊員ばかりがランクインしてしまっているなあ。

 なんでかなあ?

 うちはエリート揃いなのかな?いやぁまさかねぇ。

 あれぇ?でも上位ばかりなぁ。変だなぁ。

 うへへ。

「自分の身内のステータスを、自分のステータスとして扱うことができる異能かよ」

「馬垣くん、風刺を利かせないで」

「篠守さんの第二の異能ですか?名前は《自他融合(ザ・フール)》とかになりますかね」

「え?そんな格好良さそうな名前で良…」

「the foolの意味は『愚か者』です」

「……」

 やめろ。現にその英単語の意味を知らなかったことが、説得力を持たせてしまうだろうが。


 という感じで、徒競走を含めた五種目をみんなで色々とやってみて、まあ何やかんや結果が出て、優勝者は白銀さんになって、この大会は幕を閉じたのだった。

 やっと終わったよ。

「はい撤収撤収、帰ろ帰ろ」

「よく考えたら、篠守さんをここに無理やり連れて来てしまったことについては、申し訳ないと思うのですよ」

「それはよく考えなくても思って?」

「篠守さんなら、『来なくても良いですよ』と言われれば、勝手に来たのでしょうに」

「なぜバレた…っ!そ、そうよ正解よ、ふん、どうせわたしはそんな人間よ!」

「拗(す)ねても良いですよ」

「やかましいわ!」


 とまあ、この辺りでもう良いか。

 実は、ここまでが前座なのだ。

 いや、うん、長かったけども。前座が長すぎて、大半の読者がもう読むのをやめたと思うけれども。

 これには訳がある。わたしの恥をこれから語ろうと言うのだ、あまり多くの人間には読まれたくない。

 だからこの直後、特別休暇二日目の午後にしてやっと自由になった時のわたしの体験も、あえて読む気を失せさせるために、重苦しく語っていくつもりである。

 そこまでは読まれても良い。

 その後が問題なんだ。

 あんまりじっくり読まないでください。

 でもちょっとは読んでくださいお願いします。

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