第16話 鳥籠のエルフが見た景色
ー視点、メゼリー
頭がクラクラする。
きっとさっきのは鳥に込められた魔法が発動して
それにより全員がランダムで強制ワープをさせる荒技。
ワープが元々貴族が緊急の脱出などの際に扱う
最後の手段的なものなのに、
広がりの速い煙にそもそも魔法を刻み込んでおくだなんて
こんな事すれば、
並の魔法使いどころか、
一流でも最悪命張る技。
「…こんな細工、出来るとしたら…」
あの鳥の元の所有者
グラノラディウス=アルフィンド
例の煙が溢れた鳥を渡してきたのは彼である。
ならば彼だと思うが…、
「それとも別の魔法使いに…?…てか?」
ここは…?
メゼリーもまた、見覚えのない場所に飛ばされていた。
どこかしらの塔の階段をとにかく登っている。
高い場所から仲間たちを探そうと考えたが、
何しろ窓の一つすらないのだ。
降りたくても
ワープさせられた時点で上に着く方が早い段階だったのだ。
非常に高い塔の階段らしく、何度も上を確認しても、てっぺんに見える天井は中々近づいた様に感じない。
(にしても…城の壁よりも真っ白だし、
全体的に新しい?最近建てられたとか…?)
外から見たらもっとはっかりとわかるかもしれないが、メゼリーは城の建物の何よりも新しく感じた。
(でも、埃が酷いし、
手すりあるけどそれにも被ってる。)
長年使っていないのかもしれない。
だとしたらこの塔は何のために建てられたのであろう?
そう色々考えているうちに
一番上にあったものは、この塔の展望台につながるであろう扉に、
「…」
枯れて茶色く固くなったツルで囲まれてる部屋に繋がっているであろう扉である。
「…(どっちみち多分死刑!なら別に!)」
このメゼリーという少女は、
私たちが思うよりもずっと肝が据わっているのだ。
枯れたことにで、より鋭利になっている植物のとげに注意を払い、ドアノブを探すと、錆びている金色のドアノブを見つけると、
包むようにドアノブを掴み、回すと驚いた。
あまりにも酸化が進みすぎているのか
中々思うように回ってくれないのだ。
「…!」
メゼリーは力を入れて押すと、
先ほどの錆での驚きは何処へやら、随分と簡単に開く。
「…?」
彼女が入ると、それは綺麗に整えられた寝室が広がる。
木を基調とされた木目のある部屋、
天井に穴が空いていて、朝は日の光が入るデザインであろう、繊細なデザインのステンドガラスには、
エルフを象徴した耳の長い少女や子供が描かれている。
ベッドの天蓋も貴族がこだわりそうなヒラヒラのレースのものではなく、透き通ったシルクだ。
しかし、ベッドには埃が被り、
机も少しなぞるとしっかりと指につく。
「…皇后様、の部屋?」
先代の妃は2人いたらしいが、
双方どちらもかなり前に亡くなったと聞く。
そのため、お目当ての方かそうではないかなんて
分からないが、
エルフは自然と自身たちが生まれた森林の色を思わされる緑の色を好むと言われるし、日の光の地で育つエルフに向けた配慮がたくさん施している部屋のはずだ。
この部屋は、
それらの条件を満たした部屋であった。
(でも…、人間の生活に慣れないエルフの女性を
こんな高い塔に部屋?愛する人なら普通自室の隣じゃない…?)
こんなにも高い塔に一部屋だけ…。
ふと、メゼリーは思う、まさかここの展望台から見れる景色は…。
こんなに、
高い場所に建てないといけなかった、訳は__。
そう考えてメゼリーは部屋を出ると、展望台への扉に向かい思い切り開く、
「…‼︎」
そこには非常に強い風が吹き、小柄な彼女は油断してると吹き飛びそうになり、
必死に手すりに捕まってないと立っていられないほどだ。
しかし、そこからははっきりと見えるのだ。
セブルニア森林の本当に隅の方だった。
小さくうつる、少し他より飛び出た大樹から漏れる
淡い光
「エルフの国…、大樹の光?」
だとしたら、
この塔はわざわざ大樹の光が
見える様にするために、不便を取ってでもこんなに高くし、たった1人の部屋の為にあれほど大量の植物を用意した。
そんな部屋を欲する人は、きっと1人
「やっぱり、皇后様が、お姫様だったんだ」
「御名答、淑女」
_ッ⁉︎
メゼリーは急いで後ろを振り向く
そこにいたのは、黒い貴族衣装に身を包んだ
老紳士、そう、老紳士である。
ただでさえ足腰が弱いはずの、
60代ぐらいの老紳士が
この風が強い悪天候に、髪の毛どころか
その高貴な身分を示すタイすらもはばたかない
まるで彼の周りに風がないようである。
(…嘘だ!?この強風に?
どうして貴族の男が、
ましてやお爺さんが耐えられるの!?)
「今宵の風はややいたずらっ子ですね。
年頃のお嬢さんのお召し物を捲らせようとするだなんて…」
「っ!」
メゼリーの顔は熱したての鉄のように赤くなると
もう片方の手で自身のスカートを破れてしまいそうになるぐらい強く抑える。
「ふふっ、少々冗談が過ぎましたね。」
老紳士は上品に丸めた手で口元を隠すようにして笑うと、深々とお辞儀する。
「誇り高き我が国、セブナールの黒の烏
クロノデイヤ家当主、
ヤバラ=ディア=クロノデイヤと申します。
以後、お見知り置きを」
クロノデイヤ家
メゼリーはふとその名前をなんとか思い出す。
リリアーノが言っていた。公爵家の一つではないか?
「愛孫が、かくれんぼしたと聞き、荒業を使い帰ってきてしまったしまいであります。」
愛孫、かくれんぼは家出?
荒技を使い帰った___、
間違いない。
ここで愛孫だなんていうだなんて、
間違いなくリリアーノのことであろう。
そして、リリアーノの母、
つまりは先帝の後妻になる事が出来る家である…
絶対に粗相などしてはならないとメゼリーは感じ取ると一歩下がり跪き頭を下げる。
「わ、私は…
ぼ、冒険者のメゼリーと申しまして…」
なんて自己紹介すればいいだろうと脳を回転させるが、残念ながらこういう時の脳みそほど役立たずなものは無い。
「自ずからの自己紹介、受け取りましょう
けれども淑女、そこにいると辛いでしょう?
失礼いたしますよ」
老紳士はメゼリーにゆっくり歩み寄ると、
肩をポンと触れた瞬間に、風が嘘のように止む。
「……っへ?」
信じられない。幻にでもかかっているかのようである。
「どうかいきなり触れたことに関しては、
お許し下さいね、淑女」
「い、いえ…」
しかし、メゼリーの警戒は未だ溶けない。
彼は知っているはずだ。自分が侵入者であると、
出ないと自身のような冒険者がここにいること自体おかしいのだから。
「さて淑女、もしかしたら貴方は
あの方のお怒りを買ったのでは?」
そう言うと、老紳士、ヤバラは
セブルニア森林の明かりを指を指す。
「そ、そうですっ‼︎、それで迷子になったお姫様…
先帝の第一皇后であるお方の、真の名を…‼︎」
正直もしも別人ならば目の前の貴族に呆れられて終わると思ったが、嘘ついて警戒されて殺されるよりも印象はいいと思ったのだ。
「マリアージュ」
「…えっ?」
「貴方様が、一番手に入れたかった情報でございますよ」
「…。」
ー分かっちゃった!名前‼︎
まさか、作戦では気が遠くなりそうな労力を使う予感がしていたのに、こんなにあっさりしれてしまった。ぶっちゃけ死ぬ覚悟だったのに、
まさか知れてしまったことに対して、
メゼリーは喜びたいのに呆れやら疲れやらの思いが混ざり、大変複雑である。
あと、一応わかっていることではあるが
メゼリーは聞いておく。
「…失礼ですが、姫様は?」
「…皇帝陛下をこの世に生み出した時同時に、
亡くなられました。」
「…。そうなんですね」
きっと、女帝は生きていると思っているであろう。
そう考えると、この話はしないで名前だけ言っておこうと考える。
そして同時に、ユーシスとグラノラディウスの言葉を思い出す。
「…クロノデイヤ様、ご無礼承知の上ではありますが…。」
目上の者、さらには貴族でもなんでもない者がこの様な態度などとっていいわけがない。
だが、どうも彼は怪しすぎるのだ
「どうして誰も知らぬとされている皇后様の名前を貴方が?
そして私を、
この先どうするつもりなのでしょうか?」
メゼリーは、緊張で声が途切れそうな気持ちになるものの、こうなれば勢いだとヤケになりながらも、落ち着いた口調で、まっすぐと目を見て、
ヤバラに聞くと、彼は少し目を細め、顎に手を当てて撫でる。
「少し、話は長くなるため短くしますが、
…皇后様は、言葉選ばずならば、誘拐婚でした」
「誘拐!」
噂で聞いた通りである。
高貴な身分の者が誘拐したとの話は聞いたことがある。
「先帝は、お姫様が受け入れてもらえなかったから無理やり連れてきたんですか?」
「…少しだけ、誤解ですね。
まあ、あくまでも私目線になってしまいますが」
そう言い、彼は森林の方に体を向ける。
「…先帝も皇后も、それはそれは深く愛し合っておりました。
しかし、それを女王はいいとは思えなかった。
何とか破局を願ったことを、先帝は見破った。」
確かに、女王の人間嫌いは何だかお姫様を誘拐される前からそうだった感じがしていたから、
まあ納得ではある。
「だから、彼らの記憶から、「名」を条件とした
呪いをかけて、皇后の記憶を抜いたのです。
皇后に内緒でね」
ーん?
メゼリーはそこでようやく、彼らがどうしてお姫様のことを忘れたのかを知ったが、それ以上に引っかかることを聞いた。
「内緒ですか?、一番知らないといけないのに?」
その言葉に、ヤバラは気まずそうに眉をハの字に顰める。
「…ではないと彼女に、逃げられてしまうとでも、
思ったのでしょうね…
家族を愛していたお方だから。」
その言葉に、メゼリーの背中は氷をいれられたかの様にゾクっとする。
セブナールでは、時折偏愛を持つ危険思考があるとは聞いたが、先帝がそうだったのだ。
ヤバラは、そんな彼女の顔を見て、まあ、そうなるかと同情する様な瞳で見た。
「…後から告げられた彼女は当時、
周りからそれは大切にされてきた箱入り娘
当然セブルニアの森林以外での生き方など知らず、
行くところもない。」
そういうと、
彼は森林の大樹の方を向いて、
無言でその淡い光をじっと見つめていた。
「…だから先帝の言う通りに動くしかなかった。
そして先帝は、彼女の名前を知られる彼らの記憶が元どうりになることを恐れて、
偽名を使わせました」
「___。」
最後まで聞いた、メゼリーとしての感想は、
あんまりである。
人間の国なんて今までで一度も来たことないお姫様が、いくら愛する者だからと、
大好きな家族の記憶から自身を消して、
無理やり道を一つに絞られた彼女は、内心どう思っていたのであろう。
大切な、自信を表す特徴である名前も変えられて
当然、愛するわけないに決まっているのに、
「…それにより、先帝カリアンティウヌ様と、
当時信頼された公爵の当主しか知りませんでした。
それが私、死に損なった私なのでございますよ。」
「…死に損なった?」
その言葉に、メゼリーには理解できなかった。
「ウェシリアノリスの裏切りで、先帝もお隠れになり、続いてハイドンデア、フローディアと…」
その声の一つ一つ、
顔の表現の少ない彼に、哀愁をただよわせていた。
「私は、後方支援のため、この命があるのでございますよ。」
「…そうだったんですね」
ウェシリアノリスとセブナールの戦いは、
庶民であるメゼリーすら知っている。
ウェシリアノリス戦、
当時セブナールの同盟国
ウェシリアノリスの裏切り
による戦争は非常に激しかったと聞く。
当時力をつけており、平和ボケしていた
セブナール帝国では随分と戦力に差があり
力の国であるセブナールが敗れそうになるほどだと、
そんな中で生き残れたら、
普通羽を広げて喜ぶとは思うが、
今はそんなのはどうでも良いとメゼリーは飲み込む。
「…ありがとうございます。ですが、最後に
どうして私を…?」
「ああ、貴方をどうするかのお話ですか?
なぁに、私は若人を痛ぶるだなんて趣味なんてものは持っておりません。」
その言葉に、メゼリーはホッとする。
「…ですがね」
ーーパタッ、
突如、糸が切れた様に、メゼリーが膝から崩れて、前に倒れるとヤバラは予想していたのか膝をついてメゼリーを受け止める。
「ーお許し下さい、淑女」
「これも、あの子たちからの願いですから」
お兄様を、助けて」
ルイラはその時、改めてリリアーノに、誓いを立てていた。
「…分かった。俺にどれだけ出来るのかも
どれだけ役立てれるのか、わからないけど、
それでも絶対に、
リリィが協力してくれて
いまここまで来る事ができたんだ。
必ず、戻ってくるよ」
「…!、」
その言葉に、心なしかリリアーノの顔に嬉々としたものを感じさせた。
「…ありがとう!、ルイラ!」
この男は仲間がピンチでいるというのに、
正直内心そもそも本当に全員で生きて出られるのか怖くて足がガックガクなのを隠すために、
何となくかっこいい言葉を吐いている。
「…って‼︎、そんな事よりもとにかくメゼリーたち探そッ‼︎」
「あっ!そうね‼︎」
…だけではなかったようである。
よかったよかった。
「おっと、それはどうかな?」
重い男の足音に、
低い声が響いて聞こえる。
リリアーノは思わずルイラの口をその細口小さい右手で塞ぐ。
ルイラはそのただよらぬ緊張感と、ふとある名前を思い出し、どうかその男ではないように祈る。
廊下の奥から、人影が近づいてくる。
一歩、また一歩と近づき、
窓の光に晒され、ようやく映ったのは男である。
ふんわりとした髪型で整えられた容姿の男
オレンジ色の貴族衣装に身を包み、その高貴な服装と見た目に似合わない。片手に槍を持っていた。
「殿下、酷いではございませんか
これではまるでわたくしが悪者のように
見えてしまうではございませんか?」
ルイラは、その男が出た瞬間、背筋の毛が先立つ様な恐怖に襲われる。
目つきは垂れ気味で、優しい印象のあるその瞳に、
光など感じさせず、
先程の吊り目の女とはまた違う。
迷いなんか感じさせない瞳。
ニコニコとしながら近づいてくるたびに
心臓が逃げ出したいとばかりに心拍が速くなる。
殺される
「…‼︎、ハイドンデア様よ…!」
「ハイドンデア⁉︎」
グラノラディウスから聞いた。
警戒すべき男の名前である。
「こっち…‼︎」
リリアーノの顔は青ざめて、
角を曲がろうとルイラの腕を引っ張った時である。
槍は突如、
光の様に2人の腕の真上を通った瞬間である。
空気を抉る槍の威力を持った衝撃波で、
リリアーノとルイラは左右に引き離され、
廊下の奥に刺さるとその勢いを受け止めきれずに石片が周りに激しく散る。
「ッ!イテテ…」
吹き飛ばされた痛みを感じたが、ルイラは廊下の奥で刺さっている槍に目を向けて驚く。
壁の分厚さを知る事が出来るほどに、その槍は深く刺さり、その周りは石が削れて、
その際の石片が周りに散っているのだ。
そんな衝撃波、冒険者の自分さえこれなのに、
体が細く軽い、
リリアーノが受けたらどうなるであろう
「…ッ!リリアーノッッッッ‼︎‼︎」
「…うぅ…!」
ルイラはすぐにリリアーノのところに駆けつけると、
彼女は腕に擦り傷を負っていたが、それ以外の傷は見つからなかった。
「だ、大丈夫よルイラ…このぐらい!」
リリアーノもまた笑顔を浮かべてそう答えるが、
目が引き攣って、やはり痛さに応えていた。
「いいえ殿下、そこで大人しくしといて下さいませ」
だが男は廊下に飾ってある鎧から槍を奪い取ると、ゆっくり近づいてくる。
「その男は我ら美しきセブナールの最も高貴なお方の1人であるあなたに近づき、自らの利益のために
侵入した犯罪人、違いますか?」
「違いますわッ‼︎‼︎口を包みなさいハイドンデアッ‼︎」
その言葉に、男は一瞬立ち止まり「えっ?」と声を出してポカンと呆気に取られた顔をする。
「…驚いた、普段から純真無垢なお姫様だと思っておりましたのに、あの男の子に教わりましたか?」
そう言われ、リリアーノは不安そうに手のひらを強く握るが、深呼吸すると、覚悟を決めた顔をする。
「…!、このお方は何も悪くないのよッ‼︎
お兄様を殺そうとしてる輩でも無いわ!
お願い‼︎このお方と仲間を見逃してッ!」
「とんでもない、そんな事していいなら
この国に飛ぶ首は無いんですよ。そもそも爵位も持たぬ下賤があなたの名前を呼び捨てした時点で
その者の首が飛ぶことは決まっているのですよ?」
(ん?呼び捨て?)
ふとルイラは思い出そうと考え__
思い出して激しく後悔した。
確かに先程リリアーノが吹っ飛んで思わず
呼び捨てしてしまった。
うん、間違いない。悲しいことに真実だ。
「で、でも!…だってこの人は…」
途端にリリアーノは口ごもり始める。
「…、おや?殿下、まさかではございますが…」
男はその偽りの微笑みを崩さず、品定めするようにルイラの足の先から頭の上のアホ毛までしっかり見る。
「…どうやら、その女顔に、随分と心を
許したのらしいですね
男としての魅力なんてなさそうな
その中途半端男を」
殺す。
己は絶対にこの男を殺してやる。
ルイラはその激しい怒りを心に燃やし、
その生意気にも顎髭すらも似合ってしまう
憎らしい顔から、せめてその髭を全て燃やしてツルリンにしてやろうと思うぐらいにルイラの男としてのプライドをずったぼろぼろにされた。
「ルイラを馬鹿にしないで‼︎
どうしてそんな事を言うの⁉︎、
本人が気にしてたらどうするのよ‼︎」
ルイラはすごく泣きたくなった。
そんなふうに思われてたのだ。
夢は高身長で目元がキリリとした
爆モテ冒険者だったのにどうしてこんなに
言われなきゃいけないんだと思うくらいに言われている。
いいもん、いつか髭生やすもん
そしたら少しは男っぽくなるもん
と思ったが、よくよく考えたら顔が女みたいなのに髭生やしても似合うはずないしもうどうしようもないのでは無いか?
と思いまた泣きたくなった。
「そもそも…別にルイラに対して私は…」
「?、リリィ…?」
「……」
ルイラからは彼女の顔が見にくい立ち位置にいる為、
突然彼女が黙ってしまって、どんな表情をしているのかわからない。
だがしかし、向かいの男からはよく見える立ち位置だったらしく、男は口角をあげると、リリアーノたちにまた一歩と歩み始める。
「恋ですか!いいですねぇ、意外にもわたくしも
恋愛ものは好きでしてね?
身分差ある少年少女の恋ですか!素晴らしい!」
「だ、だからッ!違うと言ってるでしょう‼︎」
「えっ?どう言う事?」
この鈍感の擬人化のような少年は本当に分からないらしい。
それとはまるで関係がないかの如く、
現時点の状況の緊迫さは何処へやら、
何だか空気は親戚の集まりに似た方向へ転がる。
「いやはや、いいではございませんか!
俺もエレーンほどうるさくはありません!
自由じゃないですか!」
「ダ・カ・ラァッ‼︎貴方もしつこいわねぇッ‼︎」
男のその声はどこかニコニコとして、
まだ幼き子供の行動の意外性を面白がっている
意地悪な知り合いの大人の様である。
しかし、次の瞬間にはフッと声が重くなる。
「だって、そうでしょう?
20代30代で、
愛だの恋だの言って、夢みがちのバカほど
見てて痛々しく感じるものは他にございませんし」
「…!」
その言葉に、リリアーノは目を見開き、
信じられない物を見るようなものに変わる。
「…何でそんな事を言うの…?」
その言葉にすら、男は口角を下げずに答える。
「真実ですから、子供は子供らしい夢でも見とけばいいけど、20にもなる大人が純愛語って恋する姿なんて、気持ち悪いだけです。」
その言葉を聞いた瞬間、リリアーノは泣きそうな表情で、俯く。
「…アンドレート、いやッ!
ハイドンデア様、私…ッ、
あなたのそういうところが本当に大嫌いッ…!
どうしてそんな卑屈なのッ‼︎⁇」
リリアーノは
それまで一切出さなかった敵意で溢れたその顔は、
嫌悪をこれ以上ないほどに現していた。
「卑屈って、貴方ねえ…」
男はやれやれと鼻で笑うと、冷めた瞳でリリアーノを見る。
「殿下?貴方もそろそろ現実を見ないと、
13歳でしょ?、こんな小娘が皇太子で困るのは
貴方と陛下なんですよ?」
男がそう言うと、リリアーノはピシッと、氷に閉じ込まれたように固まる。
「こんな…、感情丸出しで、人の迷惑も考えずに家出して、他人から見たら赤ちゃんみたいに甘やかれて、」
その言葉に、ただ彼女はジッと聞き、目を背ける。
その様子を、男はただ顎にを添えて、嫌な笑みを浮かべてただ見ている。
しかし、男の目が捉えているのは、
目の前のリリアーノではなく、隣で目をかっ開き、
静かに殺意を燃やす男である。
「そもそもこの国は、
遠慮御免の戦争国家で、
偉大なる先の王たちの威厳と力でなった国だ
『このお方には勝てない』
そう思わせて従ってきたのが我々貴族だ。
そしてそう思わせる事こそ王の義務
貴方の兄上は放棄しているけどね」
その言葉には、少女は見逃さなかった。
「あ、あなた…ッ‼︎
なんなのよッッ!?
本気でそんなことを考えていたのッ‼︎⁇」
リリアーノは、男の言葉に声を荒げた。
その次の瞬間には、先ほどまではルイラを庇うように前を立っていたが、今の姿勢は、目の前の男に抗うようである。
「お兄様はああなってしまったのは…ッ‼︎
…ッ‼︎」
彼女は、出てきそうになる涙を堪えようと、目をさらにさらに開くが、逆に溜め込んだ涙が溢れて流れてしまう。
「あんた達がッ…、弱いからでしょッッッッ‼︎」
その言葉が、細長い廊下に甲高く響く。
「お兄様があんな奴らに…‼︎
馬鹿な国民に責められてるのも…‼︎
ウェシリアノリスとの戦争を続けたのも…
全部全部ッ‼︎あんた達が弱いからでしょッッッッ‼︎
…ッ‼︎、アンドレートッッッッ‼︎
貴方ならッ‼︎お兄様とおんなじ環境の貴方ならッ‼︎
…わかってくれると思ったのにぃ‼︎」
「…殿下」
その言葉を聞く時すら、男はその貼り付けたようなうすら笑いを崩さなかった。
しかし、槍の持ち手からは、ミシミシと悲鳴をあげている音が耳に聞こえた。
「…ウッ…
うわぁァァアんッ‼︎」
言葉を言い終えたリリアーノは、息を整えると
啖呵を切った勢いで泣き始めた。
悔しさ、悲しさ、悲痛の混じった泣き声だ。
しかし、その姿を見ても動揺するどころか、
冷めた目でルイラを一瞬だけ見ると、その笑みは
冷笑にうつる。
「…こんなのが、将来の女帝だなんて、
周りに舐められますね、だから国の王の義務を捨てていうと?その考えの甘さは誰から?
ああ、お兄様から__」
それでも男が言葉を続けようとした時だ。
「テメェ、いい加減しろよ」
ルイラは
当の本人もどう動いたかわからない速度で
少年の懐から剣が抜かれた。
「…ッ⁉︎」
その時、男は目を大きく開き、冷や汗をかいて一歩下がる瞬間には、ルイラは男の脇腹を刺す勢いで垂直線に刃を入れようとする
ーが、
男の方が一枚上手と言ったところか、
男は槍の持ち手脇腹横に立てて、ルイラの剣を受け止める。
「…随分と剣を抜くのが早いじゃないか?
ヒロインが泣いて現れるヒーロー気取りってところか?」
格上の余裕というものがあるのだろうか。
目の前の男からの明らかな殺意の刃を向けられても、
男には余裕がある様子だった。
「女の子が泣かされてんだぞ?
そこでやるべき事はこうだろ?」
「…。まるで絵本の騎士みたいなこと言うんだね」
そう男はただルイラをからかうだけ、
実際、ルイラはつい怒りに任せて今剣を男の槍に押し付けてはいるが、あんまりにもびくともしないのだ。
槍の持ち手は木で作られているはずなのに、
石に刃を押し付けているかの如くびくともしないのだ。
「…あらら、さっきの動きの速さは認めるけど、
大事な力がそれかぁ〜、
まぁ、どう見ても筋肉なさそうだもんね」
ルイラのまだ成長期で中々筋肉がつかない腕を見て
クスッと笑う。
「…ッ‼︎」
偉そうに剣を抜いといてこれだ。
ルイラは恥じた。
いつもそうだ。
自分は良かれと思ってとった行動はいつも失敗する。
エルフの件も、
リリアーノの件も、
そして、初めて魔法を使った時もだ、
_________________
『ルイラ、お前は剣の腕はまちまちだが、
魔法は死ぬほど下手だ。』
親代わりに育ててくれた、
鍛冶屋のおっちゃんの言葉だ。
冬の中頃、
落ち葉を集めてまとめて燃やそうと、
まだ幼かった自分たち子供は、
大人達を驚かせようと、まだ火花しか出せない力量なのに、一人一人が順番に火をつけようとして失敗して、自分の番になった時、
煙が出て、炎が出そうで盛り上がり、
思い切り力を込めた途端、
突然、炎は瞬きをした瞬間大きく手から燃え上がり、ルイラの体を包んだのだ。
あの時メゼリーの母のリサさんが見守りにきてくれた時、組んでた井戸の水をかけてくれたから大事にならなかったが、
俺はあれから、大人達に魔法を使うことを禁じられた。
突然、そんな思い出が頭に浮かんだ。
そして現状、またルイラは、自身の厄介ごとのせいで、目の前の貴族の怒りを買ってしまった。
「あーあ、せめて魔法使ったらいいのに、
それとも、最初から使えない感じかな?
誰でも使えるのに、魔法。」
この男は余裕たっぷりにヘラヘラと笑い。
軽蔑の様な冷めた瞳は、己を映す。
ルイラの心はイライラに怒りが募る。
目の前の男にもそうだし、余計ごとばかり持ってきてその尻拭いすらできない自身にもだ。
『…まぁ、けどなルイラ?
俺は正直、
その年で、あんな大人も大騒ぎが出来る
ファイヤーボールが作れた事に対して、
俺はお前を天才だと考える。』
こんな窮地にも、自分が思い出すのは
こんなしょうもない思い出だ。
『俺らが禁止したのはだな
お前のその才能が暴走した時、止められる大人がいないからだ。
だからなルイラ、
お前がどーしても魔法が使いたいなら、
帝国に行け、お勧めできないけどラウパウンダや
アルストツカ、それか…
これはもっとお勧めしたくないけどよ、
例えば湖の近くとかな?
周りに人がいない時とかによ…。
怪我すんのは、あくまでも自分だけだと想定してな
そこで初めて、魔法を使えよ
それぐらい、お前の魔法は強すぎる。』
その言葉が、ルイラにようやくこの男に勝つヒントを出した。
ルイラはそのヒントを得たと同時に、何度も謝る。
父代わりになった鍛冶屋のおっちゃんに謝る。
「リリアーノッ‼︎離れろッッ‼︎」
「ッ⁉︎」
リリアーノは突然の命令に驚きつつ、廊下の1番奥を目掛けて離れる。
「おいおい、なんのつもりだよ?」
同時に、自身が圧倒的優勢の立場である男は、
目の前の男の暴走すら余裕の笑みを浮かべるが今度はルイラの革手袋の上から手首を強く掴む。
ルイラは、あらゆる人の顔を思い浮かべる。
ここまできてくれたメゼリー、
客を寄越すと約束した皮屋のおっちゃん。
こんな自分にも、ついてきてくれたアリナとオルモ
自身をここまで育ててくれた村のみんな
約束を果たすと言ったのに嘘になってしまった
リリアーノ
そして、
いつの日か会えるかもと思った
この世に産んでくれた。
顔も名も知らない、父と母にー。
「……簡易炎魔法!」
ルイラは知らない。
魔法を使う際の力の込め方も、
気をつけるべきことも
何も知らない。
使えないなら覚えなくていいと逃げていたから、
もう何年ぶりだろう。
魔法を使うのは、
でも、確かなのはそう、
手から激しい炎がルイラの手どころか剣を包み、
剣は次第に赤くなり槍を燃やし、
己の服が燃えている。体全身にひどい痛みが走ってくる。
あれほど余裕あった男が冷や汗流して笑みが崩れている。
実に気持ちいい光景だ。
「ル、ルイラァッ‼︎‼︎」
しかしここで、自身を助けようとしてくれている少年を心配したリリアーノが、ルイラに近寄る。
ダメだ、お願いだから離れてくれと念じるルイラだが、そんな想いが届くはずがない。
「…ッ‼︎」
しかし、目の前の貴族の男は、それは非常に焦った顔で、片手をリリアーノの前に出すと、凄まじい風を彼女に向ける。
「ッ⁉︎」
その風が影響して、彼女は勢いよく飛ばされて、廊下の1番奥に吹き飛ばされると、ドンっと、壁にぶつかりそのまま落ちる。
片手を槍から離して、
突然燃え出した少年に驚愕を漏らす男は、片方で不器用に風でリリアーノを抑える。
男も焦りを見せる。
目の前の風を消すには、竜巻のような風を出す必要があるが、この狭い場所に使うと皇女の身に傷ついてしまう。何より彼は魔法が不得意で、
そんな技、そもそもできなかった。
そうしているうちにも、少年の炎の色はどんどん色濃くなる。
冗談じゃない。これがファイヤーボールであってたまるかと思うのも束の間、槍がとうとう灰になったのだ。
その時、ルイラは強い達成感を感じたと共に、
やらかしたなとうっすら遅い反省をした
体が燃えているのだ。
チリチリと肉が焦げる様な匂いと、
火傷なんかよりずっと酷い痛みが出る。
服なんか燃えて、下半身の布も現在進行形で燃えている。上に身につけているのは革手袋以外は灰と化している。
さらに匂う、
本当に死ぬのだとわかる焦げた匂いは、
己にさらに恐怖を与えた。
ーが、
そんな思いが崩れる様に、
ルイラの瞳は、信じられない光景を目にする。
目の前の男は、己も自身の炎に身が巻き込まれ、
服が燃えて上半身にもう何も残っていないと言うのに、己の様に体に火傷どころか、その生身となった腕で受け止めているのだ。
こいつは、
大人達が言ってた生意気貴族なんかじゃない
獅子、いや…
ー獅子の皮を被った、化け物だ
「…悪く思うなよ、クソ餓鬼」
突然、先ほどまで激しく燃えていた己の炎が、まるでなかったかの様に消えたのだ。
「…」
それからはもう、覚えてない。
そこでルイラの記憶は、途絶えた。
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ようやく面倒くさい侵入者を捕まえれたと安堵する
貴族の男、アンドレート
肩をそれぞれ回しながら、先ほど剣を押し付けられた左腕を見る。
火傷は覚悟していたが、これまた肌がやけすぎて、剣を当てられた箇所は、
筋の様にまっすぐ跡がついて血が出ているのだ。
まさかここまでとは、
そう思いながらアンドレードは先ほど己の炎に耐えきれず気絶した少年を見る。
本当は、さっさとこの男の首を折ってしまおうと考えていたが、
「やっぱり仕事が早いですね、クロノデイヤ閣下?」
後ろを振り返ると、そこには、この少年の仲間と思われる。青い髪の少女を横抱きして、相変わらず優雅な佇まいの、クロノデイヤ家公爵のヤバラがそこにいた。
「…先ほど、廊下に見かけた時に捕まえましたよ。
貴方様は燃えておりましたが、
火傷はないのですか?」
その言葉に、先ほどの様に張り付いた笑みを浮かべるも、少し目を細める。
彼はこの公爵が苦手だった。
公爵家は三つあるが、自身の父である先代のハイロンデアとフローディアは、戦線に出されて死んだ。
ー銀色の白蛇の一族
ー銅色の獅子の一族
この家のものは、みな戦いに強いとされ、
唯一、同じ公爵家で、
ー黒色の烏の一族
と、情報戦を得意とする一族だからと、
安全な後方で、前の戦争もそうやって生き残った。
自分らの親達は戦争で死んだのに、この老人が生き残ったのだ。
「いやぁ、助かりましたよ。俺もやっぱ腕が落ちましたから、油断したらこうなった」
八つ当たりなのはわかってる。
しかし、それでもこの男がどうも、
好きになれなかった。
しかし、そんな彼よりも嫌っていると言うより
恐ろしく思われている相手が、
公爵の男の後ろにいる。
「お、…おじい…様…、」
皇女リリアーノは、顔を真っ青にして、
恐ろしい何かを見る瞳で見て、足が震えている。
一歩近づいただけで、
ギュッと目を閉じて体を震わせている。
「…殿下、ご安心下さい
この者たちはすぐには殺しませんよ
裁判にかけます」
「えっ?」
「はぁ!?」
この言葉に、少女は勿論、後ろの男も驚く、というよりは冗談じゃないという明らかにめんどくさそうという意が含んでいる。
「おいおい!何言ってるんですか閣下⁉︎
ただでさえ忙しいのにこんな奴らに裁判を…!」
この国では、皇帝に関する不敬罪は最も重く、
帝国の三柱が担当する。当然、そこには
ハイドンデア公爵家であるアンドレートも担当するのだ。
そのため、なるべくならば裁判などしたくないのだ。
「俺がエレーンから耳に入った話だとこいつは殿下を連れて、地下室に無断に入った!それだけで例外なくギロチンだ!それだけでいいでしょう‼︎」
その話に、目の前の少女は何か違和感を持つ。
しかし、それを思い出す前に、目の前の祖父のため息が聞こえ、身を縮める。
「…憲法二十六、人民法より、
罪人が最高刑の疑いの場合、その者を調べるべし
一存での刑執行は許されぬ」
ヤバラはそこで区切ると、振り向いて、革靴をコツコツと鳴らしながら、アンドレートに近づく。
「およそ115年前、コルトワル死刑事件より、
当時、忍びできていたコルトワル第三王子が、
皇帝の像破損で、その際身元を調べずその場で死刑して、国際問題になった事件でできた法です」
そこまでいうと、アンドレートの笑みに引きつりが見える。
「貴方は、もしこの方たちが高貴なお方ならばどうなさっていたのですか?」
「…」
そのひくついた笑みを見て、リリアーノは内心少しいいきみだと思ったが、
彼はすぐに、膝をついて右手を胸に当てる。
「皇帝を守る剣の一族として、知識不足を指摘していただき、感謝いたします。クロノデイヤ様、
どうかお許しを。」
あの、普段からうすら笑みばかり浮かべる男を
ここまでにするとは、やはり自身の祖父は恐ろしい人などだと、リリアーノは改めて確認した。
当のアンドレートは、ただでさえ空きのないスケジュールが更に詰められめんどくさく思ったし目の前の男に八つ当たりに近い感情を抱いた。
しかし同時に、彼は好都合だと思ったのだ。
「今回ばかりは陛下にも流しません、
以後そのようなことがないように致しなさい。」
「畏まりました。」
アンドレートはそう言い、ゆっくり立ち上がる。
「では、この少年と、その少女はどうしましょう?」
そう言い彼は、目の前の火傷痕のひどい男を担ぐ。
「ルイラ…‼︎」
ヤバラは、口を手で押さえながら震える孫を見て、
その少年の背中に手を置く。
「…神よ、怒りの炎を鎮めたまえ
《ファイヤー・ヒーリング》」
ヤバラが魔法を唱えると、少年の体は光だし、その光に包まれて数秒待つと、光が粒のようになり落ちていき、少年の火傷は嘘のように消えていた。
その様子にアンドレートは目を細める。
「宜しいのですか?失礼ですがその火傷は、
私ではなく、この男が技を使い自ら付けた火傷ですよ?」
貴族であろうと、罪人の傷を無許可で治す行為など最悪共犯扱いされて爵位を没収される可能性があるのだ。
「…」
ヤバラはチラリとリリアーノの方を向く。
彼女はルイラの傷が治ったことがわかると、安堵したのかほっと肩を落としたと同時に、ポロポロ泣いている。
「…未来の皇帝からの願いです」
その言葉に目を細めて笑みを崩さないアンドレート
の顔は、なんだか冷笑しているように見えた。
「…フーン」
髪の乱れを簡単に彼は直すと、ちょうど追加の兵士たちが二、三名流れ込む。
「閣下!ご無事ですか⁉︎」
「うん、とりあえずこの者たちは僕らが運ぶからさ
殿下を部屋まで」
「はっ!」
そう言い、兵士の一人がリリアーノを抱える。
「さっ、殿下、いきましょう…」
「まっ!待って…‼︎お願いします‼︎おふたがた…」
そう言い泣きながら手を伸ばすリリアーノに心を痛めつつ兵士はリリアーノを運ぶ。
「お願い…‼︎みんな悪くないわ…!私が悪いから…‼︎」
「で、殿下…!危ないですよ…!」
兵士が落ちないようにしっかり握るが、リリアーノはそれでも見えなくなるまで手を伸ばす。
「お願い…!、私の友達に…
酷いことしないで……。」
その大きな瞳からはポロポロと涙がこぼれ落ちていく。
「全部……私のせいだから……。」
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アリナは今、神経がサァと、下に落ちていき真っ白になっていく思いをしていた。
「…頼む」
美しい青年の細い腕で、
自身の両腕は信じられないほどの力で掴まれて、
「……旅人の女」
その手のひらはどちらも青年の首に押し付けられ
「…楽にしてくれ」
その命の炎を消せと言われている。
__じょうッ、ッだんじゃない。




