第14話 蛇と獅子
ー何で
《この裏切り者ォッ‼︎》
ーなんで俺は…
《お父さんを返してぇぇぇ‼︎‼︎》
ーおれは……
《私情を優先した、帝国のゴミがァァアァ‼︎》
《お願いします‼︎息子を返してぇ‼︎》
……ハァッ‼︎」
一気に、意識が弾けた如く目が覚める。
その瞬間に一気に倦怠感も追いつく。
ーグランかー?
今はもう使うものも少なくなってしまった。
英雄となった、かつての親友の名
そんな彼は、魔法すらも得意なのか、暴れた自身に睡眠魔法を使ったのだろう。
この倦怠感は間違いなくそれだ。
「………ハァ………ハァ……。」
体を起こす気もない。
綺麗でない。
枯れた花となった己など、
見たくなどなかったのだ。
しかし、
一体俺は、
いつまでこんな生活を続けるのだろう?
俺は、いつまであの悪夢をて
《死んじまえぇ‼︎》
ー…おれは
いつまで、
生きているんだろう……………。
どうしてみんな…。
《貴方は求められているのです》
《決して貴方は悪くない》
《この国を背負うのは…
ゼーゼレン、お前しか…》
みぃん……な、嘘をつくんだろう?
誰も、求めてないくせに
***********
前回ー!
ルイラ達は途中、アンドレートに見つかりそうになったが、なんとかあいてを巻けたあげく、無事に城への侵入も成功した。
今宵、ついにルイラたちはセブナール騎士団長兼皇騎士、グラノラディウスからの命を遂行する。
************
その城の中は壮大という文字にぴったりであった。
外見でさえも非常に大きく青と白を基調とされた城は非常に美しい優雅さを備えていたのはいうまでもなかったが、
更に美しかったのはその中、城内である。
大理石でできたであろう床は鏡の様に自身達を反射する。
窓の一つ一つが大きく、
枠のデザインは一つ一つ細かい。
天井は非常に高く、ただの廊下なのに、この廊下を作るのに中級民の家が二、三個は立つのではないかと思ってしまう。
「すげえ…」
その息を呑むほどの美しさにルイラは思わず固まると、後ろからベシッと叩いたのはリリアーノである。
「ぐずぐずしてると捕まるわよ‼︎いいからあの鳥追いかけるんでしょ‼︎」
ハッとなり鳥の方を確認すると
鳥は地面に降りて待っており、金属製で、
特にこれといった顔もないのに、
ハアと、呆れられたような気持ちになる。
「ご、ごめん…」
思わずこんなところでかまたり庶民感を思い切り出してしまいルイラは顔を赤らめる。
「とにかく…!先を急ぎましょう!」
アリナが気を使ったのか先をせかしてくれた事は救いである。
鳥は、まっすぐに廊下を進み、
そのまま段々と装飾のシンプルな場所に行く。
先ほどのように派手でなくても、廊下の横を流れる小さな川らしき物は澄んだ水が流れていた。
しかし
同時にすごく、嫌な匂いがしたのだ。
そんなことを考え、ふとルイラの頭に
嫌な予感がよぎった。
(…まさか?)
「…ルイラ‼︎あの部屋でしょ‼︎」
リリアーノの声に意識を戻し、彼女がピンと指差す場所を見る。
すると、鳥がドアノブに止まりキツツキの如くつつく。
当然、キツツキの如くだ。
鳥は随分とスピードがあり、ルイラ達と5メートルほどあるが、十分聞こえる。
「うわ!馬鹿静かに!」
ルイラはすぐさま鳥を手に取ると、周りを確認して部屋に入る。
「うわぁ……」
ルイラ達は、その扉を開けた瞬間、驚愕だったり落胆だったり様々だ。
とりあえず、扉を閉め、メゼリーが近くにあったランプを手に取り、指先に火を灯し点ける。
その瞬間である。
いきなり部屋全体の灯りが一気に灯る。
先ほどまで真っ暗だったのに、窓もない場所なのに
とにかく眩しい。
窓がないため、ドアの淵をふさげば光でバレるのだけは防げそうだが。
それと同時に絶望する。
ざっと、自身らの身長二倍と半分ぐらいだろうか?
しかも両端に本棚がずらりと並び、中々奥行きもある。何なら背表紙を見て、すぐさま自分達が読めない言語だと分かるものもある。
「…あの人、そう簡単に俺ら救う気ないな」
オルモがそう恨みたっぷりいう声に、ルイラはきっと赤髪の皇騎士だろうと察するがスルーする。
「まぁまぁ、そんなに落ちこま…ん?」
不満たっぷりの
オルモを宥めようとしたメゼリーが、何かに気付いたのか、じっとルイラの手を見る。
「…その鳥、まだ羽ばたいてる。」
とポツリと言う
「…へっ⁇」
ルイラはそんな声を出しながら手に握っている鳥を見る。
逃げ出して、グラノラディウスに返せない事なんて死んでもないように必死に翼を押さえていたが
今にも存在すらしないのに
足のヒレだけでも飛ぼうとしているかの如く、
鳥の足がばたついている。
「ナッ…⁉︎」
ルイラは
本当にこの鳥が、
金属製の機械の鳥なのか疑った。
オルモ、アリナの2人係で、
しっかり入り口の扉を着ていたローブで押さえると、
ルイラは鳥を離す。鳥は優雅に飛び立つと、一気に一番奥まで行くと左に曲がる。
「よし、オルモ、アリナは見張りお願いするぞ」
「おう!」
「はい!」
「よし」
ルイラは後ろにいるメゼリーとリリアーノに目を合わす。
「メゼリーとリリィは、こっちつけるか?」
「え、えぇもちろん‼︎」
「任せてルイラ」
2人の了承に、満足そうに微笑むと、ルイラら三人は走り鳥を追う。
ルイラが鳥を追いかけると、
驚いたことに、何とこの部屋には更に分かれ道があったり地下への階段があったり、巨大迷路のようなのだ。
「一体いつまで続くんだよぉ〜!
メゼリー!魔力は大丈夫か⁉︎」
あの鳥は、魔力を込めることで動く、
だからメゼリーの魔力はこうしている間も消費される。
「結構少量でも全然動くから大丈夫‼︎」
「ならよかった‼︎」
鳥は、ルイラ達の様子を感じてスピードを変えるのか、全走力で走っている今、さっきよりも断然早く移動する。
その様子を、リリアーノは後ろから少し寂しそうに追いかける。
寝巻きとはいえ、ヒラヒラとした白いワンピースのような服、動きにくいこの上ない。
早速、三人の中で一番早く息切れし始める。
ー歳が近いはずなのに、自分と彼らが違う現実に
少し胸が痛い。
「…ハァ、ハァ」
とうとう、体力切れで止まってしまう。
「リリィ様⁉︎」
メゼリーが始めに気づき、後ろを振り向く。
「お、お願い先行っといてー!」
そう言い切る前か後ぐらいに
「リリィ!」
突然、ルイラの手がぎゅっと握られる。
「しっかり捕まれ!」
そう言われ、「え?」としか呟くことしかできなかった。
気づいた時には、自分は膝の裏と背中に手を通され抱き寄せられる。
いわゆる、お姫様抱っこの状態で、
走り始める。
ー‼︎‼︎‼︎‼︎⁇⁇⁇ー
抱っこだなんて、幼い頃に兄と、亡き両親にしかされたことしかないのにー!
リリアーノ、身内以外からの初めての抱っこ
何ならお姫様抱っこなら人生初の、
お姫様抱っこである。
(いやいやいや⁉︎いくら何でも流石にあれじゃない‼︎私なら最悪見つかっても大丈夫よ!てゆーか何この状況‼︎私何でお姫様抱っこ⁉︎
いや私のせいだ‼︎‼︎)
この通り、リリアーノはすっかり落ち着きを忘れていた。
(てゆーか…あっ、)
ふと、彼女はルイラの横顔を改めてしっかり見る。
(…あっ、ルイラって結構…、ちゃんと男の子だ)
「大丈夫だからな、リリィ」
「えっ?」
いきなり話しかけられ、固まる。
「ー絶対、見捨てたりなんてしないからな」
「ー。」
ーその瞬間である、
少女は生まれて初めて、頬を赤らめた。
恥でも怒りでもない、
齢13歳
まだスキルも使えない幼稚な少女の
大人の感情である。
「………。」
その隣で、また別の、
大人の感情を密かに燃やす少女も、また1人
************
「…因みに、オルモくん少しいいですか?」
そういうと、
彼女はいきなりこんなことを聞いてきた。
「君って、このパーティ入る前は、
何をしていますしたか?」
そう聞かれたのだ。
時間はルイラ達が鳥を追いかけて5分後である。
不気味なくらいに静かで、誰も通る音がしない。
「俺は…別に狩りをしていたよ。
家が旅人の家でさ、アリナと同じ」
そう言うと、アリナは「へえ」と一言、
そして少し興味深そうに前に乗り出す。
「なら私と同じですね!私も荷台の上で過ごした幼少期で、オルモくんはどんな感じでした?」
そんな彼女の瞳は、すごく興味深そうで、
俺は説明をしようも、俺のところは特殊なため、
少し言葉に詰まる。
「…俺のところは、よくある魔物退治して
その毛皮とかを売って暮らすみたいな暮らしじゃないけど…。結構その地に留まることとか多いんだよ」
例えば、その地の成金の貴族に、他の領地で耳に入った噂を情報として売り捌いたり、
他の場所で手に入れた物品を、
その地では人気だったり希少な物の場合は
その場に留まり、売り捌く。
そんな生活をしてたから、結構その地の地元商人には目の敵にされている。
「…てな感じ」
そう語ると、彼女は納得したのか、なるほどと相槌を打つ。
「で、それが嫌で、逃げたの
でもやっぱり顔覚えられてるから、
追いかけられたりね」
「あ〜ッ!だから出会った時変な集団に追いかけられてたんですね」
またもや彼女はなるほどと相槌を打つだけである。
そんなアリナの気持ちがあまり分からず、
正直俺はこいつを信用できないから、
あんまり語りたくなかった。
「もういいだろ…。俺は過去語るのあんまり好きじゃないんだよ」
「では、今度は少し確認です…。」
今度はなんだ。
疑っているのか?
俺が身構えると、
彼女は語ろうと唇を動かそうとした瞬間、その顔が固まる。
突然、彼女はいきなり顔を近づける。
体に冷や汗が走り、ゆっくり彼女がいる反対側にずれる。
しかし彼女はそんなの関係なしの様に、
俺の耳元に羽音の様に、小さな声で俺の耳に話す
「この部屋、さっきまで蛇いませんでしたよね?」
その言葉を聞いた瞬間
ゆっくり振り向いた。
きっと、彼女が一言言わず振り向いたら声を出していたであろう。
先ほどまで、穴など一つもなかったはずの場所が黒いモヤの様な、
しかし決して最初から開いてなかったはずの場所から、数匹の白蛇が入ってくる。
「…ッ⁉︎」
ゆっくり後ずさる。
その瞬間、アリナは俺の服を掴み灯りの当たらない場所に連れて行く、
ローブは抑えれず光は扉から漏れ出すが、
あの蛇を見る分、もう役には立てないだろう。
「出ますか?」
「ルイラ達に報告したい」
しかし蛇はどんどん入る。それも先ほどルイラ達が進んだ道の方を沿って行くかの様に
(ルイラ達の進む方向がわかるのか…?)
「…私の方が範囲攻撃が得意でしょう、
私は斧で、貴方は弓です」
そう耳に囁くと、
ポンと俺の方に手を置く。
「君は走って、がむしゃらにルイラくん達を探してください。」
「…はっ?」
何を言うんだ?自分を犠牲にするつもりなのか?
「私はこれでも15歳、君よりも年上お姉さんです
行きなさい」
その瞬間、
ドンと強く背中を押される。
なんとなく、生まれて初めて使命感が生まれた。
その使命感は
俺に、初めて、『逃げ』意外の走る意味を教えた。
***************
「あっ…、あった…!」
走り始めて約10分
ようやく辿り着いた。
ルイラ達は少し息切れしながら金の鳥が止まった場所に目を向ける。
一番上にあるのは、
『ー第23代目皇帝 カリアンティウヌの書記』
カリアンティウヌは先代の名前だ
と言う事は
先帝について書かれて、そのおまけに先代皇后についても何か書いているのか?
「あの書は、一度兄上が読んでいたけれど、特に変なところはなかったわよ!
なんの証拠になるのかしら?」
リリアーノは半信半疑なのかジロリと本を見ては、
訝しげな表情を浮かべる。
「ひとまず、取らないとな…」
ルイラは本棚押してみて、びくともしない重さだと確認すると、ヒョイと本棚の縁を握り上り、
本を難なく手に取ると、
パラパラと巡り始める。
「…本当に特に変わった事はないな。」
強いて言うなら、監修は随分な先帝信者なのか
壮大やら、慈悲深い、挙句には神聖なとかの言葉が
多用されていた気がする。
「…ねえルイラ、少しこの本貸して」
メゼリーは何か気付いたのか、本を渡すと
突然、本の表紙ぺりぺりめくり、普段おとなしい幼馴染の突然の奇行に、背中が冷たくなる。
「め、メゼリーッ⁉︎」
期限の1ヶ月の前に死にたくない‼︎
処刑の2文字が浮かぶ。
「…この本なんか変に表紙厚くて、なんか微妙に隙間空いてるなって思ったんだよね…」
そう言うと、メゼリーがぺりぺり外した表紙の裏を見せる。
そこには、細かい地図が載っている。
パッとみて、国からまあまあ離れた所に赤い点がついている。
「こんな所…野原以外何も広がってねえだろ?」
セブナールは基本温暖な気候で、
整備されていない場所は基本草原が広がっている。
よってこんな場所、何もないはずなのだが…。
「ルイラ、この場所の少し離れた場所は?」
離れた場所…。
ふと、頭をよぎった。
森だ。
森林だ。
セブルニア森林だ‼︎
「この場所ってさ…国から馬で行けば1、2時間で着くし、エルフもここら辺なら、
多分抜け出しても、
自分らのエルフの羽使えばさ、
30分しかかからない」
そう言うと、メゼリーはわかるでしょと言いたげに笑みを浮かべる。
「…この場所が、先帝夫婦の思い出の場所?」
「きっと、お墓もここに立てたいだろうね」
つまりはここを掘り起こせば、指輪も共にあれば
そこから本名が割れる‼︎
「私!馬を貸すわ!急いで行かないと!」
「ううん、大丈夫リリィ様、せっかくならワープを使いたいし」
そのメゼリーの顔といえば、目を星の様に輝かせ、
どこかワクワクとした表情だ。
「でも…‼︎」
このぐらいさせてと言いたげにリリアーノは前のめりになるが、
彼女はゆっくりと、先ほどまでの懇願の顔を、段々と目を見開き「まって」と小さく呟く。
その顔は、とても信じられないと言いたげな顔だ。
「…メゼリー、貴方ワープさっき覚えたばかりなのに、どうしてそんな余裕ありげなの?」
「え?」
どうやらそこが不思議だったのらしい。
確かにとてもただの少女からでている魔力ならば、
ワープ一回か2回でギブなのにピンピンである。
「そういえば、メゼリー今スキル使ってんのか?」
彼女のスキルは『魔力増量』だ。
きっとそれを使っているに違いない。
「そうなのリリィ様、だから私は大丈夫ー
ーあら、随分とのんびりとしているのね?
誘拐犯の坊やたち?
息が止まる。
いつ気づかれた?
先ほど一度下った。
つまりは今地下のはずだ。
そんな簡単には居場所は割れないはずだ。
後ろを向いても、誰もいない。
「…ッ‼︎」
ゆっくりメゼリーと共に、リリアーノを背の後ろに隠す。
「…ルイラ、上」
上を向いた時、剣を握る腕に力が籠る。
冷静に見えたとしても、内心ひどく動揺した。
大量の蛇が天井にびっしりいるのだ。
先ほどまで、ネズミどころか虫の一匹もいなかった
幻影魔法か?
だとしてもあまりの精密の蛇にはビビる。
幸運とも言われる白蛇が、今は恐ろしい化け物に見えてしまう。
蛇は4、5メートル離れた場所にゆっくり降りて行き、一匹一匹が塔の様に一つの柱を作る。
「…エレーン」
ポツリとリリアーノが呟いた言葉に耳を疑う。
ー先ほどリリアーノを叱責した侍女のことか⁉︎
「…嘘をつきましたね、リリアーノ様」
ゆっくりと落ち着いた、落胆混じりの女性の声が
耳に入る。
その時である。
蛇は突然、変形し出したかと思えば、混ざって巨大な大蛇に変化し、ゆっくり巻いていた体を解くと、
長いスカートの様なメイド服、
しっかりまとめられた一つ髪に、
暗い場所によく溶け込む茶髪
蛇の様な鋭い瞳。
間違いなく、先ほどの侍女だ。
「…貴方たち、何をしているか、お分かりね?」
その低く鋭い声が、ルイラたちの背中をさらに冷たくさせる。
****************
アリナは、
己の死を悟る。
いっそ胸に刺されば楽に死ねたのに。
それより下の助骨らへんだろうか
明らかにそこを貫き
きっともたれかかっている壁に刺さっているであろうとわかるほどに、はっきりと槍が刺さっている。
「いやぁ〜、まさかそんなスキルがあるとはね
参ったよ、おじさんの腕持っていかれそうになったよ」
そう軽やかに語り、また別の槍で、心臓のある場所に当てる。
「君は何が目的?他の仲間は?」
痛みに耐える様に、細める瞳で必死に顔を上げて見る。
金髪の様にも見える、明るい茶髪、
オレンジ色の貴族服に、勇ましい獅子のマーク
間違いない、彼がハイドンデア公だとわかる。
「さぁいいな、お嬢ちゃん
俺は容赦ないぞ
首も心臓も…
何度も、刺したんだからな」




