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ーその勇者の名前は、『名無し』と言ったー‼︎  作者: みかづきん


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第12話 心配





「ー私は、反対ですよ」





そう言うアリナの声が、宿で響く







ーーーーーーーーーーーー




前回、様子のおかしい皇帝を救ってほしいという

皇太女・リリアーノの願いを聞き入れようと、


ルイラはオルモと共にエルフの呪いを解いてから、皇帝の件を引き受ける事と、


あくまでも出来る限りという条件のもとで、あとはメゼリーとアリナの許可で、引き受けると伝えた。





ーその後、メゼリーとアリナと合流し、


彼女の身分を伝えると、


メゼリーは岩のように固まり、


アリナは驚くと同時に、


ジロジロとリリアーノの顔や体を見て鼻血を出しながら、


まるで何かに感謝するかのように手を合わせていた。





そんなこんなで、ひとまず一番安い、兵にすらも目がつかないような、ポツリと佇む宿に泊まり



アリナとメゼリーに作戦を話す。




「…で?大丈夫なのルイラ?

帝国の皇女様を攫っちゃってさ…?」


そう言われて、ルイラは流石に冷や汗を流す。


「いやぁ〜〜…ねっ?

作戦上はやっぱりリリィが捕まるのはまずいからね」


「ほぇ〜…

ルイラくん、リリィ呼びねぇ〜?」


メゼリーがニヤニヤしながら揶揄うと


ルイラが慌てて弁解する前にリリアーノが

「違うわ!リリィはほぼあだ名のようなものだから!特別な意味はないわ!」

と言われ、どこか悲しそうに俯き、オルモがそっと背中を撫でる。




「ーで、さっき聞いた作戦、なんですけども…」





ーと、アリナが口を開き、冒頭になる。






「まず一つ、


リリアーノ様…、リリィ様の前でアレですが…


私たち入りますか?


帝国の皇帝が精神上ヤバいのならば、


もちろんですがきっと貴族や身内が対応してるでしょうねぇ。」



至極当然な意見だ。



「…あとは、これは私情ですが


そう言う人にあまり関わらない方がいいです」



「そりゃそうだよな…。力が強い人だし…」


「いえ、私が言いたいのは、


変に情が湧いたら、と言うことですー。」



「ー情?」


ルイラの顔を見て、アリナは察しが悪いなとでも言いたげの呆れた顔で、


「ちょっといいですか?」と言いルイラを廊下に連れ出す。





「ー?」

リリアーノもキョトンとし

「おい、なんでルイラだけ…?」

とオルモも状況を飲み込めていない状態だ。


しかしただひとり、メゼリー彼女は、真剣な顔でアリナの言葉の意味を汲み取る。



「ねぇオルモ、リリィ様、

きっとアリナちゃんが言いたかったのはね…」






ーーーーーーーーーーーー






ルイラはアリナに連れられて宿の外に出される。



「…つまりは、その人もう既に、自殺未遂するぐらいには、精神が壊れているんでしょう?」



「ああ、リリィがそう言ってた」


そう言うとアリナは、彼女にしては珍しく暗い表情で俯く。



「…もう無理ですよ、ルイラくん

私たちではその人は救えません」


ルイラはそんなアリナの様子にひどく驚く。


今までは決してそんなことを言わなかったからだ。



「な、なんで…?」


そう言うと、アリナの顔がどんどん苦しそうになり、冷や汗も垂れる。


最後に決意を固めたように深呼吸する。


「…、私の国では、

きっとその人は「鬱症状」で、すごく苦しい状況なんですよ…。」




ウツショウジョウ…?


ルイラは初めて聞いた言葉にキョトンとする。


「…ご飯も食べれなくて、寝れなくて、

それなのに自己嫌悪だけは強くなって…



最後に死んでしまう、恐ろしい病気の事です。



さらにその病気は、そんな簡単に治りません!


何年も何十年も…最悪、一生です‼︎」


アリナは、そうはっきりと言った。


「…えっ?」


ルイラが困惑した顔でそう言うとアリナは続ける。



「「鬱症状」はね、強いトラウマや、長期的に自身の精神を苦しめる体験などからきます。


さらには人によって、なりやすさは変わりますが、


なったら何年も、何十年も…最悪の場合はね、


治らないんですよ。








少なくても、



私は、


世界一、恐ろしい病気だと、少なくても考えています…。」





そんなアリナの顔は真っ青で、どこか呼吸が荒い。




「…私の親友は、それで死にました。」


そのまま固まってしまった。


あんなに明るいアリナが、そんな過去が







ーーーーーーーーーーーー









一方宿では、メゼリーがアリナが反対していた理由を察して、


彼女はきっとそう簡単に治らない、何年も何十年も続くと言うことを





「…人は、いやでも一緒にいると情が湧いちゃうってことも知ってるからじゃないかな?


私のお母さんもね、

昔初恋の人相手に、酷い失恋したんだって…

それでも、ずっと覚えちゃうから、


アリナちゃん、それを心配したんだと思う。



ルイラは悪い意味でも優しすぎるから…」



だから、もし救えなかったら



ルイラは一生ひきづるであろう…。




「…そうだったんだ」


リリアーノはその大きな瞳にいっぱいに涙を溜め込み、涙をこぼす。


「ううん、わからないよ

だってあくまでも私の予想だもん」


しかし、実際にそうだろう。


過去のお偉いさんも、

自決する時は、状況は異なっても、


どれでも『追い込まれた時だ』


物理的に、社会的にでもなくても、


「精神的」でも、決しておかしくない。



リリアーノはぐすんと鼻水も啜りながらフンと意気込み言う

「でも!どっちにしてもルイラ達は城の案内するわ!貴方達には恩があるし!」


「ふふ、ありがとうリリィ様」


メゼリーは優しく微笑むとリリィは元気いっぱいに頭を振り頷く。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーー






「…うん、アリナ、わかったよ」


ルイラからの口からは、そう返ってきて


アリナは心底安心


「でもごめん」


…しなかった。


「どうしてですか?ルイラくん?」


アリナは内心どうしてわかってくれないんだと思いつつも、落ち着いて、ルイラの話を聞く。



「…俺はさ、どっちでも後悔するんだ」


そう言うと、自身の手を見る


「…もしもだよ、この先の旅で、皇帝が自殺しただなんて新聞見たらだよ、あー、俺になんかできたんじゃないかなって…後悔するんだ」


そう言いルイラは真っ直ぐ、今度はアリナの方を向く。


「んでさ!俺たちは救うことはできなくてもさ!

その原因を突き止めるには?もしかしたらだけの可能性だけどさ、分かんないよ?失敗するかもだけどさ…」




「目に見えた、「助けて」は拾いたいじゃん!」



ルイラは心臓をバクバクさせる。


自身の語ることは、桃源郷よりもめちゃくちゃなことを言っているかもしれない。


そんな夢語るだけならば、当然誰でもできるからだ




「……」


アリナはそのまま無表情で無言で近づく。



そんな適当な感覚で行くなと頭をチョップされるだろうかと、


いろいろ考えすぎて固まる。



しかし、発せられた言葉は意外だった。


「…ルイラくん、もしも、君が選択した結果、

最悪な方向に行って、





トラウマになって、辛い思い出になって、



泣き出したくなったら、




包み隠さず言えますか?言ってくれますか?」




そう、視線をしっかり合わせられ、真剣な顔で言われる。




「…うん、言うよ」



そう言うと、


アリナは少し緊迫した顔になるが


その後、


今までに見ないレベルに優しい笑顔で頭を撫でる。



「…絶対ですよ、君は優しいから、頑固だから


言わなくていいと思うかもだけど…






    みぃんな、君が好きですからね」






ーこうして、作戦は決行する事に決まった。










ーーーーーーーーーーーーーーー



場所 


ルイラ達とリリアーノがあった橋では、






かの、アンドレート公爵がいた。





「ふぅん、で?ここで最後に『太陽の巫女様』が確認されたんだね?」


ここで言う『太陽の巫女様』は皇太女の隠語である。


かの公爵は、きれいに整えた顎髭を軽く撫でながら

兵士の一人に聞く。


「はい、恥ずかしながら、見失ってしまいまして…」


そう言い申し訳ございませんと改めて頭を下げる。


「いや、あのお方には、あらかじめ護りの加護がついてる。

彼女に何かあったり、

帝国を抜け出すと反応するが…

今の所はなさそうだ。」


そう言い冷静に語ると、ふと帝国内の地図を見つけながら問う。



「…怪しいのは、黒髪の少年か?」



「彼が最後の目撃人物ですゆえ…

おそらく、旅人やら冒険者かと


黒いローブに弓と矢を持っておりましたから」





それを聞くと、アンドレートはニヤリと笑う。



「…この国にも、非常にボロボロな宿が一つある。

そこは一番安いと裏で噂だからな、


そう俺(・)の(・)情(・)報(・)源(・)が言ってた…。






すぐにその宿に行くぞ」







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