第十三節 kの運転はジェットコースター
5年か4年前――、
いぶさんはk氏とそれなりに仲が良かった為、k氏の嫁である後ろ美人、k を含めた三人で、ドライブを楽しんでいた。
「シェリル派? それともランカ派?」
「断然ランカ」
「まぢか!? ちっさい方が好きなのか? ステータスか? 希少価値か?」
「っハハ! でも貧乳派か巨乳派かとか聞かれたら、断然巨乳派」
「だよなー? 安心したぜ」
kの運転の下、k氏といぶさんのとりとめのない会話が行き交っていた。ふと、走行中の道路に、一時停止の標識が――。後ろ美人、kはその標識を見てか見ずにかは知らないが、ブレーキを踏むコトもなく――、
「スー……」
そのまま進んでいった。堪らずいぶさんは声を上げた。
「おいおいおいおい、おいおいおいおい!」
「れすー?」
「あっぶねーだろ! 教習所で習わなかったのか!? 一時停止しろよ!!」
事実――。
後ろ美人、kは自動車教習所で、試験管達を寝取って免許をもらっていた。
「れすー」
とぼけて、歯茎をむき出しにする後ろ美人、k に見かねたいぶさんは、k氏にも声を掛けた。
「いつもこうなの?」
「ん、ああ」
いぶさんはk氏の言葉に、只々絶句した。
数分後、ふと――、
「Yさんって可愛いよねー」
いぶさんが何の変哲もない、日常会話レベルの発言をした。
その瞬間――、
「! !! !?」
「バブチッ!!!!」
後ろ美人、kの中の何かが弾け飛んだ。
「ブォォオオン!!」
後ろ美人、kは自分の前で他の女が可愛いとか耳に入ってきたので、アクセルを全開にする。
「ウォォオオン! ……オォォオオン!!」
後ろ美人、kが運転する自家用車はまるでジェットコースターの様に縦横無尽に公道を爆走していった。
「おぁぁああ!! 何だ!?」
「ちょ、お前……! 落ち着けよ!!」
いぶさんとk氏の、流石の二人だったが、その状況に呑まれ気が気でなかった。
「ウォォオオン! ……オォォオオン!!」
――、
「ハァハァ……気は収まったかよ……?」
「あいぃぃいいい!!」
k氏と後ろ美人、kは夫婦の絆で意思疎通を取る。
「シーン……」
しかし、いぶさんは――、
燃えたよ。
燃え尽きた……。
真っ白にな――。
「ハァ……。で、何だよ? いぶさんYさんがどうしたって?」
「ナニィ……!?」
k氏の不注意によって、再びその声は後ろ美人、kの逆鱗に触れた。
「ウォォオオン! ……オォォオオン!!」
そして後ろ美人、kはまた自分の前で他の女が可愛いとか耳に入ってきたので、アクセル全開で走り出した。
「おあっ! またかよ!?」
「あぃぃぃぃいいいいいいいいい!!!!」
突如――、
「どっ……パリガシャァァアアン!!」
後ろ美人、kが運転していた車は追突事故を起こした。
「あ……ガハッ……!!」
k氏、散る。
「バタン!」
「ハァ……ハァ……い……生きてる……?」
いぶさんは辛うじてドアを開け、車から降りた。そこに広がっていたのは……。
「!? ……」
電柱にぶつかった自家用車の、見るも無残に潰れた助手席や運転席、そこから滴り落ちる赤き雫だった。
「なんてこった……」
いぶさんは凄惨たる状況に、言葉を失った。
瞬間――、
「あいぃぃいいい!!」
「!!」
運転席――、ぐちゃぐちゃになって人の形を捨てた後ろ美人、kが奇声を発していた。
「あれは……はっ!」
「ぐぐぐっ」
衝突事故によってできた傷口から、細胞があふれ出た。そして遂にエイリアンと化した後ろ美人、kがこちらを恨めしそうに睨み付けてきたのだ。
「にちゃぁ……」
「ヒッ……!」
後ろ美人、kの口からは、更にインナーマウスが飛び出して来ていた。
(や……殺られる……!!)
いぶさんは両手を握り、死を覚悟した。
そこで――、
「パァン! ……」
「あいぃぃいいい!!」
突如として鳴る銃声。
その音の方に顔を向けたいぶさんは、銃声の主を目で確認した。
「大丈夫ですか!?」
その主は警官だった。
「あ……」
今度は銃弾の跡を追った。
電柱にぶつかった自家用車、そしてその助手席と運転席には2体の死体が出来上がっていた。
k氏、後ろ美人、
k夫妻、
散る!!




