その5
翌日、僕は彼女と朝ご飯を食べて洗濯物を外に干した後、部屋で来月から使う教材にネームペンで名前を書いていた。
漸くその作業が終わったその時、ケータイが震えた。(基本的にケータイはマナーモードにしているのだ。)
『今からセツの家に行くけど、大丈夫?』
このメッセージの送り主は僕の親友である羽鳥伊吹である。彼は海外の血が混ざっていないのに、生まれつき髪が赤いのでよく不良に間違われるらしい。
しかし、その見た目とは裏腹に明るく社交的でクラスの人気者だったと記憶している。中学では毎年、クラス委員長もやっていた程である。
まあ、別に断る気はないけど一応彼女の事は伝えた方がいいだろう。
と、思って返信しようとしたその時ドアをノックする音が聞こえた。彼女だろう。
「はい。」
「ユキ君、羽鳥さんという方がいらっしゃているようなのですが、心当たりはありますか?」
どうやら、僕の返事を聞く前に家を出たらしい。珍しく彼女が慌てているのは、そういう理由だろう。
「おい、セツ。お前、いつの間にこんな美少女と同棲していたのか。俺に何も言わずに。」
「いやフキ、完全に誤解してるから。だいたい、この僕に彼女が出来ると思う?この人は母さんの親友の娘さんの矢埜白百合さんだよ。」
「はじめまして、サユリ・ヤノ・アボットと申します。」
「アボット?ハーフ?」
「はい。母がオーストラリア人でして。」
「ああ!どうりで美少女なわけだ。俺は羽鳥伊吹。一応、セツとは小学校から一緒で高校も一緒なんだ。」
フキと彼女は仲良くなったようで、ほっとした。まあ、フキは誰とでも仲良く出来る人柄なので、こうなる事は予想していたが。
「サユちゃん、フキはこの赤毛でよく不良と間違われるけど、良いヤツだから安心して。」
「はい、これから宜しくです。伊吹さん。」
「こちらこそ。ところで、セツ。なんで矢埜ちゃんがこの家にいるんだ?」
「ああ、それはね…。」
僕は彼女がこの家にいる理由を手短に説明した。本当の事を言うと、なんでフキが彼女の事を(初対面なのに)矢埜ちゃんと呼んでいるのかを逆に説明してほしかったのだが。
「そういえば、フキはなんで急に家に来たの?」
「ん?俺が暇だったし、どうせお前も暇だろうと思ったからだよ。そしたら、矢埜ちゃんがいてびっくりだよ。矢埜ちゃん、セツは目つきは鋭いし無口で反応が薄くて、あんまり感情を表に出さないけど悪いヤツではないから仲良くしてやってくれ。」
さっきから人の事を散々けなしているように聞こえているが、一応褒めているらしい。彼女はというと、ニコニコしていた。
「伊吹さんとユキ君、やっぱり仲が良いのですね。だって、言っている事が似ていますよ。」
確かに、フキと僕が言う事はよく似ていると中学の時に言われたような気がする。
我が親友はその言葉を聞いて得意げにこう言った。
「俺達、腐れ縁だからな!当たり前だろ?」
「いや、フキ。僕、サユちゃんとは幼稚園の頃からの付き合いだからね。」
「え?そうだったのか!セツ、それを早く言えよ。」
フキはしっかり者だが、時々本当にしっかり者なのかと疑いたくなるような発言もする事を思い出した。




