その4
夕方になって、母さんがいつもより早く帰ってきた。
「ただいまー。」
「おかえり、母さん。お風呂が沸いたけど、サユちゃんの後に入る?」
「うん、そうする。」
母さんはバッグの他にエコバッグを持っていた。中には野菜が数種類と鶏肉とカレールーが入っていた。
「カレー、作るの?」
「今日は野菜が安かったから、カレーにしようかなと思ったの。カレーはよく透さんが褒めてくれたから、白百合ちゃんも気に入ってくれるかなと思って。言っておくけど、手伝わなくていいからね!」
なるほど。つまり、父さんのお墨付きがあるから、彼女も気に入ると思っているのか。
「母さんのカレーはおいしいからきっとサユちゃんも気に入ってくれるよ。」
母さんにそう言うと、嬉しそうな顔を僕にむけた。
「透雪、ご飯よ。」
そう言って、母さんは僕を呼んだ。母さんはお気に入りの紺のエプロンを着けていて、その姿を見るのは久しぶりだった。
一階に降りると、既に彼女が座っていた。目の前のカレーは見た目は何の変哲もないけど、実は違う。
「さて、食べようか。いただきます。」
「いただきます。」
早速、カレーを口にする。うん、やはりこの味だ。冗談抜きに母さんのカレーは世界一だと思う。
「白百合ちゃん、どう?おいしい?」
「はい、とても。母が言っていた通り、妙子さんのカレーは世界一だと思いました。」
「あら、エルシィったら白百合ちゃんにそんな事も言ったの?」
「母曰く、カレーは妙子さんの得意料理だとか。」
彼女の言葉を聞いて、母さんはほんのり頬を染めて、
「エルシィが日本に来たら、作ってあげようかしら。」
と言っていたのは、僕しか聞こえていなかっただろう。




