その3
昼食が終わって乾いた洗濯物を畳んでいると、母さんから電話がかかってきた。
「もしもし、透雪?白百合ちゃんは?」
「さっき一緒にご飯を食べたけど。あっ、冷蔵庫にあったサラダとスープはもうないからね。」
「はいはい。今日は少し早く帰るつもりだから宜しく。」
そう言って、母さんは電話を切った。
夕飯は母さんに任せるとしてお風呂は早めに入れておこうか。あと、確かそろそろ食洗機のタイマーが鳴るから早く洗濯物をたたむか。
食洗機の中の食器を片づけ、洗濯物も畳み終わったので僕は部屋に戻る事にした。本当は良い天気なので写真を撮りに行きたかったけど、彼女を一人にするわけにもいかないので、部屋でまったりする事にした。
しばらく、本を読んでいたけど彼女の事が心配になった。荷物整理は終わったのだろうか。もし、終わってなかったら手伝おうかなと思ったのだ。
とりあえず、隣の部屋に行く事にした。入る前にノックをする。(女の子の部屋だからね。)
「サユちゃん、入ってもいい?」
「いいですよ。」
ドアを開けると、思った通り、荷物を解いていた。広げられたスーツケースにはまだまだ色々入っていた。手伝おうと思った。
「荷物整理、大変そうだね。手伝うよ。」
「え!?いいですよ。ユキ君は家事で大変でしょうから。」
「大丈夫だよ。今、暇だから。それに、二人でやった方が早く終わるから。」
「や、やっぱりお願いします。」
「まずは何から入れる?」
「そうですね、わたしは机の本棚に教材を入れるので、ユキ君は箪笥に服を入れて下さい。一番上にはハンカチと下着と靴下を、二段目にはパジャマとタオルと部屋着を、三段目にはジャージとパーカーとカッターシャツを、そして一番下にはTシャツとズボンを入れて下さい。夏物の服はまだ使わないので、スーツケースに入れたままにして下さい。」
こうして、僕達はそれぞれの作業に移った。僕はまず、一番下の段から入れる事にした。
「ユキ君、この辺りで工事が行われていませんか?何か、音が聞こえるのですか?」
「そういえば、この近くでマンションの工事をしているらしいから、その音かも。」
「少しうるさいので窓を閉めたいけど、埃がたまるから開けたままの方が良いですよね?」
「多分。」
そしてまた、作業が始まった。Tシャツとズボンは…、けっこうまとまっているから、これは早く終わるかも。しかし、服が多い。女の子は服が多いものなのだろうか?
夏服は夏服で一つの巾着に入っていたので、それはスーツケースに入れたままにして、改めてジーンズを出そうとすると…。
コツン。
ん?何か固い物に当たった。何だろう。ジーンズの下辺りに。
ジーンズを出すと、そこには風呂敷に包んだ四角い何かがあった。
「サユちゃん、この風呂敷は?」
「そ、それはノートパソコンです。それもわたしが片づけます…。」
あれ?彼女の顔が赤くなっている。風邪だろうか?
「サユちゃん、どうしたの?長旅で疲れて風邪ひいた?」
「いえ、違います。それより作業を続けましょう。」
「そうだね。まだ、時間がかかりそうだし。本棚の方は終わった?」
「はい、終わりましたよ。なので次は机の引き出しに物を入れようかと。」
「こっちは上から一番上以外は終わったから、もう少しで終わると思うよ。」
僕はハンカチを並べて置き、靴下もそれぞれの柄毎にまとめて入れた。あとは下着だけである。母さんの下着は洗濯物を畳む時に畳まないけど彼女の場合どうなのだろうか?
「サユちゃん、下着は畳んだ方が良い?」
「いや、別にどちらでも良いですよ。」
どちらでもいいのか。そういえば、普段の矢埜家はどうなのだろうか。聞きたいけど、机の引き出しに色々入れるのが大変そうである。
結局、下着(これもまとめて巾着に入っていた)も畳む事にした。どちらでも良いらしいので、僕がこの箪笥に入れた後は彼女の好きにしてもらおうと思ったのだ。
「サユちゃん、箪笥は終わったけど次は何をしようか?」
「棚にあるクローゼットにコートと制服をかけて下さい。」
棚、いや正確には戸棚かもしれないがとにもかくにも制服やコートをかけた。これは、箪笥よりも早く終わった。
「ユキ君、有難うございます。あとはわたし一人でやりますので。」
一応、彼女の言った事は聞こえたのだが、工事の音が少しうるさい。そこで、僕は彼女の耳元でこう囁いた。
「分かった。頑張ってね。また何かあったら、いつでも言うんだよ。」
彼女の顔がまた赤くなったので、多分風邪気味なのだろう。この後、僕は当初の予定通り部屋でまったりした。




