White その2
「どうぞ、ここがサユちゃんの部屋だよ。」
その部屋は僕の部屋の隣にある元・空き部屋である。たまにお客さんを泊める時に使っていたけど、母さんが彼女のために準備したらしい。
部屋は白を基調とした、清潔感漂う部屋となっていた。勉強机、椅子、ベッド、棚、たんす…。いずれも、新品らしい。
「気に入った?」
「はい、さすが妙子さんだなと思いました。」
やはり、彼女は気に入ってくれたらしい。しかし、母さんがいつの間にか家具を買っていたのは知らなかった。今は十二時。そういえば、お腹が空いてきた。
「ねえ、サユちゃん。お昼、食べた?」
「いや、まだ食べてないです。」
「じゃあ、今から作るから、食べない?」
「え?いいんですか!有難う御座います。」
僕は一階のキッチンに行って、まず冷蔵庫の中を確認した。母さんが買ってきたらしいサラダがあるので、それは使うとしてあとは…。
しばらくして、僕は彼女を呼びに行った。
「サユちゃん、ご飯出来たよ。」
「はーい。」
部屋から出てきた美しき同居人はコートを脱いだらしく、ジーンズに淡い黄色のTシャツを着ていて髪は一つにまとめていた。
階段を降りていると、彼女が話しかけてきた。
「ユキ君は料理も出来るのですか?」
「まあ、小さい頃から母さんは仕事で忙しかったから、何だかんだ言って小学校を卒業する頃には家事全般が出来るようになっていたかも。」
「それはすごいです。きっと、いいお婿さんになれますよ。」
一階のリビングのテーブルには、僕が既に盛り付けたサラダとオムレツとスープとおにぎりがそれぞれ二人分あった。
「じゃあ、食べようか。いただきます。」
「いただきます。」
僕達は向かい合わせで食べ始めた。おいしいと言ってくれるのか、正直不安だった。
「どう?おいしい?といっても、サラダは母さんが買ってきた物で、スープは昨日の残り、おにぎりのご飯は炊きたてじゃないけど。」
さっき作ったのはオムレツだけである。偶然卵とベーコンが沢山あったので急遽、一品増やしたのだ。
「このオムレツ、おいしいです!あの、おかわりありますか?」
「あるけど、そんなにおいしい?」
「はい!」
まさか、こんなに気に入ってくれるとは思わなかった。でも、おいしいと言ってくれてほっとした。
食後の玄米茶(僕があとで淹れたのだ)も飲み終わったところで、ずっと気になっていた事を聞いた。
「ところで、サユちゃんはどうして同い年である僕に対しても昔から敬語で話すの?僕が亡くなった父さんに似て目つきが鋭くて、無口で反応が薄い、つまらない人間だから?それとも、僕と話すのが嫌?」
彼女は目を丸くしている。少し、驚かせてしまったのかもしれない。
「まさか!ユキ君と話すのが嫌なわけないです。断じて違います!それに、ユキ君は面白くて、優しくて、きれいな顔です。」
なんだ、違うのか。あと、僕の事を褒めてくれて有難う。でも、だったらどうして?
「わたしは父の職業柄、よく大人がいらっしゃたのと、オーストラリアの小学校に通っていたからですかね。だから、友人にも敬語で話します。変な目で見られますが、気にしてません。」
別に僕の事が嫌ではないという事ではなかったと分かってよかったと思った。そういえば、彼女は耀臣さんやエルシィさんと話す時も敬語だったような気がする。
「ところで、ユキ君。わたしも聞きたい事があるのですが。」
聞きたい事?何だろうか?
「どうしたの?」
「ケ、ケータイの電話番号とメールアドレスを教えていただきたいのですが、ダメでしょうか?」
「え?いいよ。ちょっと待って、ケータイ取ってくる。」
なんだ、そんな事か。丁度、僕も同じ事を考えていた。合格祝いのスマホ(前はガラケーだった)を取りに行く時、別にダメとか考えないのにと思った。
こうして、僕達はケータイの電話番号とメールアドレスだけでなく、二つのSNSのアカウントも交換したのだった。どうやら、母さんが彼女に僕と連絡先を交換するように言ったらしい。(後から分かった事だが)




