↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
どん底TS転生した俺は聖女の称号を望まない~龍殺しのルシアと呼ばれて出世する?そんな面倒は勘弁してくれ~  作者: RCAS
竜哭峠編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

77/80

七十七話:龍を断つ光

「行くぞ!」


 アルヴィンが地面を蹴る。俺もその背中を追い、風龍へ向かって走り出した。

 治癒で痛みを誤魔化したはずだが、それでも足を踏み込むたびに身体の奥が軋み、息もすぐに苦しくなってくる。

 だが、そんなものは知ったことか。走ってレイブレードを一度振るえれば、それでいいんだ!


 風龍との距離が縮まる。

 俺たちを迎え撃つように灰青の翼が大きく広がった。


 ――来る!


 身構えつつも走る速度を落とさない。

 アルヴィンがなんとかすると言った以上、俺より前を走るアルヴィンの背中を信じて突き進むのみだ。

 だが、予想していた突風が来る気配はなかった。ただ、髪と服だけがふわりと浮かびあがるようなこの感覚――上か!?


「ルシア! 私に掴まれ!」


 アルヴィンが叫ぶと同時に立ち止まり、その場に剣を地面へ突き立てた。

 言われた通りにアルヴィンの背中に抱き着くと同時に、足元が揺れる。

 なんだこれは? そう思うと同時に周囲の土と岩がせり上がった。


「うおっ!?」


 太陽の光が完全に消え去り、暗闇が俺たちを包みこむ。

 これは、土の中に閉じ込められた? いや、土によって守られているのか?


 直後――轟音が響く。

 必死にアルヴィンに掴まりながらも考える。上から来ると俺は思った。その直感が正しいとするのなら、これは上空から落ちてきた暴風が土の殻へ叩きつけられた音だ。

 その証拠に、頭や背中へ砂が降ってくる。暗闇の中に光が走るが、それは土の殻にひびが入っているってことだ。

 アルヴィンの身体にさらに力がこめられるのが分かった。これが魔法だとするのなら、必死になって耐えながら維持しているんだ。


 ――まるで土遁の術だ。風に対する防御としては理想的か?


 ふざけた感想だが、これがアルヴィンの温存していた手であるらしい。

 攻撃ではなく防御のための魔法運用。俺を風龍の懐まで運ぶため、一度だけ使える切り札ということか。

 しかし、轟音とともに大きな亀裂が走る。これ以上は保たない! そう思ったところで、土を削る音が急に弱くなる。


「今だ!」


 アルヴィンが腕を振るうと、前方を覆っていた土が崩れた。

 視界の中に光と風龍の姿が戻って来る。アルヴィンは地面へ突き刺した剣を一気に引き抜いた。

 それと同時に反射的に二人で崩れた土の殻から飛び出し、再び風龍へ向かって走る。


 攻撃を防がれたからなのか、風龍が苛立ったように吠える。

 今度は横から突風が押し寄せるが、この程度なら耐えられる。

 魔力の集中、収束が足りていないぜ! 焦ったなアークドラゴン!


「私が隙を作る! ルシアは懐に飛び込め!」


 アルヴィンが剣を担ぐようにしながら風龍に向かって突撃する。

 すでに風龍にとっての至近距離! 灰青の爪が動き、振り下ろされる先はアルヴィンだ。

 風龍の前脚が迫る。アルヴィンは逃げず、剣を斜めに構えて正面から受け止めた。

 硬いもの同士が噛み合う鈍い音が響く。剣の上を爪が滑り、アルヴィンの身体が沈んだ。両足が地面へめり込み、腕も小刻みに震えている。


 おそらくはさっきの魔法の応用で力を地面に逃がしている。めり込んだ足はその証拠だ。

 だとしても長く保つはずがない。だが、風龍の前脚も視線もアルヴィンへ向いている――これが俺のために作った一瞬だ!


「ルシア、私を踏み台にしろ!」


 その言葉で、全てを理解した。

 走りながら勢いを殺さずにジャンプして、アルヴィンの背中へ向かって跳ぶ。その肩へ足を置き、踏み台にしてさらに強く跳んだ。

 その勢いで高く飛び上がりながら、風龍の懐に向かって突き進む!


 俺の小柄な身体が、風龍の頭よりも高い位置にある。

 俺を追って首を動かすが、噛みつきで対処しようとしているのか? だが、すでに遅い!

 揃えた指先へ、残っている聖法力を全て流し込み振りかぶる。怖さに負けて早く振るな。もっと近くへ。確実に断てるところまで行け!


「……ッ!」


 全ての力を一点に!

 白い光が一気に伸び最大まで膨れ上がる。空中で身体を捻りながら、その勢いのまま右腕を振り下ろす。

 光刃が風龍の首の付け根へ食い込んだ――。


「はああああっ!」


 落ちる身体ごと押し込むように、レイブレードを振り抜いた。

 視界の端に映る光の軌跡は灰青の鱗を断ち割り、首の付け根から胸元へ袈裟懸けに走る。

 着地と同時に光の刃は姿を消して、残るのは聖光の残滓だけ。

 視界を上に向ければ切り裂かれた風龍の白い肉が一瞬見えた。しかし、すぐに暗い赤色の血が傷口から噴き出す。


 風龍の前脚から力が抜け、アルヴィンを押さえつけていた爪が地面へ落ち、長い首が大きく仰け反る。

 何度かたたらを踏むようにして耐える素振りを見せた後――後ろへよろめきながら風龍の巨体は台地へ倒れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。