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そのじゅうさん お兄ちゃんは辛辣



「伊吹!?」

「お兄!?」


お兄ちゃんの姿を確認したあと

私はすぐさま上に向き直した。


だって! おしっこチビりそうでしたから!


お兄ちゃんの顔面にシャワーするような

高度なプレイは今の私には流石にちょっとレベルが高杉なので

今は遠慮しておこうと思います!


「お兄……どうしてここに…………あっ!」


そういや、家族間でお互いの位置情報がわかるように

スマホにアプリを入れてたんだった。 忘れてたよ。


「あやめ!」


「あー…………お兄、ごめん! 説得してたんだけど、その……」


私は天を仰いだまま、少し大きめの声を出して喋る。


「わかってる。 苦手なのに怖い思いさせて悪かったな。

あやめはもういいから降りてきてくれ!

見てるこっちが気が気じゃない」


「いや……でも……」


志半ばで降りるわけにはいかない。


けれど、まずいです。

お兄ちゃんが聴いてる中

今の攻防をこのまま続投させるせるわけにもいきません。

流石にそれは恥ずかしすぎる。


「伊吹! もしかして、私を止めに来てくれたの!?」


奈芝美ちゃんが少し喜んでいる。

だからと言って止まる気はあるのだろうか?

確かにお兄ちゃんの言葉の方が私なんかよりは

彼女には刺さるのかもしれないけれど。


「そうだよ! けれど、奈芝美! 

オレはどうしてもお前に伝えたいことがあるから、ここに来た!」


びくりと、彼女の肩が震えた。


あ! これホントに刺すやつだ。

奈芝美ちゃんも既に察したっぽい。


「……い、今は、話すことなんか無い! 

折角だけど、伊吹は帰って!

私のグロ画像なんか、見たくないでしょ!」


うん、そりゃ普通は誰もそんなの見たくはないと思うよ。

お兄ちゃんが特殊な性癖を持ってたりしなければ、だけど。


「お、お兄! 今ここであんま彼女を刺激するようなことはっ!」


「……どうかな? 正直オレにも正解なんてわかんねえ!

けれど、オレのせいで奈芝美が今この行動を取っているのは

紛れもない事実だ。 だったらとにかく思いの丈をぶつけてみるしかねえ!

その結果がどうであれ、それは受け止めるしかないんだよ!」


「お、お兄のせいなんかじゃ……」


もし、彼女が飛び降りたとしてもそれは間違いなく彼女の自己責任だ。

結果がどうなろうとお兄ちゃんが罪を被る必要なんてどこにもない。


だけど、お兄ちゃんはそんな法律的なことを言ってるんじゃないのだろう。

自分の存在そのものが彼女の運命を変えてしまうかもしれない。

そのことに責任を感じているのだ。


「奈芝美、けっしてお前のことは嫌いじゃない!」


「……っ!」


「正直、好きだと言ってくれて嬉しかった」


「……も、もういいよっ! 今は、今はそれだけで、充分っ!」 


「だけどな」


「やめてっ! それ以上言うと、今すぐ飛び降りるからっ!!」


うわ、奈芝美ちゃん、問答無用で黙らせに来たよ。

これじゃあ流石のお兄ちゃんも何も言えなくなる。


「…………お前のことは、好きだぞ」


「「!!」」


そ、そう来ましたか……

お兄ちゃんがどう出るかと思ったけど

流石に今の台詞で今すぐ飛び降りるのはしないよね


けれど、ちょっぴり私の気持ちは複雑です。


「もしも、お前が男だったら……か……

確かに、今のオレには正直まだ考えられないが

いずれオレも女として生きる覚悟を決めなきゃいけない時が来るんだろう。

その時は、もしかしたら本当にお前と付き合うという未来も

あったのかもしれない」


「だ、だから! 今から私が男になって!」


「だがな!」


「!」


「オレが、なりたくて今のこの姿になったとでも思っているのか!?」


「「!!」」


「……いや、本来ならもうオレはこの世にいなくなってる筈なんだ。

今のこの状況でも破格の大幸運なんだってことは、自分でもわかっている。

これからも、オレはこの世界に居続けお前達を見守ることができる……

オレは、神様には感謝しなくちゃいけない立場なんだってことは……

そんなことは、わかっちゃいるんだ!」


お兄、ちゃん……


「だけど、奈芝美! お前はそうじゃない!

今、お前は捨てなくてもいい命を、自ら捨てようとしている!

何のために!? 誰の為にだ!?

そこに、一体何がある!?」


「だ、だからそれは、伊吹のために……」


「ふざけんな!」


「っ!」


「おまえは、ただ自己満足したいがためにやっているに過ぎない!

そんなことをしてオレが喜ぶとでも思うのか?」


「ち、違う! 私はただ」

 

「違わないだろ! 

確かに、もしお前が飛び降りたら

そのことに関してはオレはきっと責任を感じるだろう。

もしかしたら同情・・でお前を選ぶこともあるかもしれない。

だけど、そこまでだ! そのやり方では、そこまでなんだよ!

そんな愛情もない結ばれ方でもおまえは構わないというのか!?」


「さ、最初は一方通行でもいい! 構わない!

だけど、そこは努力で……きっと! なんとかしてみせるよ!」


「…………少なくともオレは、

命を軽んじ簡単に捨てるような奴なんかは、一切信用しないし、できない!

そんなやつの人を思いやる気持ちなんて薄っぺらにしか見えないんだよ!

とてもじゃないがオレが心を許す時が来るとは――――思えないな!」


「っ!」


「オレは、あやめが望むなら生涯あやめと一緒に居ると、そう誓った。

オレに取ってはあやめの願いが何を置いても最優先だ。

……だから、悪いな! 奈芝美! そういうことだ」


「…………あ……」


「オレの言いたいことはそれだけだ。

それでも飛び降りるというなら、好きにしろ!」


「…………」


よ、容赦無いね、お兄ちゃん!

流石に私も、もしもそこまで言われたら立ち直れる自信無いよ!


でもこれくらい言わないと

奈芝美ちゃんは止まらないと判断したんだろうね。


だけどこれ、大丈夫かなあ?


「な、奈芝美……ちゃん……?」


私はおそるおそる直上の彼女の方を見る。


彼女は俯いたまま歯を食いしばりながら

ぶるぶると身体を振るわせていた。


「…………」


「そ、その……きっと、あれだよ!

お兄も、奈芝美ちゃんのことを想って、

止めたい一心で少し大げさに言ってるだけだよ!」


「あやめ! フォローはしなくていい!

あとは自分で決めればいいだけだ」


「で、でも……」


なんか、横で聞いてて私も心が痛かったんですけど。

余波を浴びてすらこうなんだから

直撃を食らった彼女の心情を察するに余りあるというか……



「……………………っ!

…………だ、だって! だって!! 

だってこうでもしないと、伊吹が……

伊吹が私のこと……み、見てくれな…………う、うええっ!


うえええ~~~ん! うええええええ~~~~ん!!」


あ、ああっ!?

遂に、泣き出しちゃったよ!

幼い頃から負けず嫌いで、滅多に泣くことのなかった彼女が……



「なな、奈芝美ちゃん! お、落ち、落ち、落ち、落ち着いて!」



あああああ、涙と涎と鼻水が……上から降って来てるよ。

いやまあそれはいいんだけど、いや、やっぱよくないけど。

なんとか泣きやまさないと!



あ、ちなみに、けっして辞書に載ってる

『落ち着く:落ちて下に着く。』

という意味合いで言ってる訳ではないですからね!


いや、ホントに!



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