噂と友人
診察や魔力検査も終わって、俺とラールは村の食堂に来ていた。
「ねえトラヴァー、どうしてガドルは村の人に怖がられてるの?」
「まあ、あの顔だしな」
「なんで?かっこいいのに」
「それ言うの多分ラールだけだぞ」
不服そうにオムライスを頬張るラール。あの顔をかっこいいなんて、ラールは肝が据わっている。俺だって初めて会った時は驚いたのに。
「でも、ガドル優しいよ?なんで怖がられなくちゃいけないの?」
「そーだよなぁ。それは俺も思ってんだ」
ガドルは優しい。あんなデカイ体してるけど、争い事を嫌ったり、攻撃魔法が苦手だったりする奴だ。
怖がられる要素はそんなにない。ただ、顔が怖いだけの奴だ。
「人ってのは、どうしても外見でそいつを判断する生き物だ。多分、それが大きな原因だな」
俺だって、この見た目で医者をやってるなんて思われないし、診療所へ来た人たちも、最初は疑わしい目を向けられることがある。
それでも、今はそれなりに信頼されるようになってきた。
「ガドルの場合はな、誤解されてるだけなんだ」
「誤解?」
「そ。あいつ、昔から小動物が好きなんだけどな──」
昔、あいつがまだ村の近くに住んでいた頃に、森の中で子供や小動物が怪我をすることが多くなった時期があった。
その頃からガドルはよく森に出入りしていてな。
運が悪いことに、怪我をした子猫を保護しようとしていたガドルを見て、村人はガドルが子猫を傷つけたと勘違いしたんだ。
「ガドルはそんなことしないよ」
「そうだな。あいつ、動物好きだもんな」
でも村人はそれを知らない。勝手にガドルが悪者だって決めつけて、攻撃したんだ。
ガドルは勘違いされてるって分かってたのに、何も弁明しなかった。
「──それかららしい。ガドルは怖いやつだって噂されるようになったのは」
「……なんでガドルは勘違いだって言わなかったのかな」
「さあな。あいつのことだし、村人と言い争いになりたくなかったんじゃないか?」
その真相は俺にも分からない。ガドル自身も話したがらないし、俺も無理に聞く気はない。
「さ、食べ終わったし帰ろうか。ガドルも待ってるよ」
「うん」
会計を済ませて食堂を出る。この村は平和だ。ただ、今もガドルのことが噂程度に広まっている。ラールがガドルの所で暮らしているってことは、知られないようにした方がいいかもしれない。
「ねえトラヴァー」
「なんだ?」
「トラヴァーは、なんでガドルと友達なの?」
まあ、あの話を聞けば当然の疑問だな。俺もその噂を聞いていた側だ。 ガドルに会うまでは、とんでもない奴だと思ってた。
そして、薬草を取りに森へ入った時、ガドルと出会った。でも、実際に会ってみたら、噂とは違う人で驚いた。
「ガドルの優しいところを知ったからかな」
森に詳しくて、医者の俺よりも薬草や薬の知識に長けていた。自分でも薬を作ってると聞いた時は驚いた。売ってもらうようになって、何年経っただろう。
「ラールもガドルと仲良くしてやってね」
「うん!もちろん!」




