お風呂とごはん
ガドルの家は、森の抜けた先にある丘の上にあった。あまり人が寄り付かなそうな、静かな場所だ。
「えぇっと、とりあえずお風呂入ろうか。一人で平気?」
「大丈夫」
いくら幼い体とは言え、さすがに裸を見られるのは恥ずかしい。こちとら生きた年数だけで言えば二十を超えてる。もういい大人なんだ。
「にしても、広〜い……」
大柄なガドルに合わせた設計なのか、私から見たらすごく広いお風呂。シャワーや風呂桶も、大きく見える。
石鹸を泡立てて、体と髪を洗う。最初は泡が濁る程に汚れていたけど、繰り返すうちに汚れはなくなっていく。
そういえば、今世でこんなちゃんとしたお風呂に入ったのは初めてかもしれない。
「あ、そういえば着替え……」
お湯に浸かって一息ついた時、着替えの存在を思い出した。私が着ていたのは、到底服とは言えないボロ布。あれはガドルが捨ててしまってるかもしれない。
「あの服、ずっと着てたから地味に気に入ってるんだよね……」
そう呟いた時、風呂場のドアが叩かれる。
「タオルと着替え置いておくね」
「あ、うん。ありがとう」
「ゆっくり温まってね」
ガドルはそれだけ言って離れて行った。
それにしても、着替えなんてどうやって用意したんだろう?元からあった訳じゃないだろうし……。
まあ、用意してくれたものはありがたく使わせてもらおう。
お風呂から上がって、用意された服に着替える。服はシンプルなワンピースで、サイズもぴったりだ。
とりあえずお礼を言おうと、脱衣所を出てリビングの方へと向かう。
「あ、あの」
「お、サイズぴったりだね。よかった」
「あ、ありがとう……」
「いいんだよ。お腹は減ってる?スープ作ったんだ」
ガドルに抱えられ、背もたれが自分の背丈位の椅子に座らせられる。テーブルと高さが合うように、椅子にはクッションが何枚も重ねられている。
「(至れり尽くせりってこの事だな……)」
「はい、どうぞ」
目の前に置かれたスープは、とてもいい匂いがした。スプーンを使って一口食べてみる。
「……!美味しい」
「よかった」
向かいに座ったガドルも、同じスープを飲んでいる。私にとっては大きな器でも、ガドルにとっては丁度いい器。体躯の差がありありと分かる。
「……ねえ、なんでこんなに世話してくれるの?」
こんな子供を拾うなんて、なんの得にもならないはずだ。それに服とか料理とかも用意してくれて、何か裏があるんじゃないかと疑ってしまう。
「んー、放っておけなかったからかな」
「え……?」
思ってたよりもシンプルな答えに驚いてガドルを見た。優しく微笑んでいるのを見たら、嘘では無いことがわかる。
「それで、キミの安全のためにもここで暮らして欲しいんだけど、どうかな」
優しい声でそう問いかけてくる。ガドルは純粋な厚意で助けてくれたんだ。
「えっと、これからもよろしくお願いします……」
「うん。よろしくね」
そして、私とガドルの共同生活が幕を開けた。




