1-6 VS 私人逮捕系配信者 パトロンミネット
私人逮捕系配信者のパトロンミネットに絡まれ、俺は年甲斐もなくアクションをする羽目になってしまう。もう歳だからこういうのはしたくないんだが。
ネックとなるのはジャベリンとクスクスが撮影している事だがその事を意識しながら立ち回れば問題ない。
いざという時の盗撮カメラもあるし、暴力の証拠が残らない様に攻撃すればいいだけだ。
ただそれでも言う程簡単ではない。せめて相手が持っているカメラが一つだけになればいいんだが。
「うずうず。いける?」
「オウフ」
仕方ない、ここは角から様子を伺っているあいつの助けを借りよう。だけどあまりでしゃばるんじゃないぞ。
「オウフ!」
『ギャー!?』
「おっ」
「って何だこの犬!?」
ロッシーは遺伝子に刻まれた狩猟本能を発揮して小鳥を捕まえる様にネクラ・クスクスに飛び掛かる。
『ちょキェンタマmmm見せつけんなくぁwせdrftgyふじこ!!』
「クスクスー!?」
精密機械のネクラ・クスクスは何も出来ずに漢固めでロッシーに抑えつけられ、願っていた通りカメラを潰せた。
普段はアホ犬なのに毎度の事ながら地味に頼れる相棒だ。こいつのお陰である程度自由に動き回れる。
「仕方ねぇ、うおらぁあッ!」
パトロンミネットの面々は不意打ちにパニックになりながらも攻撃を開始した。
一番槍はやはり喧嘩が強そうなグレルオブザデッドだった。彼は大振りな喧嘩スタイルで攻撃してくるので余裕で避けられる。
「グレル、やっちゃって!」
こういう力任せに戦う輩は後ろから羽交い締めにする奴がいて初めて攻撃が成立する。予想通り流雨牛が背後に回り込んで俺を拘束したのでここまでがワンセットなのだろう。
「よっと」
「ってあらフゴッ!?」
「流雨牛!?」
が、コツを知っていれば脱出は容易い。
俺がするりと抜けると流雨牛は見事にグレルの顔面パンチを喰らい、鼻血を出して顔が潰れてしまう。
「何やってんだよ、流雨牛ッ!」
「テメェこそ何すんだよッ! 百年に一人のイケメンの俺は数合わせの汁男優みたいなお前と違ってイケメンなんだぞ殺すぞッ!」
「んだとゴラッ! ならこっちは百年に一人の汁男優だッ!」
「いやお前ら何言ってんの!? ああもう、食らえッ!」
グレルと流雨牛は仲間割れをし、その隙にドクターボビーが催涙スプレーを持って襲い掛かる。護身用以外で使うのは普通にアウトだが気にしていない様だ。
「あらよっと」
「ありゃ!?」
俺はすかさず噴射される前にドクターボビー目掛けて駆け出し、両肩に手をついて飛び越え前方に突き飛ばす。
「ぷぎゃー!?」
「ジャベリン!?」
彼は勢い余って催涙スプレーを噴射してしまい、射線上にいたジャベリンはもろに直撃して悶え苦しみ自撮り棒を落とした。
「そらよっ」
「あうあう、あたしのスマホッ、ってギャー!?」
後はこれをポーイ、と放り投げて。
彼女は急いでスマホを回収しようとしたが、ベキ、と走行中の自動車のタイヤに踏み潰される瞬間を目の当たりにしてしまった。
「オイコラクソジジイッ! テメェなにしやがるんだッ! 訴えてやるッ!」
「そうか。だがそれを証明する事は出来るのか?」
スマホを粉々にされたジャベリンは激怒してしまったが最早彼女に為す術はない。もしも何かがあれば盗撮カメラの映像をいじって警察に提出すればいい。
あまり大きな声では言えないが警察も大事な顧客だ。
俺が逮捕されれば困る人間は大勢いるので、責任を取るのが何よりも嫌いな彼等は全力で護ってくれるだろう。
「おいおい、何の騒ぎだ?」
「っ」
だがその前に車から降りて来た尾張連合会が何とかしてくれるはずだ。
おそらく美馬坂が寄越したのだろうが、ただならぬ風体の男達を前にジャベリン達は血の気が引いてしまう。
「い、行くぞ! ほらっ、早く!」
「あわわっ!」
「あ、ああっ!」
「ヒィ!?」
輩なりに決して関わってはいけない相手である事はすぐに分かったらしい。よろめきながら立ち上がったジャベリン達は慌ててその場から走り去っていった。




