1-7 尾張連合会四人衆の大島、前田、指原、そして坊主頭の峯岸。なお他意はございません
私人逮捕系配信者のパトロンミネットを難なく退け、しばらくして美馬坂が陽気に笑いながら姿を見せた。
「代わりにお灸を据えてくれてありがとうだみゃあ。あいつらには迷惑しとったけど、お陰で手間が省けただぎゃ」
「貸一つでいいか」
「おう、今度何かあったらちょっとしたお願いなら聞いてあげるだみゃあ」
少しばかりトラブルはあったが美馬坂に恩を売る事が出来たのは大きいだろう。
とはいってもこの程度の事では大したリターンもなさそうだし、正直こいつとはあまり仲良くしたくはない。
「パパ、大丈夫だった? ロッシーも流石だね!」
「オウフ!」
「ああ、だがあまり無茶はしないでくれ。今回はアホが相手だったから良かったからいいが」
続けて隠れていたニナも現れ、ロッシーは誇らしげに吠えて活躍を自慢した。
「ハッハッハ、ニナちゃんはもう立派な助手だぎゃ。カラマーゾフ事件の時も大活躍したって聞いとるだで」
「そうそう! 美馬坂のおじちゃんもこう言ってるし、いい加減私とロッシーを助手に認めてよ! 血は繋がっていないから義娘とのカップリングもありだよ!」
美馬坂を味方につけたニナは訳の分からない事を言っていた。
あまりこんな胡散臭い人間と仲良くして欲しくないが、親が裏の住人なので仕方がないだろう。
人の振り見て我が振り直せ、義娘のためにも自分が襟を正さなければ。
「そうか。なら毎回地味に活躍しているロッシーを助手にしよう」
「オウン!」
俺は妥協案としてロッシーを助手に指名し、ドローンを押し潰していた彼は嬉しそうにぴょんと俺に飛び掛かった。
つってもカラマーゾフ事件の時もそうだったけどこいつはお利口な犬ってレベルじゃないからなあ。なので助手云々の半分くらいはガチだ。
「む~! パパのいけず~! そどみーは流石にないよ!」
「何言ってんだお前。ん?」
『ギ、ギギ……』
だがニナと馬鹿馬鹿しいやり取りをしているとネクラ・クスクスのドローンが動き出してしまう。
どうやらまだ飛行機能が生きていたらしい。
「しつこいぞ」
取り巻きの坊主頭のヤクザはすぐにドローンを踏み潰して完全に動かない様にする。もう壊れていると思ったけど油断したか。
「おじちゃん達もパパを助けに来てくれてありがとうね」
「おう。これやるよ。ロッシーにもほら」
「わあ! ありがとう!」
「オウン!」
ニナは坊主頭のヤクザにも挨拶をしてお菓子を貰う。ロッシーも懐いているしすっかり顔なじみの様だ。
「ええと……誰だっけ、そいつら。尾張連合会の本家の連中だよな。似た様な顔だから覚えてないが」
「左から大島さん、前田さん、指原さん、そして坊主頭の人が峯岸さんだよ!」
「そうか。どうせなら全員同じ見た目に統一したほうがいいとは思うが他意はないんだな」
美馬坂の部下の四人衆はどれも似た様な見た目をしていたが、何故か峯岸だけが頭を丸めていた。
「峯岸は元々尾張連合会じゃにゃあで赤月会からの出向役員だみゃあ。だからちょっとデザインが違うんだぎゃ」
もちろん坊主頭のヤクザくらいいるだろうが何故だろう、別の何かを連想してしまうのは。
「でも昔はフサフサの金髪だったよな。そういやお前っていつからその髪型だったっけ?」
「尾張連合会と赤月会の抗争からだよ。あの時にいろいろあってイメチェンしたけど。まあ察しろ」
「ああ、アレか。あの時は大変だったよなあ」
「そうそう、俺もソープで楽しんでた時に大型トラックが店に突っ込んできて危うくそのままイッちまう所だったよ」
本家四人衆は何やら物騒な想い出話をしていたが、ヤクザの過去なんて知らないほうがいいだろう。
「じゃ、お礼にこの間出来た『マゾ豚掘門倶楽部ナーゴ支店』の無料クーポンをやるだみゃ」
美馬坂はヘラヘラと笑いながらポケットから無料クーポンを取り出す。
あまり詳しく見たくないが『男の娘』『SM』との文言が並んでいるので風俗の中でもマニアックなジャンルの店の様だ。
「今なら葉瀬帆本店のオーナーが自ら接客してくれるだで、ドスケベ緊縛快楽昇天コースでオプションに地獄のチン玉責めと悪魔のケツ穴ボルケーノを無料で楽しんでこいだみゃあ」
「悪いが仕事があるから遠慮しておく。念のためさっきの連中の対処もしないといけないからな。行くぞ、ニナ、ロッシー」
「うん! バイバイ、美馬坂のおじちゃん!」
「オウフ!」
「そっか、そりゃ残念だみゃあ。ニナちゃんもまた遊びに来るだみゃあ」
俺は美馬坂の誘いを丁重に断り先を急ぐ。
俺だけならいいが、ネクラ・クスクスのドローンが撮影した映像や音声にはニナが映っているかもしれない。
こういうのは初動が肝心なので依頼を済ませ次第パトロンミネットとかいう連中の対処をしなければならない。
尾張連合会にビビッて逃げた連中が脅威になる事は無さそうだが、念には念を入れて大事になる前に早めに潰しておこう。




