4-2 尾張連合会の制裁
決戦の舞台となったのはスペインの古城を思わせるエリアで、ポート・ワカノーラの目玉でもあるスカイハイ・キャッスルが楽しめる場所だった。
だが昼間ならともかく雰囲気があり過ぎて夜に訪れるべき場所ではない。作り物だとわかっていても非業の死を遂げた貴族の幽霊とかが出てきそうだ。
「こちらデス。ここから先は静かにしてくだサイ」
「ああ」
「ロッシーもわかった?」
「オウフ」
ただ今は幽霊よりも実在する脅威を警戒すべきだ。この先には幽霊よりずっと凶悪な連中がいるのだから。
ブルルルンッ!
「ぎゃあああ!?」
「ボビーッ!?」
古城に近付くと悪魔の唸り声の様なエンジン音が聞こえ、続けて男の叫び声とジャベリンの悲鳴が聞こえてしまった。
「……クソッ」
どうやら俺達は間に合わなかったらしい。
城の前の様子を伺うとそこにはチェーンソーで胴体を切り裂かれたドクターボビーの惨殺死体があり、尾張連合会の構成員と思しき男が肉塊となった彼を水路に投げ捨てた。
「あれは」
また血塗れのチェーンソーを持っていた人間は何度か遭遇したモデルの様な少女だった。
園内で出会った時は年甲斐もなく見とれてしまったが、処刑を終えて返り血を浴びた彼女は歪んだ笑みを浮かべており、口元に付着した血を舌で舐め堪能していた。
「クゥン」
さらに彼女を見たロッシーは寂しそうに鳴いてしまう。
(そういう事だったのか……)
そうだ、間違いない。
だいぶ前に一度写真を見たっきりだったので忘れていたがようやく思い出した。
あいつはロッシーのかつての飼い主で、洗脳の果てに家族を惨殺した尾藤葉子だ。
カラマーゾフ事件ではあの忌まわしい事件の真相が明かされる事はなかったが、まさかこんな形で彼女に出会う事になるとは。
「あぁ、あああ……!」
「なんで……どうしてボビーを殺したんだ!」
凄惨極まる光景に恐怖したグレルオブザデッドは抗う意志を一切無くしてしまったが、ジャベリンは声を震わせながらなおも彼等に歯向かい続ける。
「そうは言うてものう。こいつは配信者になる前はクスリの売人をしとったしのう。質が悪ぅて何人も死んどったし当然の結果だと思うんだみゃあ」
呆れた様子の美馬坂は高級ゴルフクラブをスイングし、残ったドクターボビーの頭部を弾いて水路にドボン、と放り込んだ。
ドクターボビーがクズだという事は知っていたが配信者になる前から裏側の人間だったのか。ならばこの情け容赦ない処刑方法も納得ではある。
「ただおみゃあさんらは一応カタギだからみゃあ。親父からあまりやり過ぎるなって言われとるしどうすっかにゃあ」
「殺さないで……! 何でもするからぁ……っ!」
グレルオブザデッドは歯をガタガタと震わせ命乞いをする。
こんなものが美馬坂に通用するとは思えなかったが彼はしばらく考えこんな提案をした。
「ふぅむ。おみゃあさん、よう見ればええ身体しとるのう。一皮剥けるつもりはないかみゃあ?」
「へ……あ、ああ!」
グレルオブザデッドは意味も分からず了承してしまう。そして美馬坂は部下に顎で指示を出し彼を建物の影へと連行した。
「グレル!? おい、どこへ連れて行くんだ! グレルに何をするつもりなんだ!」
「え? え? え?」
おそらくジャベリンも何をするつもりなのかはわからなかったはずだが、連行するヤクザはドスを持っていたので良からぬ何かをされる事は理解出来たはずだ。
「あの、何を、」
建物の影に隠れて何をしているかはわからないが、カチャカチャとベルトを外す音が聞こえ布が擦れる音がする。
おそらく今グレルオブザデッドはズボンとパンツを脱がされているのだろう。
「え? ちょ、あっ、ギャアアアアア!?」
「グレルッ!?」
グレルは耐え難い痛みに絶叫する。
何をされたのかは大体想像がつくが何て恐ろしい事をするのだろうか。
「バーイバーイグッドバーイタートルネックボ~イ。おみゃあさんはこれくらいで勘弁してやるだぎゃ。やっぱり男は一皮剥けてナンボだみゃあ」
陽気に歌を歌った美馬坂はカッカッカ、と下品に笑い、パトロンミネットで唯一残ったジャベリンに視線を向けた。




