4-1 決戦の地、ポート・ワカノーラ
推理を終えた俺達はジャン・バルジャン事件を終わらせるために再度ポート・ワカノーラへと足を踏み入れた。
「まずはあれをどうにかしないといけマセンね」
「ったく、深夜だってのに暇な奴しかいないのか」
ポート・ワカノーラは閉園中だというのに、入口周辺には配信者やマスコミがうろついていた。
四六時中張り付いて、毎度の事ながらこいつらの普段の暮らしが心配になってくる。
もちろん警察が警備しているが、おそらく何人かは警備の目を掻い潜って侵入してしまっただろう。
「目立つのは嫌だな。別のルートで中に入るべきか」
「その必要はないんじゃないかな」
だが侵入経路を思案していると真矢は悪そうな笑みを浮かべてしまう。
「バウバウバウ!」
ロッシーもまた良からぬ気配を察知し激しく吠える。
何だろう、滅茶苦茶嫌な予感がするんだが。
「ん?」
すると直後に車の走行音が聞こえ、俺達は背後から強烈なハイビームで照らされた。
「堤さん、後ろ!」
「ってうおおお!?」
そしてコレットが叫んだ事でようやく背後から猛スピードで突っ込んでくるダンプカーに気付き、俺は急いでその場から離れた。
「うわあああ!?」
「ぎゃあああ!?」
暴走するダンプカーは群衆や警察の事など一切お構いなしに園内に突撃、ゲートを粉砕して内部に侵入してしまう。
「オラァッ!」
「な、なんだお前らは!? がああ!?」
ダンプカーの荷台には仮面をつけた連中がいて、彼等は警察官の制止などお構いなしに鉄パイプで力任せに殴りつけた。
「死ねやッ!」
「うわあああ!?」
暴徒はその場に存在するものを手当たり次第に襲撃し、あれだけいたマスコミや配信者は蜘蛛の子を散らす様に去っていってしまう。
「あれは尾張連合会か? それとも闇バイトアプリで集まった奴なのか?」
「どっちでもいいんじゃないかな。確かなのは問答無用で殺しにかかってくるって事さ」
正体不明の仮面の暴徒がどちらの勢力に所属しているのかはわからないが、明確に敵意を持った存在だという事は一目瞭然だ。
「デスがお陰で通れる様になりマシタ! ここは行くしかないデショウ!」
「ったく、やっぱこうなるのかよ」
普通はさっさと逃げるのが賢明だがコレットは戦う気満々な様だ。
こうなる事を予想して道具を用意していた俺は特殊警棒を取り出した。
「それで? ミシェルはカポエイラを使えたがお前にはなんかあるのか?」
「もちろんデス!」
だがこんなものは気休めにしかならない。
いい歳をしたオッサンが毎回女性に護られ情けない限りだが、ここはコレットに期待するしかない。
「ワタシのエスパーをご覧くだサイ! ビリビリパーンチ!」
「おおっ!?」
するとコレットは両手から電撃を放ち、マジックハンドの様に勢いよく伸ばして暴徒を掴んだ。
「あばばばばっ!?」
感電した暴徒は痙攣し一撃で戦闘不能になり、彼女は伸ばした腕を縮めながらふふん、とドヤ顔をした。
「いつの時代もロケットパンチはロボットのロマンデス。ドヤァ」
「お前なあ。カラマーゾフ事件の犯人もそうだが、どいつもこいつもちったあ世界観を護る努力をしてくれよ」
まったく、俺の周りにはこんな常識外れの奴しかいないのか。
だが暴徒をワンパンで倒せる弾数無制限のテーザーガンは最高の武器になるはずだ。
「僕たちも負けてられないね! ロッシー!」
「オウフ!」
「うわ!?」
またロッシーは今回も地味に強く、真矢の指示で暴徒に襲い掛かる様は小型のライオンの様だ。
チャウチャウはもふもふしているが、元々は狩猟犬かつ犬ぞりを引く程度に力持ちなので犬の中でも戦闘能力は高い部類に入る。
「バウバウ!」
「ほわたー!」
「ぎゃああ!?」
というか普通に滅茶苦茶強い。
ロッシーの噛みつきで怯ませコレットの帯電マジックハンドで仕留める、という見事な連係プレーで彼等は入口周辺の敵をあっさり片付けてしまった。
「……え? 俺ひょっとしてこの中で一番弱いのか?」
「オウフ」
敵を全滅させたロッシーは勝ち誇った笑みを浮かべ特に何もしていない俺を見下した。
このままではいけないので少しくらいは活躍しなければ。
「とにかく先に進むぞ!」
「はい! 防犯カメラの映像によると地中海エリアに人が大勢集まっているみたいデス!」
だが最優先は黒幕の下に辿り着く事だ。
俺は仲間と共に戦場となったポート・ワカノーラへ突入する。
「でもあれは美馬坂さん? って皆イマス! ああ!? ジャベリンさんが捕まってしまいマシタ!」
「そうか。なら手遅れになる前に早く急がないとな」
またコレットは防犯カメラの映像を実況中継し、正確な状況はわからなかったが好ましくない何かが起こっている事はわかった。
おそらく尾張連合会を引き連れて現れた美馬坂も全てを終わらせようとしているのだろう。
自らに仇為す存在を全て闇の中へ葬り去るために。
本当の黒幕が尾張連合会なのか、海老名史郎なのか、それとも闇バイトアプリの開発者の星場雲雀なのかはまだわからない。
だがこの先に進めばきっと全ての真実がわかるはずだ。




