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捏造探偵3~ジャン・バルジャンの罰~無情なる世界、愛と復讐の旅路【完結】  作者: 高山路麒


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2-13 第二の殺人事件

 クスクスのサポートを失ったジャベリンは、記憶を頼りに防犯カメラを避けて園内を進む。


 やはり夜のテーマパークは昼間とまるで違う。


 暗闇には慣れていたはずなのに、彼女は心細さを感じてしまった。


 賑やかな夜の街は悪い人間も多いが目も眩む様な煌びやかな光が存在する。


 だがここには何もない。


 あるのは圧倒的な虚無だけだ。


(オバケとか……いないよね)


 ジャベリンは思わずそんな馬鹿馬鹿しい事を考えてしまった。


 この世には人間より恐ろしい物等存在しない事は知っていたはずなのに。


 彼女は防犯カメラを避けるために柵をよじ登って移動した。


 だがその際ガシャン、と音が響いてしまい彼女は慌ててしまう。


 幸いにして周囲には誰もいないので誰かに気付かれる事は無かった。


 けれど音を立てない様に気を付けて進まなければならないだろう。


「っ!」

「~~~~~」


 その事を意識しながら慎重に進むと鼻歌交じりに歩く人間を発見し、ジャベリンは急いで遊具に身を隠した。


 背中に細長い楽器ケースを背負ったモデルの様な大学生くらいの少女はご機嫌な様子で園内を歩いていた。


「可愛い女の子はどこかなあ~。怖がらないで出ておいでよ~」


 あれはもしかして昼間に何度か見かけた少女だろうか。


 女性から見ても目を引く容姿だったのでジャベリンの印象にも残っていた。


 だがスタッフには見えない。彼女はいったい何者で何故ここにいるのだろうか。


(何、あれ……)


 それに彼女が囁くように言った言葉も気になる。


 ジャベリンは少女の言動に得体の知れない肌寒さを感じてしまった。


 いずれにせよ見つかるわけにはいかない。


 ジャベリンは持ち前の第六感を働かせて急いでその場を離れ、少女に気付かれる事なく無事に窮地を脱した。



 一瞬謎の少女に見つかりそうになりヒヤリとする場面はあったが、ジャベリンはどうにか目的地のスカイハイ・キャッスルに辿り着いた。


 古城をモチーフにしたスカイハイ・キャッスルはウォーターライド系のアトラクションであり、園内で最も水を使うアトラクションだと推測出来る。


 だがバルブ室は通常関係者以外は立ち入る事のない場所であり、また防犯カメラに映らない様に移動する必要もあったのでジャベリンは手間取ってしまった。


「ここかな」


 ようやく彼女はバルブ室と思われる場所を発見したが、やはりそこには防犯カメラが設置されていた。


 内部を確認するにはどうしても防犯カメラの視界に入らなければいけない。


 もしも空振りで何の収穫も無ければ不法侵入という罪状だけが残るだろう。


 けれどその時ジャベリンの脳裏には流雨牛の顔が思い浮かんだ。


 ここで自分が行動しなければ真相は闇に葬られてしまうかもしれない。


「やるしかない、か」


 ジャベリンは迷いを捨て去りバルブ室に入る。


 幸いにして扉に鍵はかかっておらず普通に侵入出来、室内には誰もいなかった。


 ここを訪れた土師仁太は鍵を開けっぱなしにしたのかもしれない。


 しかしそれは言い換えればすぐに戻ってくる可能性があるという事だ。ならばあまり時間はかけられないだろう。


「うーん……」


 ジャベリンはひとまずスマホのライトで照らす。


 誰かから何かを直して欲しいと頼まれた、と言っていたが土師はここで何かの作業をしていたのだろうか。


 バルブ室には配管があるだけで怪しいものは特にない。


 だがスマホのライトを床に向けた際、彼女は頑丈そうなジェラルミンケースを発見した。


 もしかしてこれは土師が持ち込んだものなのだろうか。調べられそうなものはこれ以外に特にない。


(特に何もなさそうだけど……一応開けてみるか)


 そう考えたジャベリンはジェラルミンケースを開け中にあったものを確認し、蓋を開けると同時に何かが転がり落ちてしまった。


「ととっ!?」


 ジャベリンは反射的にそれを受け止めてしまい、すぐに後悔してしまう。


 これが何かはわからないが指紋を付け痕跡を残してしまった。


 けれどこれは一体何なのだろう。何故こんなにも強烈な鉄サビのニオイがするのだろう。


「?」


 だが彼女は自分の手に滑りとした何かが付いている事に気が付いてしまう。


「血……?」


 そしてしばらくして自らの手が血で真っ赤に染まっている事と、目の前に人であった何かが転がっている事に思い至ってしまった。


 これはなんだ。


 ああ、生首か。


 なるほど、運びやすいようにバラバラにしたのか。


「うわああああッッ!?」


 その事を理解したジャベリンは絶叫し腰を抜かしてしまう。


「ととと、とにかくっ! ええと、ええと、こういう時はっ! どうしたらいいのッ!?」


 部屋の隅で縮こまった彼女はパニックになるも無我夢中でスマホを操作した。


 誰も頼りに出来ない以上この場は自分で何とかするしかないのだから。


「ちょっと! こんな所で何してるの!?」

「きゃああ!?」


 悲鳴を上げたせいですぐに土師が戻ってきてしまいジャベリンは恐怖で意識が飛びそうになってしまう。


 その時土師は何かを持っていた。


 まさかあれは殺害に用いた凶器だろうか。


「って君は昼間の……!?」


 しかし何かを言いかけた土師は死体を認識し、即座にバルブ室を飛び出してしまった。


 彼が何を思ってその様な行動をしたのかはわからない。


 けれどこのままここにいては殺される。


 逃げるのなら今しかない。


 スマホを握りしめたジャベリンは急いでバルブ室を後にし、園外で待機している仲間の下に全速力で走っていった。

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