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 機材を一通りセッティングし終わったのでテスト配信をすることになった。


 別の部屋に移動して、里英の配信を聞く。


 告知をして一時間くらい開けたのだが、配信が始まってから入ってきたのは十人くらい。


 俺含め、エリモンの配信にいつも現れる固定客ばかりだ。


「やっほー! あ、今日実は声が違うんだけど気づきました?」


『確かに。音質がクリアだね』


『マイク変えたの?』


 固定客からコメントが返ってくる。


「そう! なんだったかなぁ……とにかく良いやつだよ。皆にも良い声を届けたいからね」


『エリモン、今日もいい声だ……』


「meruruさんありがとう! マイク変わった効果出てるかなぁ?」


『エリモン……今日も尊い……』


 meruruはたまに顔を出すが妙にセクハラチックなコメントを残していく固定リスナーだ。


「そういえば防音室組み立てたんだけどね――」


 里英は今日の出来事を十人に向かって嬉しそうに話し始めるのだった。


 ◆


 テスト配信なので時間は短め。一時間くらいの雑談で終わりムードになってきた。


『そういえばエリモンは顔出ししないの?』


 meruruがそうコメントで尋ねる。


「うーん……顔出しかぁ。カメラ買ってないんだよねぇ。ってか私の顔とか見て楽しいのかなぁ」


 そもそも里英は顔出し配信をしないので、購入機材のリストにカメラが入っていない事に違和感はなかった。


『エリモン絶対可愛いし!』


『需要ありすぎる』


 コメント欄でも盛り上がっているように、里英の素顔を見せたら確かに人気は出るだろう。


 里英の配信を見ながら今後の目標や指標について考えていた。何をするにもまずは人気は必要だ。人気の指標はSNSのフォロワーや配信の同接人数辺りが最初は妥当だろう。エゴサーチの結果で印象の良し悪しなんてデータが取れるのはまだ先だろうし。


「あはは……じゃ考えてみようかなぁ。今日はこの辺で。ありがと! またね!」


 配信が終わってすぐ、ダカダカと廊下を走る音がする。「慶センパイ!」と叫びながら里英が部屋に入ってきた。


「ちょ……カメラだろ?」


「カメラもだけど……全然コメントしてくれないじゃん! なんで!?」


「そっちかよ……別に配信でコメントしなくてもこうやって話せるだろ」


「それとこれは別だよぉ!」


「そ……そうなのか」


「うん! ま、それはそれとして……カメラと絵が要るんだ」


「顔出しの件な。絵ってvTuberでもすんのか?」


「うーん……そこまで本格的にはやらないけど、アイコン的なものが欲しいなって。エリモンといえば、みたいな画像もないしさぁ。あ、顔出しはしないけどね。まだ親にバレたくないからさ」


 意外と里英も色々と考えていたらしい。


「ま、顔出しでも人気出ると思うけどな」


「お? お? 慶センパイ、それってどういう意味? 可愛いってこと?」


 里英は俺の言葉をきっかけにグイグイと距離を詰めて聞いてくる。眼の前に顔が来たにもかかわらず、里英は俺の目を見て逸らそうとしない。


「ばっ……ただの社交辞令だよ」


「ふぅん……顔、赤いけど?」


「あっ……暑いよなぁ……」


 目の前に女子が来たら照れて顔が赤くなるのは当然の生理反応だ。


 椅子をくるりと回転させて里英に背中を向けたのだが、里英は手すりを持ち、更に半回転させてもう一度俺を目の前に連れてくる。


「慶センパイ。カメラと絵、オナシャス!」


「わ……分かったよ。俺もそのつもりだったからな。最終目標は皆を元気にすることだけど、見てくれる人がいなきゃ始まんないから当面は人気を上げることに注力したいしな。とりあえずウォッチする指標はSNSのフォロワーや同接だな。絵も大事だし、有名な人に頼むか」


「フフフ、実はもう頼みたい絵師の先生は決めてあるんだ」


「早いな……」


 里英はSNSのアカウントを見せてくる。


「タケミ……聞いたことないな」


 絵は上手いし可愛いキャラの絵をたくさん上げているので実力は確かみたいだがSNSのフォロワーは数百人程度。


 エリモンに比べれば遥かに多い数字だが、「この人に描いてもらった」とは宣伝にならない程度だろう。


「もっと他にいるんじゃないのか?」


「この人がいいの!」


 里英は一歩も譲らなさそうだ。最近分かってきたが、里英は外面はいいものの、中身は年相応に我儘なお嬢様なので、折れるはずもないだろう。とはいえ、言いなりでなんでも金を出すと思われるのも癪だ。対等な関係を維持しなければ。


「せめて候補を3つくらい出してくれよ。それでコンペにしよう」


「コンペ?」


「早い話が、比べてみていい人にお願いするってことだな。じゃないとこのタケミって人がどれくらいいいのか分かんないだろ」


「なるほど……たしかにそうだね! じゃ、早速連絡するよ!」


 里英は俺のベッドにダイブすると足をパタパタとさせながらスマホをいじり始めた。


 ものの5分くらいで里英が「わ!」と声を上げる。


「慶センパイ、もう返事来たよ」


「早いな……それで、どうだ?」


「先に予算を聞かせてくれだってさ」


「予算なぁ……」


 実際にvTuberをするとなると、細々した絵の調達で結構な額がかかりそうだ。一人くらい絵のかける人を抱えておいたほうが何かと楽かもしれない。


「ま、とりあえず一式作るのに必要な額を教えてくれって言ってくれ。後は調整すればいいからな。これは言わなくていいけど、相場と乖離がひどくなけりゃとりあえず払うよ」


「はぁい!」


 しかし今更vTuberなんてやって人気出るのだろうか。


 里英のスター性を信じてみるしかない。


 これまでは勝てる見込みのある投資しかしてこなかったものの、こればっかりは蓋を開けないとわからない不安が大きい。


 投資を始めた頃のちょっとした相場の上下で一喜一憂していた頃を思い出し、また初心に戻って手探りでやるのも悪くないと思うのだった。

↓にある★を押して頂けるとモチベーションアップになります!

何卒よろしくおねがいします。

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