表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

115/118

15.落下遊覧


 さて。最大の謎解きだ。

 そもそもからして。どうして聖剣・イアの一団は、島から離れるとパワーダウンすると分かっていながら、無理矢理にでも本土へ上陸しなければならなかったのか。

 援軍? 確かにそうだ。

 応援? 声援は力になる。

 だけど、それだけではない。そう思えるだけの、決意を、島民たちの中に見た。


「見抜いて……いたのですか……?」


 ゆっくりと。

  だが確実に。

   俺たちの身体は落下する。

    遥かの空より落ちていく。

     二つの影。  その行方。


「お前の目的は――――ある意味では、俺たちと同じだったからな」


 島民があの姿で本土に飛来した理由。

 もしもその理由が、戦闘を目的としたものではなかったとしたら。

 ビキニアーマ―という姿を見せることこそが、最大の目的だったとしたら。


「聖剣・イア。お前の目的は、本土にわたって信者を増やす……だけじゃない」

「……、」


 (いにしえ)より力を持っているヤツ。

 そいつらは、どうにかしてこの時代でも当時の力を発揮しようと、様々な手段を考える。

 それを利用しようとするものも然りだ。どうにかして、何かを成して、神代に在ったとされる莫大なパワーを引き出そうとする。


 例えば、ベルの力を利用しようとした者。

 例えば、ルーチェが街の侵略に乗り出したとき。

 例えば、邪神・クァルボスを復活させようとした者。

 例えば、例えば、例えば。

 様々な『例えば』を、俺はこの四か月、たくさん目の当たりにしてきた。


「島ごと移動してくることを読み切れたのも、その経験が活きたからだ。とんでもない作戦を考えるやつらを、知ってるからな」

「……」


 そしてもう一つ。

 強さではなく、ヤバさの方。


「ヤバ……さ?」

「当の本人に自覚なしか。だけど……、島民のみんなは、そのヤバさにこそ中てられたのかもな」


 あの島民たちは。みんな、決意を秘めた眼差しを浮かべていた。

 ――――ビキニアーマーのまま。


「そうさ。立派な格好だ」


 老若男女、おかまいなしに露出が高い。

 それでもみんな、恥じることなく、堂々とラチカたちと切り結んでいた。


「だからこそ、見る者にインパクトを残す。……かの、勇者のように」

「…………‼」


 そもそも、聖剣・イアは信者や己の強さを使って、いったい何を成そうとしていたのか。

 これまでのやつらに当てはめてみても、色々なことが想定できた。


 神代の頃の力を取り戻したいのか。

 信者を使って世界を支配したいのか。

 人の姿を得たのだから人として生きたいのか。

 もしくは。

 それらすらも道程で、その先に何か目的があるのか。


 聖剣・イアの、執着(こだわり)の先。

 そのヤバさが分かれば、自ずと着地点が見えてくる。


「イア、お前の目的は――――」


 そうして、俺は告げる。

 彼女と、島民たちが成そうとしていた目的を。



「この世を去った最強の勇者。彼女の復活だ」



 そうして。

 彼女の水面が見えてくる。

 瞳孔は僅かに開かれた。






 過去回想。


「――――んなこと、できるわけないでしょ?」


 ラチカの静かな声が、キャンプに響く。

 俺の推論を聞いたあとの三人も、ぽかんと口を開いていた。


「で……できないのかな? そういう、儀式とか、俺詳しくないからさ。思いつける最大の推理をしてみたんだけど……」


 俺の推論の内容は。

 段階一、イアはこの世に信者を増やし、自分の力を高めようとしている。

 段階二、イアはその信者と自分の力を使って、世界中に『勇者の力』をふりまこうとしている。


「コーにゃんの能力と同じように、思い入れの強いコスチュームに変わるってヤツか~」

「俺の仮装着(ドレスアッパー)みたいに、島民たちにも同じようなコスチュームを着させるってこ、可能なんじゃないかなと考えてるんだけど……」


 それも、彼女の思い入れの強い格好を。


「イアの思い入れの強いコス? あ~……、勇者ちんが年中着てたっていう、ビキニアーマー?」

「うん。アイツは、聖剣イアの信者(イコール)勇者の力を使える者=ビキニアーマーの者って図式を、世界に広げようとしているんじゃないかと思って」


 自身の強さが必要なのは、単純にその方がやりやすいからだろう。

 そうでなくとも。信者が増えれば増えるだけ、活動範囲も強さも、勝手に付いてくるしな。


「つまり、やろうとしていることは、俺たちと同じ。

 勇者のイメージを、ビキニアーマーで上書きしようとしている……ってこと」


 ……うん。自分で言ってても、めっちゃおかしいと思っている。

 だけどおそらく、このセンで間違いないと思う。

 俺が「どうかな?」と聞くと、シャールが「はい」と手を挙げた。


「そうだねコースケ様。人々のイメージを、勇者=ビキニアーマーで上書きしようとしている。それは分かった。しかしその後が問題だ。キミはさっき、その後。――――聖剣・イアは、何をするって言った?」


 彼女の言葉に続いて、ラチカも、ヒナもヴァートも同じ視線を送る。

 俺は彼女の言葉に頷いて答えた。


「これが、段階三だ。

 聖剣・イアの目的は――――勇者の復活だ」

「…………そこが、分からないんだけど」


 ラチカに続き、みんなも「う~ん?」と首をひねっていた。


「えっとな……。まず世界中の、『勇者』というイメージを、仮装着(ドレスアッパー)のような力を使って、ビキニアーマーに定着させるだろ?」

「ふむふむ」

「今を生きる人々は、全員が全員、勇者と聞けばビキニアーマーを想像する世界が来るとしよう」

「うんうん」

「そして、もしもそんな世界にすることが出来たら、そのイメージ力は相当なものだと思う。何せ、ベルの魔竜モードと同じか、それ以上のエネルギーになるだろうからさ」

「そだねぇ」

「そして、そんな人々の持つイメージエネルギーを使って――――勇者を蘇らせる」

「…………ぶっ飛んだねぇ」


 俺の説明が下手なのか、みな一様に懐疑的だ。しかしそんな中、シャールが「いや」と口を開いた。


「……なんとなくは分かるかな」

「シャール、嘘でしょ⁉ 本気で言ってる?」

「もちろんぶっ飛んでるとは思うよ。だけど、この世以外の者を復活させる、『儀式』として考えればあり得るかもしれないと思ってね」

「儀式……?」


 そう。例えば邪神の復活もそうだ。

 邪神は一度、この世を去っている。神々によって倒されているのだ。

 倒された邪神が消滅するのか、はたまた違う世界に行ってしまうのかは分からない。しかし現実問題として、復活や呼び寄せる儀式は、あった。それを目の当たりにしているのだ。俺も、シャールたちも。


「んなこと言ったって、勇者は邪神とは違うでしょ。邪神は実態を持たない、概念にも似た存在。だけど勇者は人間よ? 天界にでも招かれない限り、遺体も魂もなくなる……でしょ?」


 ラチカがヒナたちに話を振ると、二人は目を見合わせて頷いた。


「そだね~。アイツってば百八十歳まで元気に生きて、寿命で死んじゃったからねぇ」

「その後の体をど~したとかは知らんけど。でも、フツーに考えればとっくに朽ちてンよね」


 二人の意見を聞いたラチカは、「ほらね?」と俺に話題を返す。

 しかし俺は、それに対して異を唱えた。


「……ホントにそうか?」

「「「え……?」」」

「俺はそうは思わない。普通の勇者ならいざ知らず、そいつは歴代でも相当凄い勇者だったんだろ?」


 何たって、もうどうしようもないと思われていた魔王をタイマンで倒しているのだ。しかも、魔剣なんていう、正攻法でもないモノで。

 インパクトは絶大だ。

 そんなヤツの遺体を。国が、世界が――――人々が、おいそれと手放すとは思えない。


「……どっかにあるってこと? 遺体が?」

「俺はそう思う」


 これも、様々な事件を解決してきたからこそ、予想できることだ。

 世界を転覆させようとか、支配しようとかいうやつらは、とにかく常識からぶっ飛んでることが多い。

 そして、「その情報どっから仕入れたんだよ⁉」と思うようなことも、平気で知ってたりするのだ。


「情報の入手経路は考えるだけ無駄だ。だけど仮説。勇者に執着のある聖剣・イアが人格を持ち、勇者の遺体がこの世界にまだあると知って、それを利用して、復活させようと動く。……そんなにおかしい理屈か?」

「「「「……………………」」」」


 全員の顔が曇る。

 言ってて俺だって気持ち悪い。

 だけど、一番最悪の想定は、おそらくこれだと思う。


「ゴールが復活(コレ)だと仮定すれば、準備しなけりゃならないことは単純だ」


 呆気に取られていたみんなの意識を戻すように、俺は少し強めに声を出す。


「頼む! 手伝ってくれ!」


 その言葉で四人ははっと我に返り、すくっと立ち上がる。


「あ~もうっ! 本気で言ってんのソレ……!」

「まぁ、考え方が単純になるというだけで、簡単ではないのだけれど」

「よ~し、アタシも神代の知識フル動員だ~☆」

「んじゃアタシも~、ちょ~っと集めるもん集めてこようかな~……ダルぅ」


 幸いにも。ここには神代の知識を持つヤツらと、儀式に詳しい二人が居る。

 手を組み、致命的な部分さえ防ぐことが出来れば、後は――――






「――――後は、真っ向勝負で勝つだけだ」

「…………っ、」


 まぁ召喚を防いだ後は、むしろそこが一番の難所だったんだけど。

 何せ相手は、力を取り戻した聖剣・イアだ。

 魔剣は二人がかりで向えるとはいえ、出力だけ見たらイアの方が上だろう。


 だけど。その真っ向勝負で、魔剣・ヴァルヒナクトは勝ってくれたし。

 その後のイレギュラーにも、こうして対応することができた。


 みんなで手繰り寄せた、阻止(しょうり)だった。


「――――、」

「イア……」


 俺は彼女の手を取り続けたまま、語り掛ける。

 速度は少しずつ早まっている。

 地面も島も、青黒い水面も、既に見えているのだ。

 到達時間はあまりない。


「な……なぜ」


 そんな最中。翳りのある表情で、彼女はおそるおそる口を開く。


「なぜ私が、……勇者に執着を持っていると分かったのです?」

「え……」


 あぁなんだ。そんなことか。


「そりゃ、分かるさ」


 魔法は既に、ほとんど解けている。

 落下する。墜落する。

 速度の壁を突き抜けて、俺たちは間もなく、あまりにも暗すぎる海面へとたどり着くだろう。

 そんな中。

 俺は語り掛けるように、自分でも驚くほど穏やかな声で、彼女に言った。


「誰だって――――」


 先に落水するのはイアの体で、少しは衝撃も緩和されるだろうが、まぁ、微差だろう。

 だから、この身体が喋れなくなる前に。

 伝えなきゃ。理解してやれたぞってことを。



「誰だって、『イラネー』って言われて捨てられたら、見返してやりたくなるよな」

「――――、」



 自分を捨てたヤツに対して。

 こんなにも強くなったぞって。ざまぁって。言ってやりたくなるよなぁ。


「言えると思うぜ、イア」

「……ッ!」

「だってお前、めちゃくちゃ強かったもん。勇者が選んだ魔剣とも、タメ張れるいくらいにさ」


 そうして。(かべ)は迫る。

 力を使い果たしたイアの背中が着水するまで、もう数ミリ。

 全てが終わるときが、やってきた。







【読者の皆様へ】

 現在毎日更新中!(毎朝8時ごろ更新)

 次回の更新は、1月 8 日になります! お楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ