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12.羽をむしる


 過去回想。

 これは昨晩、もう一つの情報を、ヒナたちに聞いたときの話。


『ん~? 勇者ちゃんのコトを教えろって?』

『なんでまた。……〇〇ネタにでもする的な?』

『しねえよ! 俺の事なんだと思ってんだ⁉』

『え? 性欲大魔神?』

『執拗におっぱいとお尻揉んでくる、女子に対して気持ちいい事しか出来ないニンゲン?』

『罵倒されてんのか褒められてんのか⁉』


 ともかく。

 明日のためです。


『勇者の……そうだな。だいたいの性格とか、外見か、特徴が知りたいかな』

『性格ね~……』

『そうだねぇ。熾烈、かな』

『だね。あと、めっちゃ口悪いよね~』

『しかもアレ、育ちが悪いとかじゃなくて~、分かってて(きったね)ぇ言葉使ってるっつーかぁ』

『全部に対してガミだよね~。ダチとかピとか居なかったっぽいし』


 すげえな。じゃあ最初から最後まで、一人で世界救ったのかよ。

 勇者史上どころか、人類全体で見ても最高峰だったんじゃないのか?


『とりま、性格はそんなんかな?』

『次外見じゃんね? んー……身体は()っさかったかな~』

『そうなのか? 意外だな』

『ゴリマッチョの女想像したっしょ~。ちげーんだな~。勇者ちゃんさ~、生まれてすぐに、呪いの魔女とバトったらしくてさ~。そんときに一生姿が変わらない呪いかけられたらしいんよね~?』

『ってことは……、寿命で尽きる百八十歳のときも……』

『そ。ロリババアのままってコトじゃんね』

『ヤババだったよね~。アタシら持ってるときも、ぜんっぜん柄に指が回ってねーの☆』

『手ェちっちゃくてかわヨ~ってなってたんよね♪』


 外見は、可愛らしい女児、と。でも、性格は熾烈で、とにかく口汚い、か……。まぁ、ありがたい聖剣を使えないって理由で手放すヤツだ。性格は納得できる気がするな。


『んで、ビキニアーマー』

『だね、ビキニアーマー』

『は⁉ なになになに⁉』

『いやめっちゃ食いつくじゃん』

『そりゃ食いつくだろ……』


 性格が熾烈で、口汚い、可愛らしい女児が、ビキニアーマー着てたの⁉


『インパクト強すぎるだろ……』


 げんなりする俺を見ながら笑う二人。

 しかし……、ビキニアーマー。ビキニアーマーか……。


『なるほど……。これは良いキーワードだな……』

『お? コーにゃんなんか思いついた?』

『めっかわな顔してンじゃん~?』

『おぉ……。(かわいい要素はどこにあるんだ?)うん。ちょっとだけ考え中……』


 ってことは、こうきて、ああきて……。そういうこと……だろ……。いや、……こっち方面か?


『でも……、うん。……なんにせよ……そうだな……。たぶん、大丈夫』

『おぉ整った』

『作戦は何とか立てれるよ。だけど、どうしても博打になっちまう部分が出てくるなぁ』

『まぁそこは♪』

『ノリで☆』

『俺が言うのもなんだけど、うちのチームってよくこれで乗り切って来れたよなぁ!』



 …………。

 とまあ、そんな、やり取りの甲斐あってか。

 俺は、

 聖剣・イアの恩恵を受けた島民が、全員ビキニアーマーを纏って上陸してくるであろうことを。

 ――――読み切った。


「そしておそらくイアと同様に、島民自体もパワーダウンしているはずだ! 二人とも、頼む!」

「オッケっ! 行くわよシャール!」

「了解だ!」


 俺の号令で、二人は前線へと躍り出る。


「コースケ様の読み通り、本土では(・・・・)、長くは浮いていられないっぽいわねッ!」

「そのようだ! 四十人前後相手にすれば、おつりが来るよ。……はぁッ!」


 二人は武器を振るう。

 ラチカは青白い剣。シャールは、漆黒の鎌を。

 貸し与えられた二本の疑似魔剣。それらを彼女らは、使いこなしているのだ。


「たしかに……、相性いいね! ボクに鎌適性があるなんて、思わなかったなぁ!」

「私も、剣なんて久しぶりよ……せいっ!」


 大勢の、ビキニアーマーを纏った島民たち。

 しかし見た目のインパクトほど、彼らに攻撃力は無い。

 イアが十全な力を出せていないように、彼らもまた、イアからの恩恵を受けられていないのだ。


 仮装着(ドレスアッパー)と原理は同じだ。

 自分が支配下に置き、かつ、力を分け与えたいと思った者に、支配の魔力を送り込む。

 そもそも現在のイアは、十分な力がないわけで。そんな状態で島民たちに仮装着(ドレスアッパー)を使っても、焼け石に水程度にしか強くならないだろう。


 俺だけを相手にするなら、それでも十分倒せるが……。残念ながら、相手取るのは歴戦の工作員の二人だ。いくら直接戦闘に慣れていないとはいえ、訓練を受けた者と受けていない者とでは、圧倒的に差が出る。


「十二! 十三ッ! これで……十四、十五、十六ッ!」

「こっちも……十八ッ! あと半分くらい? まだまだ余裕ねっ!」


 次々と倒されていく島民たちを見て、回りで囲んでいる者たちにも焦りが出始める。

 使用武器は聖剣・イアなのだが、当たり前のことだが、攻撃フォームがめちゃくちゃだ。アレでは当たるものも当たらない。……戦闘素人の俺が言えることではないけど。


「さてさてあっちは……?」


 戦うラチカたちとは逆の方。イアの方に目を向ける。

 すると彼女はヒナたちと撃ち合いながらも、明らかに狼狽した表情を浮かべていた。緑の瞳が困惑に揺れている。


「ふふん♪ ど~よコーにゃんの推測は!」

「トンデモに浸かり過ぎちゃったかンね~……。アンタくらいのトンデモ作戦くらいなら、読む(・・)ってサ♪」

「~~~……ッッ!」


 二人ともあんま煽んないで! 殺意がこっちに向くから!

 まぁでも、二人の言う通りだ。


「そう。予想は出来たさ。何たって元々、『力を持ってた者』なんだ」


 多少の計算のズレは、力圧しでどうにかしてくると、踏んだ。

 計画を練りに練ったヤツが、計算通りにコトが運ばなかったときの行動パターンはいくつかあるが、本人がとんでもない力を持ってるヤツは、だいたい強硬策に走る。

 なんたって、これまでずっと、最後は自分の力でどうにか出来てきたのだから。

 島民たちがやられたとしても、ジョーカーである自分が残っているからどうにか出来る。その気持ちが、絶対奥底に潜んでいる。


「だから、一つ一つを使えなくしていくんだ」


 島を止め、奇襲を止め、島民を止め、切り札である本人すらも止める。

 順序は何だっていい。

 俺がこれまで、少しずつ成功体験を積ませてもらって、自信をつけてきたように。

 その逆回し。少しずつ失敗を味合わせて、不安の種を植え付けていく。

 この手はダメなのか。

 この作戦は失敗か。

 この手段は通じないか。と。

 そうして。

 時間と共に、不安の種は萌芽する。


「人格を手にして間もないなら、尚更、不安への向き合い方は分からないだろ?」


 だから、経験の少ない今だからこそ、こんな俺でも出し抜ける。

 弱くても、頭が良くなくても、考え尽くすことなら出来るから。


「さすがコースケ様、だねっ!」

「やるじゃないのッ! フッ!」


 ビキニアーマーの島民は、どんどんと地に伏せていっている。

 ラチカとシャールの大立ち回りは、思った以上の成果を見せていた。


「予想以上のコンビネーションだ! すごいぞ二人とも!」

「そうでしょ? ――――これで、ラストッ!」

「はぁぁぁッッ!」


 二人の斬撃が、島民の最後の一人を吹き飛ばす。

 地面へと叩きつけられた者を見下ろして、ラチカとシャールは魔剣をヒナたちへ戻した。


「チカラ、戻すわ二人とも!」

「あとは任せたよ! 魔剣のお二人!」


 羽はもいだ。

 一枚ずつ使えなくしていった。

 あとは本体のみである。


「さぁ……お膳立ては整ったぞ」


 あの島で囲まれて、面食らったところから、五分にまで持ってきた。


「あとは、勝つだけだ」


 最後の最後。

 変化球無しの真っ向勝負なら、あいつらが勝ってくれると――――


「信じてるからな!」


 聖剣は跳ねる。魔剣は踊る。

 決着の瞬間が、今、訪れようとしていた。




【読者の皆様へ】

 現在毎日更新中!(毎朝8時ごろ更新)

 次回の更新は、1月 5 日になります! お楽しみに!

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