11.現れたもの
魔剣二人と聖剣が睨み合う中。
俺は少し離れたところで、思案を巡らせる。
イアが本土の地を踏んだ。ということは、ツェーシマ島の影響力はこちらに届いているのか否か。
実はこれについては、作戦を何パターンか伝えて、出たとこ勝負で対応してもらうしか無かった。
島ごと飛んでくることは予想できていたが、その島を止める術式を放った際、どの地点で止めることが出来るのかが分からなかったからだ。
なので、パターン一。そもそも島から出てこなかった場合。
その場合はこちらから、更に遠隔で魔法攻撃を仕掛ける。それでも迎撃されるようだったら、こちらから島に攻め入るという作戦。
パターン二が、島に上陸してくるパターンだ。
これには、そもそも島が止まらなかたときの作戦も入っている。
相手が上陸してきたとして。
では、島での『最強性』は、どれくらい残っているのか。これも読めない。
ただ……、ツェーシマ島は現在、本土から三十メートルほど離れた場所に着水している。
三十メートル。一昨日の戦闘時、追撃をしてこなかった距離から考えると……、おそらく最強性は、完全には発揮出来ていないと思われる。
「はぁッ!」
「ふっ!」
「…………んぁッ!」
その証拠に。
つい先ほど始まった剣戟にも、一昨日程のキレはない。
それでも動じず、しかも一人で二人を相手にしているのは流石だが、やはり前回ほどの凄みを感じないのも事実だった。
「と……いうことは……、…………着水した島…………、中には島民……聖剣…………支配…………最強の力、…………島民、は……、」
考えて考えて、絞り出す。
昨日の晩ほど長考する時間はない。
もしかしたらすぐにでも盤面は動くかもしれないのだ。
できるだけ早く。だけど明確に、次の一手を予想しろ。
こういうとき。こういうとき。こういうとき……。
急に人格を得た『伝説』が、次にとる行動は――――
「…………こっちのパターンだな。ラチカ、シャール!」
「なに⁉」
「やっぱ最悪のパターンだと思う! 作戦パターンDだっ!」
「……………………うそでしょ」
「……………………信じたくないなあ」
そりゃ、俺だって当たって欲しくはないけどさ。
でもたぶん、そういう強硬策に出ると思う。
そして、次の行動が当たっていたとしたら、それはつまり――――
「よし」
次はこの一手で来るだろう。
そして確認のため、再びヒナたちの方向を見る。
激闘に次ぐ激闘の中、イアは一瞬だけ、視線を島の方へと送った。
やっぱり……読み通りだ。
「いける! 勝てるぞこれ――――」
だけどピンチはチャンス。チャンスはピンチだ。
こういう時にこそ、こういった手合いは仕掛けてくるはずで。
「もらったぞ大将首――――なにっ⁉」
「そう――――ここだよなっ!」
相手が勝利を確信したとき。それが一番無防備になる。だから、大将首を狙うのなら、俺だってそうするよ。
姿隠しの魔法による、背後からの奇襲。
これなら、護衛が居ようが居まいが関係ない。
背後から、ただ、刺す。そのワンアクションで、この戦いが終わるのだから。
「フフ……。だからこその合図さ!」
姿隠しにより潜んでいた、刺客からの一撃を、シャールの小刀が弾いた。
「あの戦いに入っていくことは難しいけれどね。でも、キミくらいならどうにでも出来るさ」
「それにしてもアンタの合図、自分を過信してんのか何なのか……」
「まぁ、癖みたいなものだからなぁ……」
俺が「勝てるぞ」と言ったら、周囲を警戒してくれと二人には伝えておいたのだ。
今のは意図的な合図として言ったけれど、俺はたまに、フツーに戦闘に見入って、フラグのように「よし勝てるぞ!」と言ってしまうので、そういう浮ついたときにこそ警戒してくれという指示である。
解説してて自分が情けなくなるぜ。
まぁそれはともかく。
「くっ! くそうっ……!」
こうして、捉えた男を三人で見やる。
それにどうやら、二つ目の予想も当たったようだ。
男の格好を見て、シャールもラチカもドン引きしていた。
「…………コースケ様。コイツ……」
「……うわ、こっちもホントに当てたし……っ⁉ コースケ様こわっ! キモッ!」
「キモッはやめて傷つくから!」
そして剣戟の中。あちらもしびれを切らしたのか、イアが手を上げて何かの合図を送った。
それと同時。
島から大量の島民たちが、わらわらと飛来してくる。
人。人人人人。
人人人人人人人人人人人人人人人人。人人人人人人人人人人人人。
人人。人人人人。人。
本土の海岸沿いの空に浮く、戦闘を行える島民七十五人が、勢揃いしていた。
手には全員、自分の扱いやすい縮尺の聖剣・イアのレプリカを持っていて。そして――――
老若男女、だれかれ問わず。ここに捉えている男でさえも。
全員が全員、漆黒のビキニアーマーを纏っていた。
鉄製の鎧が、胸と股間、関節部分のみをまとい、それ以外は肌を露出させている。そんな装備。
黒と、肌色と、白刃の軍勢が。
ソラを覆い尽くす。
「あーあ、くそ…………っ」
ある意味、当たってほしく無かったぜ。
こんなトンデモ展開でもなぁ。こちとら――――
「読み通りだよ、ちくしょうッ!」
俺たちは、作戦パターンDを実行に移した。
汗をかいているのは、きっと、太陽のせいだけではないと思った。




