10.大バトる!
本日は2本更新です
1月2日分②
翌日、早朝。
俺たちは海際に立ち、白み始めた空を見ていた。
「やってくるとしたら、そろそろだ」
見張る方向は、勿論ツェーシマ島。
自分の支配力を高めていくタイプであるならば、おそらくは……。
「……来たっ!」
雲一つない快晴。その彼方から、大いなる物体がやってくる。
「……ホントに、ソレで来たし」
「やれやれ……。当たってほしくなかったねぇ」
ラチカとシャールがため息をつく。
そりゃ、俺だって当たってほしくはなかったけどな……。
「それじゃあ二人とも、作戦通り頼むぜ」
「「了解」」
澄んだ空気を裂き、こちらへゆっくりと動いてくる物体。
それは――――
「まさか本当に……、島ごと浮かせてくるとはね……!」
空を飛んでくるのは。
ツェーシマ島そのものだった。
海面から五メートルほど離れた浮いていて、まるでこの海岸にロープでもついているかのように、真っすぐにこちらへ向かってきている。
「昨日は耳を疑って、今は目を疑ってるわよ」
「あの質量の島を浮かせられるとは……、どんな魔力なんだ……」
昨晩、ヒナとヴァートは言った。
『まぁ……、仮に神様レベルになってたとしたら?』
『できんこともない……ってカンジかな?』
仮に。出来ないこともない。
なら、最悪のケースなら、出来てしまうってことだ。
もしも聖剣・イアが、あの島においてのみ、神々レベルの力を持っていたとするならば。確実に島ごと移動してくると思っていた。
「でもなんで……、そんなこと……」
「過去に、洞窟ごと飛んできた馬鹿がいたからさ……」
ルーチェっていう、ロリ魔法なんだけど。
悲しいかな味方陣営なんだよね、その馬鹿。
「自分にとっての最強。ようやく取り戻した力。得た人格。それらを、おいそれと手放すなんて、しないよなお前らは」
読み通り。
この四か月で、これくらいのトンデモ戦術なら読めるようになってきた。
「いきなり襲撃されるのには、いつまで経っても慣れないけどな! でも、推理期間と準備期間があるなら――――対策は取れる! ……二人とも、今だっ!」
「えぇ!」「あぁ!」
こちらのゴーサインに、ラチカとシャールの返事が聞こえる。
二人が立っている場所には、大規模な魔法陣と、大量の加工植物が敷き詰められている。
それを、一斉に起動させた。
「「仮想展開――――クァルボスの掌ッ!」」
二人の呪文が、海辺にこだまする。
その瞬間。術式からは大量の魔力が溢れ、海の水を巻き上げた後、大きな竜巻を何本も発生させた。
良く晴れた空へと立ち上る魔水流。
そしてその竜巻は、浮遊するツェーシマ島を取り囲み……、一気に魔力の網を張る。
「よしっ! いいぞ!」
「すごい……。こんな大魔法を、ボクたちが……」
「ヒナたちのおかげだね! どこにでもある薬草に、まさかこんな力が眠っているなんて……」
魔剣二人組は、神代の知識を有している。
どこにでも生えているような薬草でも、彼女らの知識で加工すればあら不思議。現代人は知らない、神代の効果・効能が使えるようになるのである。
「その調子で、島をせき止めろ、シャール、ラチカッ!」
「「はぁぁぁぁぁぁぁぁッッ‼」」
動きが鈍る島を見ると、どうやら信者の何人かが、勇者の力を使い対応している。その奮闘によって、どうにか島は進んできているが……やがて、完全に動きを止めて海面へと着地した。
ドパンッ! という大きな音と共に、水しぶきと津波を起こすツェーシマ島。
どうにか本土へ接近する前に、食い止めることが出来た。
「読み勝ちだね~コーにゃん♪」
「そゆとこ、マジゆうの~になったよね~」
両手に花だが、まだ気は抜けない。
むしろここからが本番だ。
「だ~いじょうぶだって、コーにゃん♪」
「そそ。アタシら誰だと思ってんの☆」
青白い剣と、漆黒の鎌が取り出される。
「「こっからは~、アタシら魔剣に任しときなって♡」」
さぁ、荒仕事だ。気を引き締めなければならない。
海沿いで塞き止められた島から、一つのニンゲン大のシルエットが飛来する。
赤と白を基調としたカラーリングの彼女は。
穏やかだが、明確な敵意をむき出しにして、言葉を紡いだ。
「……やってくれましたね」
「待ってたよん♪ 聖剣ちゃん」
「世界征服する前にさぁ。……ちょっとアタシらと遊んでけよ☆」
太陽は丁度上った。
爽やかな青空と太陽に包まれ、まるで運動会の朝のような空気の中。
激闘がはじまる。
待ったはかからなかった。
聖剣・イアの斬撃は、一撃一撃が重く、そして綺麗だ。
基本にとても忠実な動き。
素人の俺が遠目で見ていても、そうなんだろうなと思える。
振り上げて、袈裟斬り。
腰を入れて、横薙ぎ。
踏み込んで、突き刺し。
ただし。その動作が恐ろしく早いため、一瞬にして攻撃が行われているように見えるのだ。
「というかコースケ様。あの動きが見えるの?」
「天界からの補助があるからな。隊長職についた時点で、ある程度の身体能力を上げてもらってるんだ」
と言っても微々たるものだけど。ヘリオスちゃん曰く、『指揮官が、現場で何が起こっているのかを把握できないのは良くないですからね! 特に動体視力を強化しておきました!』とのことで。
でもこれ、頭までは良くならないわけですね。そこの補助をどうにかして欲しかったな、うん。見えないよりマシだけど。
「島で見たときは、恐怖でただただ圧倒されちまったけど。傍目から見てれば分かりやすい。ヒナもヴァートも、たぶんとっくに気づいてる」
「すごいねえ。ボクらには、新手の魔法攻撃としか思えない速度だよ」
たしかに。天界からの補助魔法があっても、イアの振るう刀身は時々消えて見えるときがある。しかし魔剣二人からの言葉を信じるなら、アレは特殊能力などではなく、純粋な斬撃によるものだ。
「だけどあの二人なら、対応できるぜ?」
基本に忠実な動きをするイアに対し、二人の攻撃は実に自由だ。
特に、ヒナは剣だからまだ読みやすいが、ヴァートがトリッキーすぎる。
「よっと~☆ ほい♪」
「くっ……! むっ……⁉」
「やぁぁぁッ! ……とと、よく躱したね~☆」
「…………、」
最初は俺も鎌を見たとき、こっちの方が攻撃フォームが限定されるかもなぁと思っていた。……が、ヴァートに限っては全然そんなことは無かった。
何せ、大きな刃の部分だけではなく、柄も打撃部分として振り回すのだ。しかも不思議なことに、そこも斬撃判定。
「どうやらあの鎌自体が『魔剣』認定らしくてな。触れたところならどこでも斬れるんだと」
「反則じゃないの……⁉」
「ふむふむ……。そうなのか……」
しかも使用者が触れている部分は斬撃判定ではないという。
概念としての武器だからこそ出来る、まさしく反則な武器なのである。
「いいぞ。あのトリッキーさに翻弄されてる!」
曲がりくねった軌道を描く、ヴァートの鎌。
それを捌き切ったと思えば、刃の間を抜けてくる、ヒナの剣。
同じ概念だからこそなのか。戦闘のときとなると、更なるコンビネーションを発揮していた。
そしてしばらく思案する。考えに考えて、再び戦況を見て、「よし」と頷いた。
「いける! 勝てるぞこれ――――」
だけど。ピンチはチャンスという言葉通り。チャンスもピンチになり得るのだ。
「――――もらったぞ大将首ッ!」
戦っている三人を見ている、俺の背後。
そこに。
どこからともなく現れた、島民の刃が襲い掛かる。
「はぁぁぁぁッッ‼」
「……ッ‼」
眼前に現れた刃に、俺は――――
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