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8.イケメン余話

本日は2本更新です

1月1日分②


 図らずしも、女子トークに聞き耳を立てる結果となりました。おはようございます、コースケです。

 よく眠ることはできなかったが。まぁ結果的に、ラチカとヒナ、シャールとヴァートがコミュニケーションを取っていたみたいだし、良しとするかな。

 アリスに軽く言われたことだが、団員が増えてきて危惧しなければならないのは、団員同士のいざこざであるらしい。

 内部争いは避けたいし、本来なら一枚岩が好ましい。

 だが、そううまくは回らないからこそ……トップ(および首脳陣)がしっかりしなければならないとのことで。


「……そこらへん、上手くやれるか心配だなぁ」


 幸いにも、ここにいるメンツとはコミュニケーションを取れている。

 おそらく嫌われてもいないはずだ。


「だけど他の協力者とはどうなんだろうなと、思わないでもないんだよ……。特に、俺が直接誘ってないやつらとかさ……」

「それをボクに言うあたり、凄く追い詰められているねコースケ様」


 地上に降りて二日目の朝。

 今日は三人で周辺を見回ってくるため、簡易拠点でシャールとお留守番である。

 緑のショートカットの髪が風にさらりと揺れる。イケメン美女な顔立ちが、自然の中に映えていた。


「フフ……。今ボクを、イケメンだなぁと思っただろう?」

「おぉ、そうだけど……」

「そうだろうそうだろう! 何たって、そういう角度に見えるよう、その都度、体勢を変えているからね!」

「わぁ台無し」


 こんなにも残念な美女っているのか。

 生前に何か変なものでも食って、その呪いがずっと続いているのかもしれない。


「失礼なことを考えられるのも慣れたものさ。世界が嫉妬してやまないよね、ボクの格好良さには」

「あ、はい……。なんでもいいです」


 さっき言った、『ここにいるメンツとはコミュニケーションを取れている』と言ったが。アレはどうやら嘘だったみたいですね。

 これはもうコミュニケーションではなく、一方的な言葉の投げつけだった。


「まぁコースケ様が不安に思うのも分かるよ。女子に好かれない外見では、その不安も尚更というもの」

「『様』をつければ何言っても許されるわけじゃないからな⁉ 普通に傷つくからな俺も⁉」

「確かにその通りさ。何を言っても許されるわけではない。……だが、ボクくらいのイケメン美女だったら、どうかな?」

「いや関係ねーよ。普通にダメだよ」


 だいぶおかしなヤツだった。

 正直俺は、ラチカとシャールとぜんぜん話していない。だけどラチカは、まぁ、なんとなくの性格は分かった(常識人・口が悪い・時折熾烈・など)。

 だけどシャールに関しては、ナルシストだということしか分かっていない。


「お前、よくそんな性格で工作員なんてやれたよな……。秘密裏な作戦とか、遂行できたのか?」

「不思議なことを言うね。ボクとラチカは、『瞳』の中ではかなりよくできた兵隊だったんだよ?」

「マジかよ」

「うん。よくできた、使い捨てのコマだったとも」

「……マジすか」


 うーわ、反応に困るヤツきた。

 俺がそう思っていると、シャールは「フフフ」と明るく笑う。


「そう。使い捨てのコマだったんだよ、ボクらはね。だからボクは、いつか相棒と共に教団を抜ける計画を立てていた」

「……え、そうなのか?」

「そうとも。ボクはボクのことが大好きだが、同時に、ラチカのことも大好きなんだ。彼女を大切にしたかった。たった半年の付き合いだったけれど、彼女はどこかこう……、放っとけないところがあってね。可愛いし」


 冗談めかして言うシャールだったが、その瞳は明らかに真剣だった。

 雲の動きで僅かに影が差した顔は、変わらず美しい。

 綺麗な造詣の唇が、「さて」と動く。


「あらためて、現状を確認させてもらってもいいかなコースケ様?」

「ん? お。おぉ……」


 どうやら、教団とラチカへの話題は、今ので終わりということらしい。

 彼女の意を組んで、俺も「うん」と改めて頷いた。


「そうだな。現状把握といこう」


 こういうのは何度やっても良い。

 俺自身の整理にもなるしな。


「陸地に上がってからも言ったけど、まず俺たちは今、聖剣・イアらと交戦中だ。しかし現在、イアたちはこちらに姿を見せていない」

「そうだね。もしかしたら島にとどまっている可能性が高いと」

「半々だけどな。あの絶対的な強さは、島の範囲内なのかもしれないし、そもそも追ってくる理由が無いのかもしれない」

「うん。彼女らが、『ツェーシマ島を守る』ことを目的としていた場合は、後者の可能性は十分にあり得るね」


 まぁその可能性はけっこう低いけどな。

 何たって、あれだけ敵意むき出しだったのだ。

 仮に後者の理由だったとしても、追ってきそうなものである。


「その二つが違うとなると……、第三の可能性。彼女らは、力を貯めている」

「それが一番あり得そうだよなあ……」


 俺たちとの戦いのダメージを回復させて、一気にこちらへ進軍してくるパターン。

 今のところこれが一番有力紙されている予想だ。


「こちら側の戦力では、なかなか捌ききれないね。もう一度確認だけれど、天界に居る他のメンバーに増援は頼めないのかい?」

「あぁ。これ以上は難しい。もう一方の地域で、ヤバいことが起こったっぽいからな」


 指揮官代理としてヘリオスちゃんが当たってくれていて、現地にはアリスとルーチェが向ってくれているらしい。


「ベルは今、強さが安定しない時期みたいだからなあ……」

「え……」

「この間シャールたちを助けたときは、街中に瘴気充満したことで強さが安定したらしいんだけどさ。今回は聖剣っていう、もしかしたら聖なる気を纏ってるヤツが相手かもしれないだろ? 安定しないどころか、超弱体化しちまう可能性もあるかもなぁと思ってさ」


 俺がそう話すと、シャールは先ほどまでの涼し気な表情から一転、ぎょっとした表情をして口を開く。


「そ……、それを、ボクに話していいのかい?」

「は? そりゃ……、いいだろ? 仲間なんだし」

「…………、」

「……?」


 おかしなリアクションするなぁ。

 まるで、知ってはいけない情報を聞いてしまったみたいじゃないか。


「そもそも、現状確認ってそういうコトまでやるのが普通だろ? 前の団体でもそうじゃなかったのか?」

「そうだったけど……。今の……、今の状況は……」

「状況は?」

「……………………はぁ」


 シャールは何故か、深いため息をついたあと。

 どこか嬉しそうに笑って、言葉を発した。


「状況確認は、一旦やめようか」

「ん? そうか?」

「うん。……それよりも、コースケ様に言いたいことが出来てね」

「おう?」


 シャールはかっこうよく、しかしどこか柔らかい笑みを浮かべて、俺の目を見る。


「さっきの話の続き。教団を抜けようとしていたというのは……、厳密に言えば違うんだ」

「へ?」

「もっともっと本音の部分を言えばね。極論、教団に居続けても良かった。ボクは、ラチカが幸せであればそれでいいと考えていた」

「そんなにアイツのこと思ってたのか……」


 どこか遠い目をするシャールに、俺はそう返す。

 ラチカを大切に思うきっかけを思い出しているのかもしれない。


「色々あって、色々あるんだよボクにも。……でもまぁ、コースケ様は彼女のことを不幸にしないだろう? だったら、『ベル軍』に入った選択に間違いはないさ」

「自信はないけどなぁ」

「大丈夫さ。ヒナやヴァートと話していれば分かる。きみは人を不幸にしようとしていない。むしろ、どうやったらみんなが笑っていられるかを、常に考えている人だ」

「過大評価だよ。俺は俺のことで精いっぱいだ」


 なんたって最近、疲れたしか言ってないし。

 みんなに支えられてなんとか立ってるってカンジ。


「フフ……。聞けば聞くほど羨ましい関係性だよ」

「……? おいおい。何を他人事みたいなコト言ってんだシャール。俺が言う『みんな』ってのは、ベルたちだけじゃなく、協力者も含めてなんだからな」

「え……」

「強さによる階級分けは、どうしても仕方ないんだけどさ。でも、全員対等な仲間だって思ってるからさ」


 それこそ、みんなも思ってるだろう。

 どうしても地上組は、本隊の下部組織みたいな扱いにはなっちまうけどな。普通の人間カテゴリだから、天界には招けないし。

 でも、みんな地上で頑張ってくれているんだ。そこに仲間意識が芽生えないのは嘘だろう。

 俺がそう言うと、シャールはぽそりと呟いた。


「……まいったね」

「ん? 何がだ?」

「……いやね。聖剣・イアの強さが、圧倒的だっただろう? だから、寝返るのもアリかなーとも思っていたんだよ。ラチカを連れてね?」

「おい⁉」

「それが、言いたかったことさ。……だけどね」


 シャールは言う。

 そんなことを言われたら、

 そんな気持ちで接してもらえたら。

 寝返ることなんて、出来ないと。

 苦笑しながら、悲しそうな瞳で――――だけどやはり、嬉しさも混じる声で、彼女は言った。


「シャール……」


 勿論、シャールたちが簡単に寝返ることなんて出来ない。

 協力者には女神からの契約(パス)が通っているので、想定外の行動を取ればバレるようになっている。……のだが、たぶん彼女の決意は、それよりも高いところにあるんだろう。


 自死や自壊することになったとしても、ラチカだけはという決意を、きっと秘めている。だからこそ、俺に胸の内を吐露した。


「そう……。おっぱいを開いたというわけだね」

「胸襟を開いたってことを言いたいんだな?」

「フフ……。コースケ様の律儀なツッコミは嫌いじゃないけど、もうちょっとノリツッコミくらいの方が好みかな」

「ツッコミにダメ出しされただと……」

「そりゃあ出すとも。なんたって、対等な仲間らしいからね。今後とも長い付き合いになるのだろうし?」

「……はは。そうだな」


 存分に言うといい。

 どうせそのうち、相手によって会話のリズムを変えるなんて器用さはないって、分かるだろうからな。


「じゃあ俺からも一つ。シリアスな場面から、いきなりギャグにもっていこうとするな。どんなテンションでいれば良いのか分かんなくなるから」

「フフ……。それはごめんだね! 何せボクは、常に真面目なのだから!」

「いやそれズルいだろ」

「そうさ。……今言った通り、ボクは、ズルい女さ」

「……そうみたいだな」


 そうやっていきなり、しおらしくもなるしな。

 どこか申し訳なさそうに笑う表情を、何故か、一番らしい(・・・)笑顔だなと、そう思った。

 海風に揺れる緑の髪が、やや赤くなる。

 気づけば、深い夕日が俺たちを包んでいた。





【読者の皆様へ】

 あけましておめでとうございます!

 バニー年から魔竜年へ! ということで、本年も『バニー勇者の魔討譚』をよろしくお願い致します。

 ……肝心のベルがまったく出て来てませんがね!


 現在毎日更新中!(毎朝8時ごろ更新)

 次回の更新は、1月 2 日になります! お楽しみに!

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