4.次の任務へ
――――とまぁ。
こんな日々を送り続けている俺たち『勇者ベルアイン軍団』である。
事件を解決したり、無茶をしたり無双したり、時々イチャついたり、でも本質はやっぱり戦闘だったりで、更に二ヵ月の時が過ぎた。
「ふむ……。大分完成してきましたねえ」
「そうだな……」
天界の作戦会議室にて。
ヘリオスちゃんと共に、大陸地図をざっと見回す。
アリスとヒナの勧誘協力もあって、世界各地の協力者は、現在七十八人にまで膨れ上がった。
比較的人当たりのいい二人には、勧誘許可を出している。任務の先で良さそうな子がいたら、声をかけてもらっていたのだ。
その間に、クァルボス並みの大事件が起こらなかったというのも大きい。そのお陰でこの二ヵ月は、ほとんど勧誘に力を入れることができた。
「だから、ほとんどのやつに俺は会った事ないんだけどね……」
「皆さん面白い子ばかりですよ!」
「かわいい子、ではなく、面白い子、なのがまた……」
まぁいい。アクが強いのは今に始まったことではない。
「システムとしては単純です。この子らが定期的に色んな地方に出向いてくれたり、あとは私の方で危険キャッチをする。そうすれば、かなり広い範囲の地域をカバーできるはずです。コースケさんが出向く回数も、だいぶ減るかと」
「そうだな。というか、現在進行形で減ってくれてるし」
おかげさまで大分体力も回復した。
特に、クァルボス事件のさいに勧誘したラチカとシャール。あの二人が協力者としては頭一つ抜けていて、かなりの範囲に出向いてくれているみたいだった。
「ほんとに感謝だなぁ。今度直接お礼を言いに行くか……」
「優秀で助かっています。……という感じなので後は、物理的に協力者が移動しにくい地域を埋めるだけですね。例えば、本土から遠く離れている島とか」
「そうだな……」
ヘリオスちゃんの言葉に俺も頷く。
そして彼女が差す先を見た。
「この、ツェーシマ島とイッキー島。そこへ協力者を送り込むことが出来れば、かなり楽になるかと」
「確かになぁ。ここの二か所は同じ地域とはいえ、本土からかなり離れた場所にある。行き来してもらうよりも、それぞれに人を配置した方が楽に済むか……」
そうと決まれば善は急げだ。俺の『楽』のために、さっそく向かうとしよう。
「今この地域は夜のため、少し時間をおいてからが良いでしょうね」
「おっと、そうなのか。それじゃあちょっとだけ仮眠してから、向かうとするか――――」
そう切り上げようとすると、背後からのびっとした声が聞こえる。
「話は聞かせてもらったよ~」
入り口に立っていたのはヴァートだった。
二つに分かれた魔剣・ヴァルヒナクト。その片割れだ。
ややダウナーなテンションのギャル語を操り、ギャルテイストの入った冒険者衣装を身にまとっている。露出多めの衣装なので、健康的な褐色肌が今日も目に毒だ。
特徴的な青メッシュが今日もかっこいい。
「なんだ、起きてたのか」
「うん~。つーかアタシぃ、最近夜型だし~」
「……まぁ既に、昼も夜も関係ない生活してるけどな」
大陸またいで、なおかつ天界経由していると、いったい何を持って昼夜なのかが分からくなってくる。
「というかヴァート、一人称『あーし』じゃなかったか?」
「おっと、気づいちゃった? ……あーしもそう思ってたんケドさ~。最近のギャルいやつらに聞いてみたら、『あーしとか古くね』って言われてね~。クソワロ」
「ギャルとコミュニケーション取ってんのかよ……」
すげえなヴァート。既にコミュ力が、四十年生きてきた俺より上だ(そもそも誇れるほどコミュニケーション能力高くないけど)。
「いや実際こっちも色々考えたんね? 『あちゃし』とか『あちし』とか、ヒナとキャラ被しねーように考えたんだけど~……………………無理くねってなってね?」
「あー……」
それはそう。
というか一人称なんて、被りを気にし出したらどうしようもないだろうに。ヘリオスちゃんもアリスも、同じ人称の『私』だし。
やれやれとため息をつくと、ヒナは「だってサ~?」と、少しだけ身体をもじもじさせた。
「コーにゃんにはできれば、覚えててもらいて~じゃん? 協力者もめっちゃ増えてんだし……」
「え……」
「ニンゲン表す一人称ってさ~? けっこう耳にする機会多いじゃんね? だからできれば、あんま被ってない方がいいよな~って思ってさ~……。でも、古いのはヤだし~ダセーし~、だったらヒナと被る方がマシなんかな~……的なね?」
「んなことしなくても覚えてるよ。どんだけヴァートと一緒に居たと思ってるんだ」
「……コーにゃん」
「だいたい……うぉぉっ⁉」
「……うへへ♪」
言葉を続けようとした途端、ヴァートに抱きしめられた。黒ギャル特有のツヤのある褐色が、視界を覆う。柔らかいしイイ匂いがして髪の毛がさらさらだった。
「……アぃガトぉ」
「……おう」
「……あ、もーちょい腰きゅってして……。んで、すりすり~ってぇ……」
「こらヴァルヒナクト、あなた何か用事があったのでは?」
「あっヤーベ。素で忘れてたわ~」
「お前な……」
ギャップのある可愛げに全部持っていかれるところだった。
気を取り直して(ついでにヴァートを引きはがして)話を戻す。
「話って……。もしかして、今回の同行者になりたいのかヴァート?」
「そ~。コーにゃん行かんくてもぉ、あーし……アタシが行きたいかな~って」
「そりゃ別に構わないけど、どうしてだ?」
「うん。だってその島ぁ……、――――在るからね」
彼女の口から出た言葉は、先ほどの甘ったるい声色とは一転、武器としての冷徹さを孕んだものだった。
あまりにも鋭利すぎる言葉尻に、作戦室の空気がひりつく。
「そこたぶん、アタシとヒナが一緒に行かないとヤベー気がする」
「ヒナも? ヴァルヒナクトの二人を連れて行かないといけないってことか?」
俺が「どういうこと?」とヘリオスちゃんに聞くと、彼女も「さて?」と首を傾げた。
「え~っとね~、たぶんソコだったと思うんだよね~。アタシの記憶が正しければ~だけど」
「ソコ……。ツェーシマ島か?」
「うん」
「ヴァルヒナクト。そこに、何があるというんです?」
ヴァートは「うん……」と、いつもの気だるげなノリとは違い、神妙な顔つきと共に口を開いた。
「聖剣……かな」
「せ、」
「聖剣……ですか?」
「うん」
予想外の単語に、俺もヘリオスちゃんも、ぽかんと口を開けてしまう。
聖剣。
なるほど確かに。魔剣というものがある以上、聖剣というものも、当然あるのかもしれない。
「そういえば……、前にヒナが言ってた気がする。聖剣がどうたらって……」
どういうタイミングで聞いたんだっけな。
確かアイツが仲間になる前くらいに聞いた気がするんだよな……。聖剣、聖剣……。
「あっ、思い出した。勇者だ」
「お~、それなら話が早いジャン~」
ヴァートは「それ~」とこちらを指さした後、髪をかきあげながら改めて口にする。
「それは約一千年前。当時の勇者が、イラネーつって、聖剣を投げ捨てた場所だよ」
そうだ。ヒナも軽く話してくれていた。
勇者はずっと聖剣で戦っていたが、『使えない』とソレを捨てて、魔剣を使用武器に変えたのだとか。
「まぁ……あの勇者じゃあいらね~よネ」
「そうなのか?」
「フツーの人間だったら、喉から手が出るほど欲しいシロモノなんだろうけどさ~」
ヴァートは普段通りの口調に戻っていた。
だけど、目の中の眼力は。纏っているオーラは、平常時のものではない。
「その名はね、聖剣・イア」
彼女は口にする。
かつて勇者が不要と評し、血に眠らせたという聖剣の名前を。
「手にすれば誰でも最強になれるっていう、世界一単純な効果を持つ――――、世界一の剣だよ」
こうして俺たちは、協力者を得るため。そして経験値を回収するため。
かの地へと向かうことになった。
人口百人にも満たない、海の真ん中にぽつんと浮かぶ、ツェーシマ島。
そこで待ち受けているものとは、いったい。
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