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志望業種は――魔法少女で!  作者: 竹内緋色
the 3rd show
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4th contact とうぼう

4th contact とうぼう


 時は2週間ほど前に遡ります。

 キワムさんが盾となり、私たちは謎の魔法天使の攻撃から辛うじて逃げ切りました。

 結界と呼ばれていた空間を抜けると、そこは入り口であった鷺宮邸ではなく、どこか森の中でした。

「キワムさんが……キワムさんが……」

 やっと再会できたというのに――

「フキちゃん。キワムのことは諦めた方がいい。あの魔法天使にはどうやったって勝てないもの」

「コトちゃん……」

 私はコトちゃんを見つめます。魔法か現実かを見極められるようになった私には、目の前にいるのが親友のコトちゃんであることがはっきりと分かります。

「どうして?キワムさんは――研磨くんは、コトちゃんにとってとっても大事な人なんでしょう?」

 すると、コトちゃんは笑います。魔女独特の世界を皮肉ったような笑いでした。

「そうね。でも、今の私は魔女。そんな人いないわ。思い出も何も、なくなったに等しいのだから」

「そうかもしれないね。でも――」

 でも、それでも――

「キワムさんはずっとコトちゃんのことを忘れなかった。鷺宮琴音という女の子を。大好きな女の子のことを――」

 それは私にとって諦めでした。

 キワムさんはずっとコトちゃんのことを考えていました。何よりも大切に10年間思い続けていたからこそ、キワムさんは魔法少女を目指し続けた。そこに、私の付け入る先なんかありません。

「バカね。フキちゃんは」

 コトちゃんは笑顔を見せます。

「あんなおじさん、私が好きになるはずないじゃない。それに、私はずっと変わらないままなんだから、アイツも私のこと眼中にないわよ」

 時間の止まってしまったコトちゃんがそういうのなら、私はどれだけ眼中にないことになるのでしょうか!

「大丈夫?フキちゃん。なんだかすごく落ち込んでいるみたいだけど」

 そりゃ、落ち込みます。

「それはないです。キワムさんはきっとコトちゃんが琴音ちゃんであることを知ってました」

でも、コトちゃんは手を振って拒絶します。

「それはないわ。気付いていたなら魔女だって分かっていたはずだもの。キワムに分かるのなら、あの子にだってわかるわ」

「ミワちゃんも分かってました。きっと」

 だって、ミワちゃんは思った以上に優しい女の子です。

「それにミワちゃんは――」

「それは決して口にしてはいけないわ。フキちゃん」

「どうして――」

「だって、それが私とあの子のお約束みたいなものなんだもの。だから、黙ってたっていうのならつじつまが合うわ」

「辻褄だなんて、そんな――」

 きっと姉妹だからなんだと思う。家族だから――

 そう言おうとした私をコトちゃんの悲しそうな笑顔が止めました。

「ごめんなさい。フキちゃん。私はあなたもずっと騙してた」

「ううん。私は騙されただなんて思ってないから」

 敵だというのにコトちゃんは私を攻撃してきませんでした。私という魔法少女が現れる前に私は一度ワームに襲われていて、その時私を守ってくれたのがコトちゃんです。あの姿は嘘偽りのないものだと私は信じています。

「あの時、私が初めて魔法少女になった時、コトちゃんがいなければ私は今ここにいない。こうやってコトちゃんとおしゃべりもできていないもん。私はとってもコトちゃんに感謝してる。ありがとう。コトちゃん」

「フキちゃんにそう言われるととても嬉しい。でも、どうも世界の方は待ってくれないみたいね」

 コトちゃんがそう言い終わった時、森の中から落ち葉を巻き上げるような乾いた音が響き渡ってきました。

「フキちゃん。そのタイプ・ソーサラーはあまり使わない方がいいわ。いますぐ解除して」

 私が念じると姿が元に戻ります。中々に便利になった気がしました。

「どうも逃げるほかにないようね」

 コトちゃんは私を見つめます。

「フキちゃん。今ならまだ間に合う。あなたの手に入れた力は今は失われてしまった力。妖精たちが欲しているものなの。だから、フキちゃんだけなら見逃してもらえる。ここでお別れね」

 そう言って飛び立とうとするコトちゃんの手を引っ張って私は言います。

「私はコトちゃんを守ります!例え、世界中の魔法少女が敵になろうとも!」

「例え、それで犠牲が生まれても?」

「犠牲なんてもう十分。これ以上犠牲なんて出さない!全てを私は守ってみせると誓ったから!」

 すると、コトちゃん目から涙がこぼれました。

「ありがとう。フキちゃん。魔女になってまでこんなに優しい言葉をかけてくれるとは思わなかった。フキちゃんは何年経ってもフキちゃんなのね」

「私にとっては今日のことなんだけどね」

 色々と感慨にふけりたい場面でもありましたが、今は逃げることが先決でした。

「らぶらぶしている間に囲まれてしまったようね」

「なんだかすごく語弊のある気がしますが!」

 私たちの周りには魔法少女が佇んでいました。みんなバトンを私たちに向けています。

「これほど魔法少女を集めるなんて、まるで一大決戦のようね。まあ、世界を滅ぼすかもしれない存在を生み出そうとしていたんだから、仕方がないか」

 私はざっと辺りを見渡しますが、そこに魔法天使の姿はありませんでした。

「お前ら!逃亡中の魔女と魔法少女で間違いないな?」

「ここではい、と正直に答えるバカはいないわ」

 囲んでいる魔法少女に一人が尋ね、コトちゃんが肩をすくめて答えました。その仕草はとてもミワちゃんに似ていました。

「貴様ら!エボルワームはどこにやった」

 その言葉にコトちゃんは眉をしかめます。

「《《どこにやった》》とはどういうことかしら」

 魔法少女もまた困惑を表情を浮かべました。

「結界内にエボルワームが存在しなかったという報告を受けている。お前たちが居場所を知っているはずだ。だから、お前たちを捕まえる」

「なるほど。あの雑魚、やってくれたわね」

 コトちゃんは一瞬怒りに満ちた顔をしましたが、すぐに怪しげな笑顔を浮かべます。

「もし、私たちも騙されていて、エボルワームの居場所を知らないと言ったら素直に逃がしてくれるかしら」

「そんなはず、ないだろう!」

「仕方ないわね」

 コトちゃんは肩をすくめます。

「なら、無理にでも逃がしてもらうわ」


 初めに攻撃を仕掛けたのはコトちゃんでした。魔法少女たちは同年代の女の子が敵であると信じられず攻撃を迷っていたところをコトちゃんが先に仕掛けたのです。

「フキちゃん。辛かったら目を閉じて居てちょうだい。魔女は容赦しないの。そういう箍が外れているから。でも、殺しはしないわ。フキちゃんに誓って、それだけは約束する」

 フキちゃんは私たちと魔法少女たちとの間に炎の壁を作りました。けれど、魔法少女たちは臆せず私たちに向かって攻撃を加えます。ある子は魔砲を、ある子はバトンでコトちゃんを殴りつけようとしました。

「コトちゃん――」

「フキちゃんは見てて。魔法少女の戦いは下手に手出しするといけないから」

 私は目を背けずコトちゃんの戦いを見ていることにしました。魔法少女は合計10人ほどでしょうか。7人のうち4人が魔砲を、3人がステッキで何かしらの攻撃を放っています。変化系の攻撃でしょうか。そして、3人がバトンを武器にしてコトちゃんに殴りかかっていきます。

「ふぅ。素人ね。これなら、確実にフキちゃんの方が手ごわい」

 コトちゃんはふらりふらりと魔砲を避けていきます。目に見えない変化系も後ろに下がって避けます。すると、目に見えなかった魔法は虹色の光を放って打ち消しあいました。魔法もまた、ぶつかり合って消えてしまいます。

「ていやぁ!」

 一人、コトちゃんに向かってバトンを振り上げました。コトちゃんはさらりと横に避けます。すると、女の子の向かった先にはもう一人コトちゃんを背後から狙っていた子がいて、二人の魔法少女は互いにぶつかり合ってしまいました。

 まだ、コトちゃんは一度も魔法少女を傷付けてはいません。

「おのれ!」

 もう一人、バトンでコトちゃんを殴りつけようとした子がいます。

「はぁ。もうちょっと連携の取れたチームを作ること。それと、流石に10人は多すぎるわ」

「え?」

 魔法少女は自分のすぐそばまで魔砲が接近しているのに気がついたようでした。どうすればいいのか分からず、その場で停止してしまいます。

「最大5人。最低で3人がベストね。最近の戦隊ものは12人くらいまで増えちゃったけど、当初の9人でも多すぎるわ」

「コトちゃん。一応2015年設定だから――」

 コトちゃんは停止している魔法少女のお腹に足蹴りを加えます。強化系を含んだ一撃は魔法少女を地面へと突き落とします。そして、コトちゃんは魔法少女を蹴り飛ばした時の反動で天高く舞い上がりました。上っている月の影に照らされて、黒い妖精のように私には見えました。

 先ほどまでコトちゃんと魔法少女のいた場所に魔砲が翔け抜けます。

「分かっているの?あなたたち。さっき、私が何とかしなければ、あの子はひどい怪我を負っていた」

「うるさい!避けられないやつが悪いの!」

 まだ戦える魔法少女たちは一斉にコトちゃんにバトンを向けます。

「醜いわね」

 コトちゃんの周りには計7つの魔方陣が怪しく輝いています。

「私は本当に美しいものを知ってしまった。故に、この手で壊せなくなった。そして、あなたたちを壊してしまえばその美しさを失ってしまう。だから、私の親友に泣いて礼をすることね」

 魔法少女たちが攻撃を加えるより早く、コトちゃんの展開した魔方陣から鎖が飛び出します。その鎖たちは目にも留まらぬ速さで魔法少女たちのバトンを振り落とし、体をぐるぐると拘束してしまいました。

「こうやって捕まって処刑されるのは本来魔女の仕事よね。うふふ。これだけ楽しい光景が見れただけでもよしとしましょうか」

 なんだかコトちゃんのS度はすごく上昇しているようでした。

 そんな時です。

「負けてたまるか!」

 もう一人。11人目の魔法少女が木陰から飛び出してきました。新たな魔法少女はコトちゃんの背中に魔砲を加えようとして――

 私はコトちゃんの背後に立ちふさがり、魔法で壁を作りました。

「なに!?」

 それと同時に私は4条もの小さな魔砲を放ちます。

「そのくらい避けること造作もない――!?」

 私は変化系の魔法を発動させて魔砲の軌道を変化させます。4っつの小さな魔砲は11人目にあたり、11人目の魔法少女は地面に落ちていきました。

「やっぱり、私はまだまだだね。あの子を傷付けちゃった」

「いいえ。フキちゃんがいて助かったわ。確かに、私なら最後の魔法少女をひねりつぶすことくらい簡単だったでしょうけど、恐らく殺していたかもしれない。手加減できないくらいにはちょっと焦ってたもの」

 私はちょっと困ったような顔をします。

「コトちゃん。あまり、殺すとかそういう言葉は――」

「ごめんね、フキちゃん。気を付けるわ。けれど、魔女は――いいえ、魔法そのものが本来人を傷付けるためにあるものだから――でも、フキちゃんの使う魔法はきっと違うのね」

 コトちゃんは地面に倒れた11人目の魔法少女を見つめます。私も魔法少女を見ました。

 その子はケガもなく、地面に横たわっていました。その子の周りには冬であるというのに綺麗な花が咲いています。

「これは、一体?」

「お花たちがクッションになったのよ。フキちゃんの誰も傷つけたくないという思いに魔法が答えたの」

 そして、コトちゃんは最後に言いました。

「フキちゃんなら、きっと、いいえ、絶対に奇跡にたどりつけるわ」

 私は箒を取り出し、コトちゃんを後ろに乗せます。

「二人でドライブなんて、夢みたい」

「そうだね。でも、とってもいい夢だよ」

 冷たい風が私たちに吹き付けます。けれど、私たちは気にもしませんでした。

「ねえ、フキちゃん。わがままを言っていいかしら」

「う、うん。あんまり変態さんなのはやめてね」

 ちょっと時々コトちゃんが怖くなると気があります。主に、私がお嫁に行けるかどうかが不安になってくるようなそんなことです。

「うふふ。それは後のお楽しみよね。あのね、フキちゃん。私にはやらなければならないことができたの」

「そうなんだ」

 最初の方の言葉がとても気になります。コトちゃんは私の背中に体を密着させてきました。

「ええ。私は世界を救いたい。一度滅ぼそうとしてなんだけど、今ならはっきりと間違っていたと分かるの。フキちゃんも全てを知って絶望してしまえば、世界を壊すことを望むと思ってた。けれど、フキちゃんは違った。私なんかよりもずっとずっと強かった」

「そんなことないよ」

 コトちゃんの手が私の箒を握る手を包み込みます。

「いいえ。フキちゃんは強かったわ。そして、私は気付かされた。フキちゃんはそれでもこの世界を愛せるんだって。どんなに悲しいことがあっても笑顔で前に進んでいくんだって。私はそんな世界を守りたいと思った。だから、エボルワームを探し出して、世界の崩壊を防ぎたいの」

 コトちゃんの甘い吐息が私の耳にかかります。

「だから、フキちゃん。私と一緒に戦ってくれる」

「うん。当たり前だよ」

 私はコトちゃんの色香に顔を赤くしながら答えました。

 なんだかとても反則です!

「ありがとう、フキちゃん。そうなれば、魔法少女たちから逃げつつ、あの雑魚エルをとっ捕まえないと」

 そうして、私と魔女ピースメイカーとの逃避行が始まったのでした。


「コトちゃん。大丈夫?」

「ええ。ちょっと油断しただけだから」

 私はとても心配になります。体に力の入らないコトちゃんの姿は体に不調をきたし始めたソラさんやコロネちゃんに似ています。

「仕方ないものね。魔女には時間制限がある。それがもうすぐなだけだから。本当ならもうちょっと大丈夫なはずだけれど、焦っているのかしら」

「コトちゃん。もしもの時は私が頑張るから」

「ありがとう。フキちゃん」

 コトちゃんは元気のない笑顔で言いました。

「けれど、魔法少女にだって時間制限はあるのだから。それだけは、忘れないでね」



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