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長編版 王太子に婚約破棄されましたが幼馴染からの愛に気付いたので問題ありません  作者: 天田 れおぽん @初書籍発売中


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頑張らなくても愛されているし愛してる

(わたしは今、とても幸せ)


 アリシアは賑やかに遊ぶ我が子たちを眺めながら思った。


 ダナン侯爵家の広い庭が狭く見えるほど、子どもたちは元気だ。


「疲れたのかい? アリシア」

「いいえ。そんなことはないわ、レアン」


 芝生の上に広げたシートの上に座るアリシアの隣に、レアンは長い脚をたたむようにして座った。


 レアンがアリシアを見るとき、その表情は柔らかく溶けて暖かい。

 

(レアン……とても頼もしく思えた幼馴染の男の子は、心に傷を抱えていて。知らないうちに、わたしがその傷を癒していた。わたしの傷は、その幼馴染との関係が招いたものかもしれないけれど。わたしは……傷付いて変わってしまったわたしを、そのまま受けて入れてくれたアナタが好き。愛してる)


 アリシアがレアンを見るとき、その表情は彼のものよりも複雑だ。


(わたしがアナタの傷を癒せるとは思えない。だけど、その傷の上に重なっていく、幸せの側には寄り添えると思うの。静かに重なり作られていく地層のように、わたしたちの幸せを。人生を、作っていきましょう)


 口にすれば陳腐になる言葉を伝えないまま、アリシアはレアンの手の上に自分のそれを重ねた。


 春の日差しは柔らかく、風は温くふわりと吹き抜けていく。


(こんな平和な日々が、緩く長く続けばいい。そして、わたしたちの幸せが、次の世代へと繋がっていけばいい。頑張るのではなくて。喜びも怒りも哀しみも、降ってきたままを受け止めて、楽しみながら生きましょう。ねぇ、レアン。ずっと一緒に――――)


 ひときわ強い風が吹き、アリシアの長い髪が絡まるようにして舞い上がる。


 レアンは彼女の髪に手を伸ばし、風から守りながら乱れを梳いて整えた。


 アリシアは声を上げて笑う。


「ふふふ。アナタはわたしを甘えさせてばかりいるわ」

「ああ。キミを甘やかすのは、私の趣味みたいなモノだからね」

「でも、わたし……怖いわ。わたしはアナタに、キチンとお返しが出来ているかしら?」


 いたずらな笑みを浮かべたレアンは、右目を軽くつぶってみせた。


「愛にお返しなんて要らないよ。それにキミは宝物をくれたじゃないか」


 レアンは、庭で遊びまわる子どもたちを愛しげに見つめた。

 そしてアリシアに視線を戻すと、耳元で甘く囁いた。


「私に家族と家庭を与えてくれたキミは、私にとって一番の宝物だよ」

「まぁ」 


 驚いたように声を上げ、アリシアは頬を赤く染める。


 何度も言われている言葉ではあったが、アリシアが慣れることはない。


 言われる度にアリシアの頬は赤く染まり、驚いたような声が上がる。


 そんな彼女を優しく見ながら、レアンは言葉続けた。


「私の宝物を守る為なら何でもするさ。……王位継承権、と呟いて王族を脅す、とかね」

「ふふふ。もぅ、レアンってば」


 レアンは、何度見てもアリシアの笑顔はいいな、と思った。

 そして心の底からの思いを冗談めかして言うのだ。


「ふふ。キミたちの笑顔を守るためなら、私はなんだってするよ?」

「ふふふ。知ってるわ。それに……もう充分にしてもらっているわ。ダナン侯爵さま」

「ふふ。それは良かった。ダナン侯爵夫人殿」


 レアンは、お得意のかすめるようなキスをアリシアの頬に落とした。


 そして翻すつもりだった顔を、両側から妻の細くしなやかな指に捕らえられた。


 少し間抜けな形で固まった唇に、アリシアの唇が重なる。


 愛し愛され、甘えられることの贅沢さを知っていく日々は、アリシアを変えていった。


「わたし、幸せよ」

「ああ、私もだよ、アリシア」


 遠くから響いてくる子どもたちの声を聞きながら、レアンの蕩けるような笑顔を見つめ、アリシアは幸せに浸った。


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