本当の幸せ
アリシアとレアンは、二男一女に恵まれた。
二人が慌ただしく子育てに追われてる間に、子どもたちはあっという間に大人になってく。
自分たちで勝手に大きくなりましたよ、といった風情の子どもたちに呆れている間もなく。
結婚、妊娠、出産と、子どもたちの人生のイベントも駆け足で過ぎていった。
一番最初に結婚したのは末っ子のニネットだ。彼女はアリシアと同じく、二男一女に恵まれた。
長男であるアロンは、美しくも逞しい侯爵家の令嬢を妻に迎え、五男二女に恵まれた。
ジャンはレアンの執事を務めていたセバスチャンの娘、マイラの娘で幼馴染でもあるオデットと結ばれた。
結婚を機にジャンには伯爵位が譲られて、オデットとの間に三男三女をもうけたのだった。
あっという間にダナン侯爵家は大家族となった。
多少の揉め事はあったものの、仲の良い家族として領内で評判になる程度には、良好な関係を築くことに成功した。
商売は景気のよい時もあれば、悪いときもあり。
作物は天気に左右されて豊作のときもあれば、凶作のときもあり。
領地経営には手こずったものの、レアンの才覚と家族の支えにより概ね良好な状態で年を重ねていき。
ダナン侯爵家は領民から愛され、感謝される存在となったのであった。
政治の世界でも出しゃばらず、引きすぎず、絶妙な力加減で貴族たちからの尊敬も集めた。
アリシアの両親は、ひ孫の誕生と娘の幸せを見届けた後、相次いで亡くなった。
残されたアリシアの悲しみは、レアンをはじめとした家族が支えた。
孫たちも結婚して家庭を築き、ひ孫たちも次々と結婚して、更に家族は増えていく。
「随分と家族が増えたわね。わたしは1人っ子だったのに」
「それは私もだよ、アリシア」
よく似た笑顔を浮かべた仲良し夫婦のもとに、玄孫の誕生が伝えられるまでに、そう時間はかからなかった。
時間はサラサラと過ぎていき、百を超えたアリシアは、家族に見守られるなか、静かに息を引き取った。
哀しみにくれる家族が気付いたときには、アリシアの手を握っていたレアンも、眠るようにして息を引き取っていたのだった。
◇◇◇
結局、ペドロと元男爵令嬢との間には子が出来ることはなかった。
なんとか側室との間に王子を儲けたペドロは、自らの立場を安定させるために、ダナン侯爵家へ婚約を持ちかける。
しかし、アリシアが首を縦に振ることはなく。
ペドロと元男爵令嬢の妃は、権力の座を巡って水面下の戦いを強いられることとなった。
だが、その熾烈な争いも長く続くことはなかった。
国王であるペドロが、謎の死を遂げたからだ。
ペドロの後を継いで国王になったのは、彼の子どもではなかった。
ペドロの父である前国王と側妃の間に生まれた子どもが生き延びていて、新しい国王となったのだ。
前王妃という過去の人となったミラの姿は、いつの間にか消えていた。
消えた理由は公式文書に記録として残ることもなく、いつ死んだのかも分からないまま、やがて人々から忘れられた存在になっていった。
◇◇◇
本当の幸せを手に入れたのは、どちらなのか?
その答えを出すことには意味がない。
幸せは頑張って手に入れるモノなどではなく、心と命で感じ取るものだからだ。
それはとても愛に似ている。
◇◇◇ おわり




