幸せは増えていく
長男であるアロンが三歳を迎えた頃、アリシアは次男のジャンを産んだ。
その翌々年には、初の女の子となるニネットが誕生した。
「あっという間に三人の子持ちになってしまったわ」
アリシアは、ベッドに寝そべったままニネットを抱き、来客に我が子を見せた。
「ふふふ、女の子は可愛いですね」
来客は侍女を務めていたマイラだ。
レアンの執事を務めていたセバスチャンの娘で、アリシアの侍女を務めていたマイラも、今は結婚していて一男一女の母である。
「ええ、可愛いわ。我が子は男の子でも女の子でも可愛いし。子どもを持つと、よそのお宅のお子さんも可愛く見えて困るわ」
「ふふふ、可愛いが増えても困らないでしょう?」
「それもそうね」
アリシアはマイラと顔を見合わせて笑った。
「ああ、もう来ていたんだね、マイラ」
そこにレアンが入ってきた。
マイラが訪れたのには理由がある。
「わたしもそろそろ、本格的に仕事をしたいの。マイラは、どうかしら?」
「ええ、私もそろそろ仕事をしたいと考えていました」
アリシアたちはマイラに仕事を依頼するために呼んだのだ。
「我が家の三人の子どもたちは、みな金の髪に金の瞳。王家の色が強すぎる。だから、信用できる者を側に置きたいんだ」
レアンは愛しげにニネットの髪をなでた。
幼子特有の柔らかな髪は、見事な金色だ。
撫でられてキャッキャッ言いながら見上げてくる瞳は澄んだ金色で、誰が見ても王家の色を引き継いでいることが分かった。
「マイラにも子どもがいて忙しいことは、分かっているけれど。わたしのサポートをするとなると、ダナン侯爵家の仕事を手伝ってもらうことにもなるし、子どもたちにも関わることになるから、信頼できる人がいいのよ」
アリシアの言葉に、マイラは大きく頷いた。
「キミも忙しいのは分かっているが……自分の子どもを自宅に置いて仕事をするのも嫌だろう? 我が家であれば、家の子どもたちと一緒に過ごしてもらって構わないのだが」
「ねぇ、マイラ。どうかしら? 乳母も信用できる人を増やす予定でいるの。アナタが仕事をしている間は、わたしたちの子どもと一緒に面倒を見てもらうわ。条件としては悪くないと思うのよ」
レアンとアリシアの言葉に、マイラは戸惑った。
「ええ、そうですね。よい条件です。むしろ、よすぎるような気もしますが……よろしいのですか?」
「もちろんよ」
「ああ。信頼できる人を見つけるのは大変だからね。キミに来てもらえれば安心だ」
マイラは少し迷っているような様子だったが、アリシアの腕のなかにいたニネットがニパッと笑うと表情を緩めた。
「ふふ。このお嬢さまの側で働けると思ったら、断ることなんて出来ませんね」
マイラはアリシアからニネットの体を受け取ると、笑みを向けながら抱いた。
「これで決まりだ」
「ふふ。賑やかになるわね」
大人たちは和やかに笑みをかわし、マイラの腕の中にいたニネットは大きな声を立ててキャッキャッと笑った。




