第22話:Cランク試験④ 待つ
「……冥土の土産だ我の名を教えてやろう。我は上位魔将バルフォルトだ。よく覚えておくと良い。何せこれから貴様らに終焉を呼ぶものなのだからな……」
上位魔将バルフォルトの発言にこの場がさらに緊張に包まれる。
握る武器にグッと力をいれ生唾を飲み込む者。呼吸ができているのかすら怪しい者。様々な反応を示す。ただ、ひとつ言える事があるとするならば今すぐ逃げるべきだという事だ。
戦闘は唐突に始まった。悪魔が一瞬にして消えたと思うと明の星のカムザさんの目の前に現れ三叉槍を突き刺す。
ガムザさんはギリギリの所で三叉槍を大剣で受け止める。
「……ほぉー、反応するどころか受け止めるとは、なかなかやるでは無いか……」
「それはどうもありがとよっ!!」
ガムザさんも三叉槍を横へいなし、大剣での反撃を返すが受け止められてしまう。だが、受け止められる事が分かっていたかのように受け止められた瞬間に後ろに跳び距離を取る。その瞬間、悪魔に魔法がぶつけられる。
砂煙が立ち上ったことにより悪魔の姿が見えなくなり、30秒程沈黙が流れる中、腰を抜かし動けない者の中から「や、やったのか?」「た、助かったのか?」などと声をあげる者が現れ始める。
そんな希望を打ち砕くかのように砂煙の中から悪魔の声が聞こえてくる。
「……ふむ、なかなかやるでは無いか……」
砂煙の中から無傷の悪魔が姿を現す。
「おいおい、マジかよ」
そう声を漏らしたのはガムザさんだ。致命傷とは行かずとも何らかの手傷は負わせられると思っていたのであろう。実際に明の星の面々は目を見開かせ驚いている様子だ。
「……また、同じ事をされても面倒だ。先に貴様ら2人から始末するとしよう……」
悪魔が動く。
明の星の魔法使いが狙われている事は今の発言からわかる。その為、いち早く動いていた明の星の前衛2人が悪魔と魔法使いの間に割ってはいる。
「……邪魔をするか。良かろう……」
悪魔が三叉槍で明の星の前衛2人を薙ぎ払う。
明の星の前衛2人は悪魔の速度について行く事がなんとか出来ていたが、完全に力負けする形となり吹き飛ばされる。
それによって着ている装備はボロボロになり、かなりの重症を負っているように見える。あれではこの戦闘に参加することは難しいだろう。
それを横目に悪魔は魔法使い2人に恐怖を味合わせるようにゆっくりと距離を詰めていく。
「俺を忘れてんじゃねぇー!」
そこに、ザシムさんが剣で斬りつけにかかる。だが、剣で斬りつけたはずが、悪魔の数センチ程で何かに防がれる。
「なっ!」
「……貴様ら程度ではこの結界は破れぬよ……」
それは、絶望と言ってもいいだろう。だが、それでも諦めずにザシムさんは何度も何度も何度も何度も剣を振り下ろす。そこに、ガムザさんとそのパーティーメンバーそして、マッシュさんも加わり剣を振り下ろし始める。諦める事もなく何度も何度も何度も何度も何度も4人それぞれの剣が振り下ろされる事に、がっかりしたかのように悪魔が口を開く。
「……愚かとしか言いようがないな。……もう少し骨があるかと思えば、この程度の結界にヒビすら入れられぬとは……」
そう悪魔は虫を見るかのような目で4人を見ながら言葉を発する中でも、4人はひたすら剣を振り続ける。
この時、刀夜は武者震いに襲われていた。これまで見てきた武人よりも強者であり、自身が最強だと思っていた祖父よりも強いかもしれない。そんな相手に武者震いを覚えないわけが無い。
刀夜の祖父は約1年前に病気により命を落としている。それ以来、刀夜は本気で戦う事が出来なくなった。何せ刀夜と唯一本気でやり合う事が出来たのが祖父だったからだ。祖父が死んで以降も修練を怠る事はなかった。
そして、今自身が全身全霊を持って挑んだとしても勝てないかも知れないと思える相手に出会った。最強だと思っていた祖父よりも強いかもしれない相手に。
刀夜は小さい頃から祖父を超えることを夢見てきた。だが、超える前に祖父は亡くなった。だが、今目の前には祖父よりも強いあるいは互角と呼べるような強敵がいる。もし、この敵に勝つことが出来れば祖父を超えたことになるのでは無いか。そう思い始めてもいた。
ただ、ひとつ言えることは祖父とあの悪魔とでは違う所が多すぎた。祖父は剣技に重きを置いた戦い方をするがあの悪魔は高い身体能力で戦っているようなものだ。簡単に言えばあの悪魔は身体能力のみで祖父と同等あるいはそれ以上だという事だ。
この事に流石は異世界と言わざるを得ないだろう。
「……」
刀夜は待ち続ける。あの悪魔との1VS1出来る瞬間を。だが、それは今戦っている者達を見捨てるという選択になるのかも知れない。
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