第21話:ゼノビア
刀夜がCランク試験に向かった1時間後、アリシア、クレア、セレスの3名は馬車に乗り奴隷商館にやって来ていた。
奴隷商館に着くなり揉み手をしている奴隷商が出迎える。
「これはこれは王女殿下。大変お待ちしておりました」
「早速ですが、見せて頂けますか?」
「えぇ、既に別室にて待機させておりますのでご案内致します」
アリシアはクレアとセレスを従え、別室に案内される。
「こちらにお掛けください」
案内された部屋には長机にソファーがぽつんと置かれているだけの簡素な部屋だが、置かれている長机とソファーは一級品の物だと分かる。
アリシアがソファーにゆっくりとした動作で腰を下ろしその後ろにクレアとセレスが立つ。
奴隷商はアリシアの正面の壁の右端に位置取る。
「それでは、一応の為注意をさせて頂きます。これからお見せする奴隷はとても気性が荒いのでご注意下さい」
まるで、これから見る奴隷が猛獣のような説明の仕方だ。
奴隷商が元からこの部屋にいた女性に目配せをするとその女性は壁からボコりと出た水晶に触れる。すると、アリシアの正面の壁が透け始め向こう側が見えるようになる。
向こう側に居たのは手足を拘束された人だった。
「奴隷の説明をさせて頂きます。この奴隷の種族はアマゾネス。お分かりだとは思いますが戦闘民族で御座います。非常に戦闘能力が高いです。その他にも産まれてくる子は全てが女子である他、性欲が強いなどが挙げられます。そして、この奴隷は見ての通りとても見た目がよくアマゾネスにはとても珍しい生娘に御座います」
「……いくつか質問したいのだけど」
「なんなりとご質問ください」
「私はアマゾネスを見るのは初めてなのだけど、アマゾネスは皆このように容姿やスタイルがいいのですか?」
「アマゾネスは皆、容姿やスタイルは良いですがこのアマゾネスはアマゾネスの中でも群を抜いていると思われます」
「そうですか」
アリシアはじっとアマゾネスを見る。
褐色の肌に透き通るような綺麗な銀髪。オレンジジルコンを彷彿とさせる瞳。そして、なんと言っても非常に整った容姿とハッキリとメリハリの付いた身体。
「彼女は何故奴隷に?」
「成人の義を受けるのを断固として拒否した為、掟により奴隷として売られたと聞き及んでいます」
「それだけの事で奴隷になる事があるのですか?」
「詳しくは分かりませんがアマゾネスの掟のひとつに成人の義を受けなかった者は里からの追放だったと記憶しております。普通であれば、奴隷として売られる事はなかったと思いますが何らかの事があったと推測されます」
「その成人の義の内容とは?」
「アマゾネスの成人の義とは……」
少し言いずらそうに奴隷商は言う。
「…異性との交わりに御座います」
アリシア達は頬を少し赤らめる。
「……そうですか」
少しの間を開けアリシアが口を開く。
「彼女の値段は如何程に?」
「ふむ。普通であれば白銀貨9枚なのですが今回は特別に白銀貨5枚とさせて頂きます」
「分かりました。それで構いません」
アリシア達は内心でホッとしていた。何故ならば白銀貨5枚。これは現在、アリシア達が出せる最高金額だったからだ。
アリシアは長机に白銀貨5枚を置く。
「お買い上げありがとうございます! 諸々の手続きが御座いますのでもう少々お時間を頂きます」
奴隷商の内心はウハウハだった。何せ王族とのコネが出来、尚且つ超高額の奴隷が売れた為であった。実は白銀貨4枚値引きしたがそれでも利益はかなり出ていた。
「それでは、こちらの奴隷の所有権は王女殿下で宜しいですか?」
「いえ、彼女の所有権は私ではなく別の者にしたいのですが、構いませんか?」
「勿論、大丈夫ですが、そうなりますと御本人に来て頂く必要がございます」
「そうですか。今日中に彼女を連れて帰りたいのですが、難しそうですね」
「そうなりますね。ですが、王女殿下が今のところは所有権を持ち、後日所有権を別の者に変えられるよう手配しましょう。変える際は当店まで来て頂く必要がございますがいかがでしょう」
「それでお願いします」
「分かりました。……次に隷属の首輪と隷属の刻印のどちらになさいますか?」
「隷属の刻印でお願いします。場所は右手の甲に」
「分かりました。……大変言い難いのですが、今回ご購入なされた奴隷の扱いについて注意して欲しい点がございます。率直に言いますとあの奴隷は戦闘狂で御座います。そして、自分が認めた以外の異性に触れられる事を嫌がります。ただ、戦闘中には適応されないと思われます。そして、最後に隷属の首輪、隷属の刻印の効果に耐え主を襲う可能性がありますのでご注意下さい」
「分かりました。彼女は主を一度襲っているという事で間違いないのですか?」
「いえ、正確に言えば私の命令を無視し痛みを耐えたまま触れようとした職員を殴り飛ばした実績がありますのでそう忠告させて頂きました」
「そうですか。忠告ありがとうございます」
「いえ、万が一にも王女殿下の身に何かあれば一大事ですので」
諸々の手続きを終えたアリシア達は馬車に乗り刀夜の屋敷に帰って来た。奴隷の所有権は刀夜になっている。
念には念をということで奴隷商が馬車を1台手配しその馬車にアリシア達が買ったアマゾネスの奴隷が檻の中に入れられた状態で運ばれていた。脱走防止の為に手足は拘束されたまま、見張りを4人がすぐ近くに控えている。勿論、周囲からは普通の馬車より少し大きめの馬車にしか見えない作りになっている。
屋敷に到着し檻ごと屋敷の玄関に置きこれで仕事は終わりだと言わんばかり奴隷商が手配した者達は帰って行く。
アリシアが奴隷に声をかける。
「私はアリシアと申します。右に控えているのがクレア。左に控えているのがセレスです。貴方の名前を伺っても?」
「ゼノビアよ」
「ゼノビアさんですね。これから貴方は刀夜様に仕えて頂きます」
「あら? 貴方じゃないの?」
「私ではありませんよ」
「そう…名前からして男かしら?」
「えぇ、素晴らしい殿方です」
「そう…貴方達はその男に御執心みたいね」
そう指摘されアリシア達は頬を赤くする。
「それで、私に何をさせたいのかしら?」
「これから話す事は刀夜様には口外しないようにして下さい。よろしいですね?」
「えぇ、いいわよ」
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これからもこの作品をよろしくお願いします。




