第20話:Cランク試験③ 上位魔将
何時もやっている。人を本当に手に掛けるのは初めてだが、イメージトレーニングとしてであれば、ほぼ毎日のようにしている。それと同じようにすればいい。
ハイライトの消えたような瞳で一番近くにいた盗賊に一瞬で近付く。
一瞬で目の前に現れた刀夜に盗賊は目を見開きおどろくが、すぐに慌てて剣を振り下ろそうとするがその前に盗賊の視界が低くなっていく。
「…なっ……にが…」
それがその盗賊の最後だった。
「ひっ…ば、化物!」
1人の盗賊が顔色を悪くさせ後ずさっている。他の盗賊は刀夜がやった事を見ていなかったのか後ずさっている盗賊を嘲笑する。
「ぷっ、あいつ後ずさってやがるぜ!」
「おいおい、何ビビってんだよ新入り。たかだか下っ端が1人殺られただけじゃねぇーか。しっかりしろ……よ?……あっ、あれ?……」
先程まで喋っていた盗賊の視界が低くなり、その疑問の言葉を最後に盗賊は絶命した。
「皆! アイツに続け!」
「「「うおおぉ!!」」」
それを切っ掛けに姿を隠していたCランク試験を受けている前衛組が姿を現し盗賊に切りかかって行く。
勿論、後ろからは援護射撃付きだ。
これによって乱戦に突入したが、すぐにこちらが押され始める。なにぶん、人数の差が倍以上違う上に盗賊が連携を取っている。それに反しこちらは即席パーティーのようなもので辛うじて連携が取れているに過ぎない。
なんとか魔法で牽制出来ているお陰で押されながらも、なんとか食い止めているが、魔法使いの顔を見るとかなりしんどそうだ。
このままじゃあ、ジリ貧だな。そんな事を思いつつもあれから盗賊を5人斬り殺している。
少しの間、なんとか頑張っていたようだが、とうとう前線が崩れた。
魔法使いが魔力切れを起こしへたり込んでしまったのだ。それによって前衛の者達が次々に傷付いていく。
「潮時か」
そう俺がぽつりと呟くと同時に森から矢が盗賊の眉間を貫く。
森の中からBランクパーティー明の星の面々が姿を現し盗賊に勇猛果敢に突っ込んでいく。後衛2人が前衛4人をサポートする形で戦闘をするようだ。
明の星の面々に半数近くの盗賊が相対している。そのお陰で徐々にこちら側が押し始めた。
明の星の面々が10人程、盗賊を絶命又は手傷を負わせた頃に刀夜が盗賊の頭だと目星を付けていた男が声を上げる。
「おいおい、マジかよ! チッ、仕方ねぇ。おい! アレを持って来い!」
判断能力があるな。勝てないと悟ってすぐに、隠し球を出すか。
「わ、分かりやした!」
何かを取りに行った盗賊が、アジト内に姿を消す。1分も経たない短い時間で盗賊がアジトから出てくる。
「頭! 持ってきやしたぜ!」
「良くやった!」
盗賊の頭が受け取ったものは手のひらサイズの黒い水晶のような球体状のものだった。
「へへへへ、よくも俺の部下を殺ってくれたな。覚悟しやがれ!」
盗賊の頭が黒い水晶を地面に投げつけパリッんと言う音と共に黒い水晶が砕け散り黒いモヤのよう物が現れる。
刀夜は黒いモヤを見た瞬間、嫌な予感を覚え少し距離をとる。
黒いモヤが空中に集まり真っ黒い球体になる。そして。徐々に黒いモヤが薄れていくと異形の怪物が姿を現す。
全身が灰色であり、瞳は紅く異形の翼をはやし頭からはねじれた角が2本。尾骶骨の辺りから長い尻尾がはえている。
この異形の怪物を呼び出した張本人である盗賊の頭は地面にへたり込んでいる。どうやら、盗賊の頭にとっても予想外だったようだ。
盗賊を含めこの場にいる誰しもが息をする事を忘れたかのように異形の怪物を見る。その瞳には恐怖や畏怖と言った感情が込められている。
刀夜でさえも剣を持つ右腕が震えている。今すぐこの場から逃げ出したいと言う感情に襲われる。
「……脆弱な人間風情が……」
ぽつりと紡がれた一言。その一言には殺気が込められていた。それも、ただの殺気ではなく。明確に死をイメージするような殺気を。
「…じ、じにだぐだい」
そう言葉にしたのは誰だったか分からない。だが、ひとつ言えることがある。それは、その言葉によってこの場にいる人は行動に移す事が出来た事だ。
ある者は気を失いその場に倒れ伏す者。ある者は地を這うようにして逃げる者。ある者は腰が抜けその場に崩れ落ちる者。ある者は自身の死を悟ったの命を諦める者。ある者は異形の怪物に懇願しようとする者。そして、ある者は戦意を忘れず武器をグッと握りしめ異形の怪物を睨み付ける者。
「……ほぉー、今ので戦意を失わぬ者がこれ程いるとは……」
戦意を失っていない者。それは今回の試験官であるザシム、マッシュ、Bランクパーティー明の星の面々。そして、刀夜。計9人だった。
「……ふむ……」
そう一言言い虚空に手を伸ばし何かを掴むような動作する。すると、今までは何も無かったはずの虚空に三叉槍が現れそれを握っている。
「……冥土の土産だ我の名を教えてやろう。我は上位魔将バルフォルトだ。よく覚えておくと良い。何せこれから貴様らに終焉を呼ぶものなのだからな……」
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