第11話:生涯の相棒?
内心では二つ目の屋敷で決めていたが一応の為、三つ目の屋敷を見に来ていた。馬車内では俯いて顔を赤くしてしまったが馬車を降りて三つ目の屋敷を見た瞬間に驚いた。正確に言えば屋敷の塀に驚いたのだが。
三つ目の屋敷の塀が高い事は聞かされ予想していたが、予想していたよりもかなり高くそして、頑丈そうであったため思わず塀を見たまま少しの間固まってしまっていた。
「それでは、中に入りましょうか」
そう文官に声をかけられ正気に戻り軽く周囲を見渡す。聞いていた通りこの屋敷の周りには建物だった残骸が散らばった状態で放置されており、災害のあとのような光景だった。
ひとしきり周囲を見回した後、文官と共に門を潜り中に入りまず目にしたものは噴水だった。そこそこの大きさの噴水の後ろに屋敷があった。
噴水の横を通り屋敷の扉の前まで行くと文官が鍵を取りだし扉の鍵を開ける。すると扉が開かれた瞬間、何かを感じとった。
なんだ? この肌がピリピリする感覚は。まるで、爺ちゃんを相手しているような……。いや、少し違う気がする。
恐る恐る屋敷の中に入る。文官を見るがこの感覚を感じていないようで普通に屋敷内に入っていく。
警戒しながら一歩一歩進んで行く。幸い周囲を注意深く見ている為、文官の目には内装をしっかり確認しているように見えているようで、警戒している事は気付いていない。
人の気配を探ってみるが俺と文官それと外にいる御者以外の気配は感じ取れない。だが、気配を上手く消している可能性が高い為、警戒を緩めない。
それから、時間を掛けて屋敷内を見て回ったが誰も見つけられなかった。
白夜は内心で「本当、なんなんだ? 何処からしてるんだよ」と愚痴を漏らしていると文官が忘れていたとばかりに口を開く。
「刀夜様。申し訳ございません。一部屋案内しておりませんでした」
そう言われこの感覚の原因がその部屋にある可能性は高いと踏みまくし立てるように言う。
「別に構わない。そこに早く案内してくれ」
「かしこまりました」
文官に連れられた先は鍛治工房だった。そこは先程まで居た屋敷から一つ通路が伸びており一階建ての家くらいの大きさの鍛治工房だった。詳しくは知らないが見た感じ色々な道具が揃っているようだ。
「ここは、鍛治工房です。詳しい事は分かっていませんがこの鍛治工房はこの国の建国頃からあるとされています」
何故、この鍛治工房が壊れていないのかは謎だが今はそんな事よりもこの感覚がなにから放たれているのか知りたかった為、質問はせずに聞くことに徹する。
「……質問はないようですね。次にこの鍛治工房にある道具には固定化の魔法が付与されており、この中にある道具を動かす事は出来ません。動かすには固定化の魔法を解く必要があります。ですが、現在ではこれ程までに高度な固定化の魔法を解くことは難しいと言えるでしょう」
俺は文官の説明を聞いていたが途中から頭には入って来ていなかった。何故なら、この鍛治工房の下からあの感覚がしている事に気がついたからだ。
何かこの下にあると確信したがどうしようも出来ない。警戒しながらもこの屋敷の内装はしっかりと確認していたが、はっきりいって素晴らしかった。この一言に尽きる。
一つ目と二つ目の内装はかなり派手だったが、この屋敷は思いのほか派手ではなく、それどころか地味ですらあった。だが、良くよく見てみると細々とした装飾が丁寧に仕上げられておりとても気に入っていた。ただ、この変な感覚さえ無ければの話だが。
その為、かなり悩んでいた。屋敷はかなり気に入ったがこの感覚がある。であるならばこの感覚の原因を突き止めそれを無くせばいいとも考えた。しかし、その原因が土の中にあるとは予測もしていなかった。もしかすれば地下室のようなものがあるのかもしれない。
よし! 探してみるか。でも、流石に文官に見られるとやりにくいし止められる可能性があるな。
「……済まないが。少し一人にさせてくれないか? どちらの屋敷にしたいか考えたい」
「わかりました。それでは、私は馬車で待って居ります」
そういい文官は通路を通り馬車に向かっていった。
「さてと、この感覚の正体を突き止めるとしますか」
そう言い、鍛治工房内を片っ端から調べて行く。
30分程経ったのだが、一向に見つかる気配がない。そもそも、調べれる所は調べたが何処にも隠し通路や隠し扉を見つけられなかった。
「もしかして、たまたま、この感覚を放つ物の上にこの鍛治工房を建てたのか?」
そんな考えが口に出るが刀夜はまだ諦めていない。
うーむ。他にどんな仕掛けが? あれ? これ少し動かなかったか?
刀夜がたまたま、よかかっていた棚が少しだけガタッと動いた気がしたのだ。良くよく見てみると机や椅子以外で動かせる物がこの棚だけということに気がつく。
刀夜は文官の話をきちんと聞いておらずここあるのは全て動かせないのだと思い込んでいた。
早速、棚をゆっくりと動かしていく。幸い悪魔になった事で筋力も上がっており、大した力も使わずに棚を動かせると思っていたが思いのほか棚が重かったので少し苦労した。棚を動かすと棚が置かれていた所には見た感じ何もなさそうに見えるが薄い本くらいがギリギリ入りそうな亀裂が目立たないように出来ていた。
亀裂自体、この鍛治工房内にはいくつもある為、不自然には思えない。だが、何となくだが怪しいと感じた。
亀裂に指さしを引っ掛け持ち上げる。思いのほか重かったが何とか持ち上げることが出来た。
「当たりのようだな」
そこには下に続く階段が現れた。
俺はその階段一段一段を警戒しながらゆっくりと降りていく。明かりは無いが、昼間と変わらないくらいに見えるため階段を踏み外すようなことは無く。降りることが出来た。
階段を降りるとそこにはふたつの松明が左右に置かれ真ん中に鞘に収まった剣が神を祀るかのように置かれていた。
恐る恐る近づいて行くと飾られている剣が剣ではなく、刀だということに気が付くと同時に今までは刀を祀っているように見えたが見る人によっては刀を封印しているかのようにも見える。
そして、その刀から爺ちゃんを相手にしているような感覚を感じる。正確に言えば、自分よりも強者を相手にする感覚だ。
俺は生唾をゴクリと唾を飲み込む。その刀に身体いや、魂が吸い寄せられるかのようにゆっくりと近付き、恐る恐るその刀を手に取った。すると、一瞬ではあったが何かがこの刀と繋がったような繋がっていないような不思議な感覚に襲われるが、すぐに思考を切り替え手に持つ刀を見る。
刀夜が会得している武術は刀を使った実戦的な武術である。その為、刀夜はいろいろな刀を手に持ち幾度となく振るってきた。だが、これ程までに手に馴染み、今すぐにでもこの刀で素振りをしてみたいと思えるような刀を持った事があるかと聞かれれば否だ。
刀夜はこの刀に魅入られると同時に感じていたことがあった。それは、今の自分ではこの刀を扱う資格は無い。というものだった。確かにこの刀はこれまで手にしてきた刀の中ではダントツでトップと呼べるだろう。だが、その刀を完璧に使いこなせれるかは別の話である。
もし、この刀を刀夜が使えば確かに今以上に強くなれるだろう。だが、それと同時に少しずつ刀に依存するようになることも予想出来るだろう。
そうなれば、剣士としては失格でありそれ以上の力を手に入れるのも不可能と呼べる。刀夜の中の剣士とは剣に使われるのでは無く、剣を自分の身体同様に自由自在に扱えてこそ本当の剣士である。そう刀夜は思っている。
そして、刀夜は刀夜の師匠である祖父から良く言われていたいくつかの言葉の中にこういう言葉があったことを思い出す。「十全に扱えぬのであれば、扱うな。十全に扱えるようになり、初めて扱え」刀夜はこの言葉を思い出し刀夜は刀を元あった場所に戻す。
「すぅーー……ふぅーー」
刀夜は深く深呼吸をして再度、刀を見る。刀夜はこの時、異世界に来て初めてと言える本当の目標を見つけ出す。この刀を扱うに相応しい技量を身に付けると。そう心に決めたのだった。
この時の刀夜まだ知らない。この刀を扱えるだけの技量を近い将来、身につけることを。そして、この刀に救われる事を。
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これからもこの作品をよろしくお願いします。




