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生け贄聖女は推し活したい~呪われた皇帝のために「死んでこい」と言われましたが、推しを愛でられるならかまいません!~  作者: 乙原 ゆん


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30/32

30.告白

 さらに数日が過ぎた頃。

 ジークベルトからお茶に誘われた。


 以前お茶会をした時よりも、庭に咲く花が少しだけ変わっていて、季節の移ろいを感じる。

 東屋にエスコートされ席に着くと、フィーネは気になっていたことを尋ねた。


「公爵様の件、もう落ち着かれたのですか」

「あぁ、粗方目処がついた。ここしばらくは、なかなか食事の時間も合わせることができずにすまない。明日の朝からは、またゆっくり食事ができると思う」

「嬉しいです。そうだ、遅くなりましたがこちらを。頼まれていたものです」


 フィーネはジークベルトにようやくできあがった自分の姿を模したぬいを渡した。


「ありがとう。大切にする。よくできているのだな」


 ジークベルトは嬉しげにぬいを撫で、卓上の花の近くに座らせる。


「こうして、花の側に置いてもとても愛らしいな」

「そうですね。私は祭壇に祀っていますが、家でお茶をする時に卓に呼んで、一緒にお茶をする人もいます」

「なるほどな」


 感心したように、ジークベルトは頷いていた。


(陛下……。もしかしてぬい活の才能がおありなのかも……)


 そんなことを思っていると、不意にジークベルトが真面目な顔でフィーネを見る。


「フィーネに、礼を言わなければと思っていた」

「お礼、ですか?」

「あなたのおかげで、私は、呪いから解放され、命も救われた。本当に、感謝する。ありがとう」

「いいえ。私だけの力ではありません。陛下が公爵様に向き合われると決められたからこそ、この結果に繋がりました。それに浄化には神々のお力添えをいただきましたし、……公爵様に対しては、何もできませんでした」

「気遣ってくれたことには感謝するが、それは叔父上の選択の結果だ。フィーネが気にすることではない。それに、あの時、フィーネが側にいてくれたからこそ、私は叔父上の言葉や瘴気に揺らぐことなくいられたのだ」

「え……?」

「叔父上のことは、覚悟はしていても衝撃は受けた。だが、初めて会った日、フィーネが私に太陽神の加護があると言って浄化をしてくれただろう」


 頷くフィーネに、ジークベルトは続ける。


「だから、フィーネがいて、太陽神の加護もあるのなら、絶対に大丈夫だと思えたのだ」

「そのお気持ちがあったからこそ、太陽神様はお力をお貸しくださったのですね」

「さて、それはどうだろうか。フィーネがあの時に必死だったからこそ、太陽神は力を貸そうと思ったのかもしれない。かの神は、厳しさはあれど、結果を諦めず前を向く人には祝福を与えると聞く」

「でしたら、長い間、呪いを背負いながらも生きることを諦めなかった陛下にも、その資格はおありですね」


 言い返したフィーネに、ジークベルトは目を丸くする。


「そう思って、いいのだろうか。私はフィーネの存在があって初めて、加護を信じられたというのに……」

「加護を信じているかどうか、そんな小さなことで、太陽神様(私の推し)は祝福を与えるか、判断なさいません。ただ、諦めない強い思いこそを尊ばれる神様だと思います」

「そうか……フィーネが言うのなら、そうなのだろう……」


 納得した様子のジークベルトは、少し考えるように間を開けるとフィーネの方を見る。


「フィーネに、改めてお願いしたいことがある」

「なんでしょうか」


 ジークベルトは立ち上がり、フィーネの側へ来るとひざまずく。


「どうかこれから先も、私の側にいてくれないだろうか。フィーネ程の実力ある聖女であれば、どこにいても引く手あまただろう。私の立場が、フィーネに不自由を強いるかもしれない。それでも、妻として、フィーネを望みたい。どうか結婚してほしい」


 どこか懇願するようにも聞こえる言葉を、フィーネは信じられない思いで聞いていた。


「……私で、よろしいのですか。陛下とのご結婚を望むご令嬢は多くいらっしゃると――」

「フィーネでなければ、だめなんだ。私が、フィーネを好きだから」


 強く否定する言葉に、目を瞬かせる。


「えっ……」

「伝わっていなかったか……? これでも、頑張っていたつもりだが……足りないのならば、これからもっと努力する。だから、私との結婚を前向きに考えてくれないだろうか」


 必死な様子のジークベルトに、心のうちに押しとどめていた言葉が思わずこぼれる。


「……私も、好き、です」

「なんと……! ありがとう、フィーネ。あなたを大切にすると、太陽神にかけて誓おう」


 指先に口づけられフィーネは顔を真っ赤にする。

 だが嫌なわけではなく、ただ困っている様子のフィーネにジークベルトは「こういった触れ合いもゆっくり慣れていってほしい」と柔らかく微笑むのだった。

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