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「生け贄」聖女は推し活したい ~呪われた皇帝のために「死んでこい」と言われましたが、どうやら推し活をしていていいようです~  作者: 乙原 ゆん


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12.応援うちわを作ります!

「開催場所は野外の演習場でしたよね?」


 頷くカレンに、やはりあれしかないだろうと結論づける。


「ここはやはり、推し活用のうちわを作るのが一番いいような気がします」

「うちわ、ですか……? それはどういう物でしょう……?推し活とは、ぬいを作って愛でるだけではないのですか?」

「『推し活』と言っても、色々なやり方があるんです。でも今回は、推しが遠くにいる時に気が付いてもらえるような、目立つやつを作りましょう! 今から言う材料の準備をお願いできますか?」


 そうして、フィーネはカレンの推し活の準備を進めるのだった。



 エルマーナ王国では推し活用のうちわは、基本はできていて後は自分たちで飾るだけの物が売ってあるが、こちらで手に入れるには時間がかかる。

 そのため、カレンの実家の伝手で帝国の細工師に作ってもらって、それに紙を貼り、飾りを追加していくことにした。


 カレンのうちわは二つ準備し、一つには「ウィル様」「大好き」と両面に文字を入れている。もちろん、リボンで縁飾りをつけているので、遠くからでも抜群に目立つだろう。

 目立つといっても、光に反射する素材は使わない。

 万が一、反射した光が応援したいカレンの推しや他の騎士の迷惑になってはいけないからだ。


 もう一つのうちわには大きなハートを張り、その上に「手を振って」と入れ、裏面に「がんばって」と書いた。


「大分できましたね」


 完成度は八割くらいだろうか。

 フィーネのやることが終わってから作っているので、毎日少しずつ進めている。


「かなり目立つ物なのですね」

「でないと、遠くにいる推し様に気がついてもらえないので」


 カレンは実物を見て、その派手さに戸惑っているようだ。

 それも当然かもしれない。

 今回はうちわの地の色は黒にしている。

 そこにピンク色の紙を使って文字を貼り、うちわの縁にリボンで作った飾りを付け、目立つように仕上げた。

 名前の他にも、黄色や水色で作った星やハートの形を切り抜き、そちらも貼り付けている。


「私が、これを使うのですよね……?」

「もちろんです! このうちわを使えば大きな声を上げなくても、ミットフォート卿の視線は釘付けです。恥ずかしければ、使わなければいいので――」


 フィーネが言うと、カレンは「大好き」と書いてある方のうちわを見ながら、頬を染めつつ首を振る。


「い、いえ、折角作ったのですから、頑張ってみたいと思います! ですが私、ウィル様と愛称で呼んだことがないのに大丈夫でしょうか……」

「うちわにスペースがないので、仕方がないとわかってくださいますよ!」

「そ、そうですね!」


 ほっとした様子のカレンが可愛いらしい。

 応援うちわをきっかけに愛称を呼べなかった婚約者同士が愛称で呼び合うようになったという話も聞くから、うまくいってほしい。


「ところでフィーネ様は、作業の進み具合はいかがですか?」


 カレンが尋ねる。

 何故かフィーネもカレンと一緒に応援うちわを作っていた。

 お手本がほしいとねだられてしまったのだ。

 フィーネは一つしか作っていないのもあり、完成していた。


「私の方はもうできました」


 そうやって見せると、カレンは驚いた様子だ。

 うちわには表面に「陛下」、裏面に「大好き」と入れている。

 本当は「がんばって」など別の言葉を入れるつもりだったのだが、カレンに、一人で「大好き」といううちわを持つのは恥ずかしいから一緒に作ろうとお願いされてしまったので、この言葉で作ることになった。


(実際に、使うことはないと思うし、見えないようにするならいいわよね……)


 誰に言うでもない言い訳を、心の中で呟く。

 今回のメインはあくまでカレン。

 フィーネは、彼女のサポートに徹しようと思っている。


(月の女神様も、頑張る人を喜ばれるものね! 私もそのお手伝いができて嬉しいわ!)


 カレンは、うちわの制作活動も楽しんでくれているようだ。

 そうやって準備をしていると、あっという間に公開演習の日がやってきた。

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