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5-4

 次の日、私はお昼を調達する理央に付き添って購買にきていた。いつも学校に行く途中でお昼を買っている私は、購買に行く事は滅多にない。理央と同じくお昼ご飯を求める生徒で溢れる購買に驚きながら、人の少ない自販機の前で理央を待つ。


 購買の隣にある自販機は、教室の近くにある自販機とラインナップが違うようだ。……あ、この紅茶美味しそう。今度買ってみようかな。

そろそろ理央のお会計が終わったかと思い、購買の方にとぼとぼ戻る。


 その途中で、同じく廊下にいる瀬戸君を見つけた。ばちり、と目が合う。

これって何か反応した方が良いかな……一応、知り合いの仲だし。いや、調子に乗りすぎ?

 そう思いながら瀬戸君に向かって、控えめに手を振る。


 そうしたら、瀬戸君も手を振りかえしてくれた。


「早見さんだー」


 瀬戸君が、私の方に近づいて声を掛ける。瀬戸君が纏っているムスクの香りがふわっと漂う。この距離は、なんだか近すぎるように感じた。


「……瀬戸君はお昼購買?」

「んーん。黒川が買ってるの待ってる」


 黒川君の名前が上がってどきりとする。なんとなく、今は黒川君に会いにくい。


「早見さんはお昼購買なの?」

「いや、友達が購買だったから一緒にきただけなんだけど……」


 理央のことを言いかけて思い出す。私は瀬戸君に言わなければいけないことがあった。


「瀬戸君、ありがとう」

「どうしたの急に」


 瀬戸君は急に言われたお礼に戸惑っているようだ。


「友達と仲直りできた、から。」

「購買に行ってる友達って、昨日言ってた友達?」

「うん」

「良かったじゃん」

「瀬戸君が話聞いてくれたから……あ、」


 視界の端で、理央がパンを抱えて廊下にいる姿が見える。


「友達、買い物終わったみたい。じゃあまた委員会で」



「詩織〜お待たせ」


 私が目に入ると、理央は駆け足で寄ってくる。

理央の手には、パックのカフェオレと美味しそうなチーズの焦げ目がついたパンが抱えられていた。ふわっとバターの良い香りもする。


「無事に買えて良かったね」

「それにしても人多すぎ……てかさっき瀬戸君と話してたよね?!」

「ちょっと挨拶しただけだよ」

「えー、なんか距離感近くなかった?」

「……瀬戸君は、そういう人だから」


 保健室に連れていってくれた時も、なんでもないように私の手を握っていた。確かに、他の人に比べたら他人に触れることに抵抗がないのだろう。そしてきっと誰にでも、同じように接するタイプの人間だ。


「あの顔で、あの距離感……。あれはモテるしチャラいね」


 遊び人の元カレに浮気されたことがある理央は、険しい顔をしている。

……意外と優しくて良いところもあるんだよ。そう言おうと思って口を噤んだ。なんだか私が、瀬戸君を好きみたいな感じに言っているようだったからだ。


<瀬戸side>

「友達、買い物終わったみたい。じゃあまた委員会で」


 そう言って早見さんは購買で買い物を終えた友達の方へ駆け寄っていった。

彼女はすっかり元気そうな姿になっていた。昨日と違って、思い詰めた様子はなかった。


 早見さんは昨日、泣いた事がわかる顔で、上の空だった。それなのに大丈夫と取り繕う姿を見て、放っておけなかった。

 らしくもないことを言ってしまったと後悔したが、あの笑顔を見る限り杞憂だった。


「瀬戸、お待たせ」


 しばらく待てば、お昼の調達が終わった黒川が声をかけてきた。


「食べたいもの買えた?」

「まぁ……それより、さっき詩織と何か話してた?」

「詩織って……早見さん?」

「そう」


 慣れない名前に一瞬誰かわからなかった。そういえば、黒川は早見さんの元カレだった。


「気になる?」

 そう言うと、黒川はムッとした表情になった。


「じょーだん、冗談。大した話じゃないよ。挨拶しただけ」

「あっそ」


 ぶっきらぼうな返事が返ってくる。


 さっき目が合った時、まさか早見さんから手を振ってくれるとは思っていなかった。ぶっちゃけ最初の委員会では怒らせてしまったし、嫌われているのかと思っていた。


「……瀬戸、今日なんか機嫌良いな」

「そう?別にいつも通りだけど」


 次の委員会まで、また話せたら良いな。頭の中ではそう考えている自分がいた。









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