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冒険者になれなかった俺はダンジョン清掃員になったが、本当に価値があるのはゴミの方でした  作者: DLW


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第9話 旅立ちの装い その4

旦那さん。。。柿崎和樹さんの先導で駅前にある店の暖簾をくぐった。

カウンター席5席、奥に小上がりがあるこじんまりとした居酒屋。

「いらっしゃい」お店の大将が出迎えてくれる。

「奥空いてる?」大将はうなずく。

そのまま奥の小上りに通され、晩酌セットなるものを注文。

お通しとビール、ちょっとしたつまみの小鉢がささっと出てくる。

「まぁ、まずはお疲れ」

和樹さんはそういうとビールを傾けてくるので、自分の杯もあわせる。

こつんと子気味良い音のあと、ぐいっと飲む。

ひさびさに飲むビールは最高。お通しの枝豆と、小鉢が二、三品並ぶ。今日はフキの油炒めがサービスらしい。

しばらくつまみながらビールを飲み、たわいもない話をする。

軽く酔っていい気持ちになってきたところで和樹さんが振ってきた。

「・・・・・で、どうしたんだい?」

「はい、、、実は仕事で遠くに行くことになりまして。しかも、どうやらしばらく戻ってこれそうにないんです」

「・・・遠くってどこに?」

「具体的なことは言えないんですが、すっごい遠くです。」

「いつから行くの?」

「それが急に決まりまして。今週中にはおそらく」

「そんなにすぐなんだ。。。」

「はい。長期出張になりそうなんで、姉には連絡しておこうかと思って今日急に来た次第です」

「家に来ること自体は、君も家族だと思っているから遠慮することないよ。でも、そうかぁ、、、」

「姉に言わなきゃと思うんですが、、、、、」

20年前の災厄。姉弟しか残らなかったこと。

俺はあの時幼くて、姉ちゃんやばあちゃんに頼りっぱなしだった。

大人になってありがたいと思うと同時に姉ちゃんには姉ちゃんなりのことがあったと想像できる。

その時俺はぜんぜん頼りにならない年齢だったけけど、そう思うと胸がちょっとキュっとなる。

だからもう姉ちゃんにそんな思いはさせたくないし、もちろん和樹さんや甥っ子たちにも絶対させたくない

「いいたくないんなら、俺が後から裕子にいっておこうか?」

和樹さんがそう提案してくれる。

そうしたらどんなに楽か。

でも、アウリの言葉がよみがえる「後悔はありませんか?」

きっと姉ちゃんは俺が話さなかったら、もし将来戻れなかったとき、和樹さんから話を聞いたら

「なんで言ってくれなかったの」

って他人も自分も責めるかもしれない。

それはダメだ。俺が俺の責任で行かなきゃ。


「・・・いや、このあと帰ったらちゃんと俺から言います」

和樹さんはそのままビールを飲み干すとうなずいた。

「わかったよ。こっちのことは心配しないで、安心して行くといい。」

「・・・ありがとうございます」

頭を下げる。

「おいおいおい。遠慮は無用ってさっき言っただろ?」

お互い顔を見合わせて笑顔になる。

「ちょうど飲み切ったし、そろそろ帰ろうか」

「あ、その前に和樹さんの銀行口座教えてもらえますか?」

「え?なんで?」

「……実は今回の仕事、報酬が結構出るんです。

 もし俺がすぐ戻れなくても困らないように、和樹さんに預かっていてほしくて。」

「・・・・・平助くんそれって・・・・・」

「ああ!そんなやばい仕事?じゃないです。ちゃんと政府からの依頼で家の会社が引き受けてるんで」

「・・・・・・・・・。」

「俺も和樹さんが預かっててくれたほうが安心するので。迷惑かけてすんません」

「・・・それで平助くんがいいなら。じゃ後でメールしておく」


店を後にし、家に帰る。

酔いもちょうどよく冷めたところで飯をかっ込み、食後にケーキをたべながら俺は改めて話をした。

案の定、姉はとても心配していたが、和樹さんのフォローもあり、何とか納得してもらった。

帰り際 仏壇に挨拶をする。花子も裕也も眠っていたので挨拶はできなかったが、姉と和樹さんに話せてよかったと思った。

ばあちゃんにもしっかり戻れるようお願いしたし、これで俺の心の整理はついた。

カバンから携帯を取り出し、ライムに書き込む


『藤堂平助 参加します』


一度だけ深く息を吐く。


送信。


数秒後。


『承知しました。』


その短い返信を見届けて、俺は携帯の画面を閉じた。



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