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灰色の空と、金の狼  作者: 灯薄
【始動編】
29/30

28. 初手




今日から、グラディア王国第一王女の誕生祭が始まった。


明日は帝国の皇帝を招く宴会がある。

改めて王国の力を示し、帝国との絆を深める為の重要な会だ。



「準備は大丈夫ですか?」

「勿論です。指導者(マギステル)


深々と頭を下げる一人の男。

その背後に控える者達も深く頭を垂れている。


青年は暗闇の中、ふっと笑った。

月明かりが青年の紅い瞳を怪しく照らす。


がらんとした空間には彼等と、ぽつんと置かれた椅子だけがあった。


曇った硝子の向こうには、ぼんやりと城が見える。


「よろしくお願いしますね、忠実な者達(フィデレス)。我々の願いを叶える第一歩です」

「承知しております。……マギステル、どうかお元気で」

「ありがとうございます」


男達が去っていく。



きっともう、彼等と会うことはない。



青年は憂いるように俯いた。



躊躇いがあった。後悔があった。

だが、もう決めたことだ。



再び顔を上げた時、青年の顔には普段通りの笑みがあった。



「ウィカリア」

「……まさか、このくだらない計画に参加しろとは言わないだろうな?」

「そのまさかだよ」


先程よりもぐっと砕けた話し方になった青年は、妖しげな笑みを浮かべて背後を振り返る。


誰も居なかったはずの闇から、赤髪の女性が現れた。


「あの愚か者共と一緒に死ねと?」

「愚か者、とは酷い言い草だね。彼等は真剣なのに」

「質問に答えろ」


ウィカリアが翠の瞳を険しくさせると、青年はやれやれといった様子で椅子に座った。


「端的に言うと、違う。私の理解者である君には、最後まで生きてもらわないと困るからね」

「……分かった」


機嫌が悪いのを隠さずにウィカリアが頷く。

青年の口角が上がった。


「随分と素直に応じてくれるね?長期戦を覚悟していたんだけれど」

「報酬は貰う」


ぶっきらぼうな返事に、青年は益々笑みを深める。


結局、彼女は断らないのだ。


「手出しはしない。それでいいな?―――カンドル」

「ああ、構わないよ。彼等はきっと己の役目を果たしてくれる」


足音を全く立てずに去って行くウィカリアを見送ると、青年――カンドルは何処からともなくチェスのポーンを取り出した。

その拍子に彼の長い、真っ白な髪が揺れる。

カンドルはポーンを掲げると、皮肉気な笑みを浮かべた。



「――さあ、始めよう。……楽しみにしているよ、レオナ・グラディア」



ちょっと混乱するかもしれないので、本文の補足をしておきます。


マギステル→指導者という意味。呼び名みたいな感じです。

フィデレス→忠実な者達という意味。マギステルと同じで、呼び名みたいな感じです。

ウィカリア→赤髪の女性の名前です。

カンドル→彼が信頼する者に呼ばせている名前です。

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