23. 人間
「どうした?随分と機嫌がよさそうだな」
『お使い』という名の議論と説教をどうにか終わらせ、私はレオナの執務室に戻っていた。
こちらを振り仰いでいるレオナはどこか嬉しげで、よく分からない恥ずかしさが込み上げてくる。
こちらの事情は恐らく知らないはずだが、何故か見透かされているような気分だ。
それとも私についている隠密から聞いたのか。
どちらにせよ気まずくなったので、私はレオナから顔を逸らした。
「……そういえば、誕生祭まで3週間を切りましたね」
「……ああ」
打って変わって退屈そうな顔をするレオナは、溜息をつきながら頭を抱えた。
心なしか黄金の髪もくすんで見える。
「まあ、お前との個人的なお祝いだけが楽しみだな」
「え」
「めちゃくちゃ期待しておく」
「え」
正直、ここまで期待されているとは思わなかった。
私を揶揄う為に言っている部分もあるのだろうが、未だに彼女の顔が冴え切らない様子を見ると、本当に心の支えにしている可能性がある。
心の支えというのは流石に言い過ぎか。
それでも、失敗は許されないという緊張が私の体を走った。
「……すまない。気負い過ぎないでくれ」
ぽつりとレオナが零す。
恐る恐る彼女を見ると、真っ直ぐな瞳がこちらに向けられていた。
しかし、その瞳は何処か気だるげだった。
「私は己を偽らなくていい時間が欲しいだけだ。随分な我儘であることは承知しているが、私も一応人間をやらせてもらっている。だから、可能ならお前も楽しんでくれ」
「……またご無茶を言われますね」
「お前と私の仲だろう」
どんな仲だよ。
だがまあ、ここ最近のレオナの落ち込み具合は本物だ。
誰かと会う時には完璧な王女として振舞っているが、こうして私や侍女達しか居ない時には嫌そうな態度を隠そうともしないのだから。
そろそろ、それがレオナからの信頼の証だと認めてもいいのかもしれない。
我ながら素直でないと思うが、許して欲しい。
誰に許して欲しいのか分からないが。
「レオナ、そろそろ面会の時間です。お召し物を変えましょう」
「嫌だ」
「えぇ……」
こういうのは困るから止めてくれと切実に願う。
ゆるゆると立ち上がったレオナは、最後の足掻きとばかりに大きな欠伸を一つする。
そして、一瞬で雰囲気を変えると、自信満々といった笑みをこちらに向けてきた。
「行くぞ。リヴィア」
「承知いたしました」
やっぱり、今の生活も嫌いじゃないかもしれない。
「そうだ、私の代わりにお前が面会すればいいじゃないか」
「いや、なんで名案を思いついたみたいな表情をなさっているんですか。駄目に決まっていますよ」
「いいじゃないか。お前が不敬罪になるだけで」
「それが大問題なんですよ」
口ではごちゃごちゃ言いつつ自分で動くレオナに、溜息が出る。
この生活に慣れるには、もう少し時間が必要そうだ。
今回ちょっと短めでごめんなさい……!
この時期はどうしてもバタバタしてしまって投稿が疎かになってしまっています。
作者はまだまだ書いていくつもりはありますので、どうぞ見捨てず、気長にお待ちいただければ幸いです。
その内、2日に1話のペースに戻せるよう努力致します。
皆様も特に忙しくなる時期だと思いますので、お体に気を付けてお過ごしください。




