ワルサーP38
森の中を歩き廻って、やっとムカシ大トンボを見つけた。
「ここからが大変なんですよ。ムカシ大トンボは動きが早くて、なかなか当たらないのです」
「当たるも何も、トンボは上空を飛んでて、近づいて来ないのだが?」
「そのせいで剣士の僕は、対処しようがなくて、あなたに協力を依頼したのです」
「それでよく依頼を受けたな」
「強制依頼を出されたので、仕方なくです」
「強制依頼か……断るとランクダウンだったか?」
「そうです。それを狙って妹に出されました」
「妹がなぜ?」
「妹も冒険者をしてまして、Bランクなんですね。それで僕のAランクが、気に入らないみたいで、依頼を出したようです」
「……依頼金とかはどうしたんだ?」
「上手いこと父に言って出させたのでしょう。父は妹に激甘ですから」
「ある意味凄い妹だな」
「はい……そんな事情なので、ムカシ大トンボの討伐をよろしくお願いします。地上に落としてもらえば、後は僕が始末しますので」
「わかった。やるだけやってみる」
俺の能力にある、硬質化と爆発。
これを使えば、俺のイメージ通りの物が出来るはず。
俺は手の指を、拳銃を握った形にして、そこからイメージの力を使って、膨らませていった。
おお。手のひらから、鉄の塊が浮かんできた。
それはやがて、完璧な形を描いた。
ワルサーP38。
おっさんのアニオタなら、皆んなが知ってる名銃だった。
「俺の名は佐藤一郎。片山次郎吉の孫だ……あと、なんだっけ?」
「……知りませんよ。それよりその武器?それを使ってムカシ大トンボを退治して下さい」
俺はワルサーP38を撃ちまくった。
パーンパーンパーン。
おお。気持ちいい。これは、病み付きに、なるな。
当たった。ムカシ大トンボが、滑るようにゆっくり降下して行く。
それをマイケルが追って行く。
大空には、まだムカシ大トンボが何匹も優雅に飛んでいた。
俺は撃ちまくった。何発も撃ちまくった。ひたすら撃ちまくった。
それでも弾が尽きる事は無かった。
この拳銃は素晴らしい。さすがワルサーP38。ってまあ。実銃なら、こんなに何発も撃てないだろけど。
沢山のムカシ大トンボは、マイケルが探して処理した。
「佐藤さん、ムカシ大トンボの素材。持ちきれないので、佐藤さんの体の、スライムの部分で何とかなりませんか?」
「吸収は出来ると思うけど、取り出せるかな?」
「そんな複雑な武器化が出来るなら、大丈夫でしょう。とりあえず吸収してみて下さい」
「わかった」
俺は、羽が切られたムカシ大トンボを、吸収しまくった。
これじゃ俺の体、ぽっちゃりになるんじゃないかな?
そう不安になったけど、体型は変わらなかった。
ギルドへ戻って、クエストの報告をした。受付は可愛い若い女の子だった。
「カウンターにムカシ大トンボを出して下さい」
俺の手から、にょろ〜と出てきたムカシ大トンボは、ベトベトだった。
「うわっ、うわっ、ワワワワ。ちょっと待って、奥の倉庫でお願いします」
女の子は涙目になってた。マイケルのせいだな。困ったやつだ。
倉庫で鑑定してもらったら、クエスト報酬と合わせて、金貨68枚になった。
それを山分けして、金貨34枚づつ。
金貨10枚超えで、俺はEランクになった。
「佐藤さんのランクアップを目指して、明日は160枚以上になりそうなクエストを受けましょうね」
「ああ。よろしく頼む……それで、これは借りてた金だ」
俺は洋服代とかを渡した。
「それでは帰りますか」
「うん?宿代も残ったし、今日は宿に泊ままるつもりだが。また、お邪魔しても良いのか?」
「佐藤さんはパーティメンバーなんだから、大歓迎ですよ」
「正直ありがたい。よろしくお願いする」




