Lv12.絆を信じて踏み出せば チャンピオングローブ+2
「まず黄龍。いまどきローグライクの敵キャラだって学習能力を持っているというのに、お前は皆無なのか。探偵で思考力を鍛えたと思ってたんだけどな、お前にはがっかりだよ」
「うっ……」
「あーちゃんもさぁ、アイテムは皆のものなの。大体ね、あーちゃんはパラディンみたいな役目なんだよ? アイテム拾いなんてのは、俺みたいな離れていても攻撃できるキャラがやるべきなの。役割分担、わかる?」
「ぐっ……」
「ていうかラボちゃんさぁ、普通ラボちゃんの役目って、俺達の絆を確認して、『素晴らしいわ……』とか賞賛するものじゃないの? なのに率先して和を乱すなんて、何のために存在してるの?」
「くっ……」
最初のダンジョンから脱出した俺達は、冒険者の酒場で反省会を行う。少し強く言い過ぎた気がするが、彼女達も自覚はあったようで反論はせずに押し黙る。酒場の中には、ゲームの原作である漫画のキャラが仲間になりたそうにこちらを見ていた。彼女達の代わりに彼等を連れていきたい気分だ。
「気を取り直して……よし、インペリアルシュートフォーメーションだ。防御力の高いあーちゃんが先頭、脳筋に見えて気功による遠距離攻撃や回復もこなせる黄龍が二番手、長距離射撃のできる俺が三番手、状態異常技が使えるラボちゃんは、俺の後ろに陣取って、敵が前方にいる時は補助魔法、後方にいる時は麻痺や鈍足を使って足止めしてくれ」
「了解だぜ、先頭だなんて、俺がリーダーみたいで燃えてくるな」
「遠距離攻撃や回復もこなせる……勇者!? アタシ勇者なのね!?」
「か弱いレディに守ってもらうなんてどうなのかしら……ま、いいけど」
その後もう一度最初のダンジョンに潜る俺達。序盤のダンジョンということで難易度が低いからか、俺の作戦が功を奏したのか、彼女達が冷静になったからか、それから4つのダンジョンを特に苦も無く踏破することができた。……一人一行動ずつしかできないため、時間はやたらとかかったが。
「なんだかいい感じじゃない? アタシ達、最強のパーティじゃない?」
「そうだな、このままノンストップで駆け巡れそうだぜ」
「まだ時期尚早かもしれないけれど、先に言っておくわ……このパーティの働きぶりだけど……素晴らしいわ!」
最初の険悪なムードが嘘のよう、今では女達はわいわいがやがやと盛り上がっているではないか。俺が若干はぶられているのがどうにも納得いかないが。それでも楽しそうな女性陣を見てまあいいかと寂しさを埋めると共に、調子づいた時が一番危ないんだよなあという長年の経験からの不安にも駆られていた。そしてこういう時の勘はびっくりする程よくあたる、事件は次のダンジョンで起こるのであった。
『モンスターハウスだ!』
フロアに入るなり、けたたましい警報が鳴り響き、辺り一面には大量のモンスターがこちらを睨みつけている。いわゆるモンスターハウス、それも大部屋だ。
「来ましたか大部屋MH……落ち着くんだ、落ち着けば打開できる。黄龍、お前のターンからだったよな。持っている無地の巻物に『さんくち』って書いてくれ。その次にあーちゃんは肉体強化の巻物、ラボちゃんは竜巻の巻物を読んでくれ」
「オッケー。見たところアイテムもたんまりあるし、全部いただいちゃいましょ」
肉体強化の巻物は実際には魔法とかの能力も強化されており、フロア全体に30程度のダメージを与える竜巻の巻物のダメージ量も二倍になる。基本となるコンボだ。黄龍が無地の巻物にサラサラと文字を書き、あーちゃんが肉体強化の巻物を読む。そしてラボちゃんが巻物を読もうとしたのだが、困惑した表情になる。
「……あら、おかしいわね。竜巻の巻物がないわよ?」
「そんな馬鹿な、保存用の壺に入れてたはずじゃ……」
自分のターン以外は口は使えるが硬直していて脳内インベントリの確認すらできないので、こうやって口頭によるコミュニケーションを試みるしかない。どれだけ喋ってもこちらが行動しない限り敵も行動しない、素晴らしいシステムである。
「竜巻の巻物だけじゃないわ、一緒に入ってたはずのおにぎりやらも消えてる。おかしいわね、確かに保存用の壺に入れたはずなのだけど。でも容量が0になってるわ」
「……!? ひょっとしてそれ、入れたアイテムを本拠地に送ってしまう、倉庫行きの壺じゃぁ……ちゃんとした保存用の壺もあったよな、そもそも倉庫行きの壺を今まで鑑定した覚えはないし……」
「悪い親父、それ、俺のミスだわ多分……」
アイテムの消失と鑑定もしていない壺が保存用になっていることに困惑していると、あーちゃんが申し訳なさそうな顔でこちらを見てくる。
「俺、てっきり未鑑定アイテムに名前つけるのってさ、用途でつけてると思っててさ……『保存用』とか、『投げる用』とか……全部普通の壺だと思ってたんだよ、だからその壺拾った時も、アイテムが一杯だから保存用に使おうと思って……」
「……まあ、それはしょうがないな。確かに俺も柳の杖を拾った時に、『やなぎ』って名前つけたことあるし。とりあえずラボちゃんは範囲魔法をしてくれ、フロア全体じゃないし火力も低いけど、肉体強化でそれなりにはなってるはずだから」
「わかったわ」
ラボちゃんが魔法を詠唱し、周囲の敵にダメージを与える。そして俺のターン、実を言うと俺の周囲には3匹も敵がいて耐久力の低い俺にとっては軽くピンチなのだ。しかし大丈夫、先ほど黄龍が書いてくれた『さんくち』、サンクチュアリの巻物を床に置けばそこに乗っている限り近距離攻撃に対しては無敵だ。床に巻物を置いてとりあえずこれで一安心だと思っていたが、すぐに周囲の敵に殴られて痛手を負ってしまう。
「ぐぼっ……お、おい、どういうことだこれ……こ、黄龍、お前『さんくち』って書いたよな?」
「ちゃんと書いたわよ、『3くち』って」
「確認はできないが、多分意思の疎通に齟齬があるな……とりあえず黄龍、縮地のスキル使って俺の隣に来てくれ、このままじゃやられる」
「わかったわ……とう!」
黄龍が瞬時に俺の隣にワープして、更に赤いオーラを纏う。数マス以内にワープができる上に挑発でタゲ取までしてくれる便利なスキルだ。しかしその途端、黄龍がくるくると回転し始める。
「あ、あれれ……?」
「ちっ、混乱の罠か……あーちゃんはその目の前にいる敵を必殺技で処理してくれ、そいつは仲間呼ぶから厄介だ。ラボちゃんはもう一度範囲魔法だ」
モンスターハウスはアイテムも多いが罠も多い。最初にアイテムを使って罠を可視化させなかったのは俺のミスだ。頭の中先を読む。体力はあまり残っておらず後一、二発でもくらえばお陀仏だが、幸い黄龍がタゲ取りをしてくれているおかげで次のターンは攻撃を受けないはずだ。ラボちゃんが後もう1回範囲魔法を唱えれば俺の周囲にいる敵は全滅するだろう、しかしラボちゃんは魔法を連発してしまったからか魔力が枯渇している。行動順が回ってきた俺はラボちゃんに魔力回復の薬を投げて回復させてやる。
「黄龍、俺に回復アイテム投げてくれ。混乱していても、投擲はちゃんとした方向に飛ぶから」
「回復? それより周りの敵、もう少しで倒せるじゃない、アタシが倒すわ」
「おい、やめろ! お前は今混乱してるんだ! 混乱中は、攻撃の方向がでたらめになるんだよ!」
周囲に敵がいると倒したくなる彼女の気持ちもわかってやれるつもりだが、今はそれよりも打開を優先しなくてはいけない。黄龍にそう言って説得しようと試みるが、彼女は大丈夫よ、と笑う。
「今のアタシの武器、周囲8マスに攻撃できるから」
「だから混乱は……があっ!」
混乱中は味方にも攻撃してしまう、というのを先に伝えなかった俺が悪いのか、この馬鹿女が悪いのか、黄龍の周囲8マス全方位攻撃により、俺は惨めにも意識を失ってしまった。リーダーを失った部隊は烏合の衆、目が覚めた時には酒場に戻っていて、手持ちのアイテムは全て消えていたのであった。
敵敵
黄@
敵
死因:黄龍に殴られる
チャンピオングローブ……PS『ドラえもん3 魔界のダンジョン』。ドラえもんのローグライクという絶妙なゲームで、出てくるアイテムは当然全てひみつ道具。キャラゲーとしての完成度は非常に高い。




