Lv12.絆を信じて踏み出せば 阿修羅の爪+3
「……勝手な行動しやがって」
まだ殴られた痛みが残ってるような気がせんでもない状態で、酒場での反省会が始まる。けれど今回は険悪なムードだ。知識不足に凡ミス、命令違反と様々な要因が合わさって、この手のゲームを投げる一番の理由であるアイテムロストとなったのだから。
「何よタラコクチビル、アタシ達はこのゲーム詳しくないんだからしょうがないじゃない。この手のゲームって、何度もやられて覚えるものなんでしょう? アタシ達の方が、ゲームを正しく楽しんでるわ」
「開き直った上に意味不明な罵倒しやがって……今回の目的は『4人プレイでクリアする』ことなんだよ!」
書き間違いの上に命令違反してリーダーを撲殺した黄龍を激しく叱責するが、本人は反省の意を見せない。彼女の言うことも一理あるかもしれないが、それでも俺を殴り殺した事くらいは謝って欲しいものだが。
「まあ、ただでさえ一歩ずつで時間がかかるし、親父が無駄な労力を嫌うのもわかるけどさ……正直俺達も疲れたよ、命令ばかりで楽しくないよ」
「だったら学習してくれよ、ただ命令されてるだけって思わずにさ、どういう意図で俺が指示を出してるのか、説明してるつもりだぜ? それに毎ターン毎ターン命令はしてないだろ、あの時はモンスターハウスっていうピンチだったから仕方なかっただけで」
あーちゃんも悪態をつく。これでも俺は『~の敵は~能力を持ってるから~しろ』ときちんと理由を述べた上で命令しているし、大丈夫だろうと判断した状況では自主性に任せているつもりなのだが。
「……大体ね」
先程からずっと俺達の喧嘩にも近い反省会を黙って聞いていた、今回の冒険では特に悪いことはしていないラボちゃん。そんなラボちゃんも、俺に味方してはくれないようで、冷めた目で睨みつけてくる。
「女の子達に守ってもらう気まんまんなんてどうなのかしら。サンクチュアリの巻物と言ったかしら、あれって上にいる人だけ攻撃を受けないって効果なのね。自分一人だけ無傷でいろうなんて。しかも彼女さんを自分の横に立たせて敵の攻撃を受けさせて、敵の攻撃を受けなくなった状態で自分に回復薬を使え? 見てて腹が立ってきたわ」
「何だよ、俺が悪いってのかよ」
反抗的な黄龍、申し訳なさを見せながらもついていけないという態度のあーちゃん、無言でこちらを睨みつけてくるラボちゃん。彼女達の態度に、俺は更にイライラを募らせるしかなかった。
「……俺は悪くねえ! 俺はリーダーだぞ! お前らだって何もできなかったじゃねえか! 俺ばっか責めるな!」
結局のところ、俺は幼さも残る高校二年生でしかない。声変わりもせずに、大人顔負けの判断力で皆をまとめるカリスマ性を持った、おとぎ話に出てくるような少年のようにはなれないのだ。俺が積もり積もった怒りなどの負の感情を爆発させてしまい、しまったと思った時にはもう遅い、彼女達はすっと俺から離れていく。
「……親父の言う通り、俺達は無力だ。だけど……」
「あーちゃん、こんなサイテーな男、もうほっときましょ」
「あまり私を幻滅させないで欲しいものね」
アタシ達はアタシ達のペースで、このゲームを理解するわと言って三人は酒場を出ていく。一人取り残された俺は、原作漫画のキャラクターに慰められながら、様々な感情からポロポロと涙を流すのだった。
「……」
一人取り残された俺は、原作漫画のキャラクターと組むようなこともなく、一人ダンジョンへと向かう。最大4人でPTを組めるゲームだが、別に1人で行っても構わないし、経験値が4倍になるからむしろその方がいいというプレイヤーもいる程だ。
「……」
通常攻撃が遠距離攻撃という、この手のゲームにおいては最高クラスに恵まれた特性を持つ代わりに、他のキャラに比べるとどうしても火力が足りなくなってしまう弓使い。だが、経験値を独り占めすることで適正よりもずっと高いレベルを維持することができ、火力不足という問題点を解消し、持ち前の知識をフルに活用した結果、俺は一人でどんどんダンジョンを踏破して行くのだった。
「……違うだろ」
どうしてこんな展開になるんだよ、おかしいじゃないか。ここは、一人じゃ歯が立たなくて、仲間の大切さを思い知る、そんな展開のはずじゃないのかよ。これでいいのかよ、一人で気ままに旅して、仲間なんて必要ありませんでした、なんて、そんな結論でいいのかよ。いいわけないだろ!
「どうして俺は、敵をばんばん倒してんだよ! ダンジョンをどんどん踏破してんだよ! 違うだろ! 敵に殴られろよ! 痛い目見ろよ! 一人じゃ何にもできない無力な人間でしたって! 仲間の大切さを思い知りましたって! すぐに戻ってあいつらを探して謝りに行けよ!」
今俺がすべきことは一人で黙々とダンジョンを踏破してゲームクリアすることなんかではなく、必死こいて彼女達を探すことだと頭では理解しているのに、身体はゲーマーだからか、呪われてでもいるかのように敵を倒し、アイテムを広い、階段を降りる。馬鹿だ馬鹿だと思っていたけれど、俺がここまで馬鹿だとは思っていなかった。結局このダンジョンもサクサクとクリアして、冒険者の集う酒場へ戻る。
「あいつらは……いないか」
俺とは別に三人で冒険をしている彼女達が、都合よくここに戻ってきてないだろうかと一抹の望みに賭けて酒場の門を叩くが、中に彼女達の姿はいない。テーブルに座って彼女達の帰りを待とうか、いやそれはそれで情けない気もするな……としばらく悩んだ挙句、意を決して原作のキャラクターに話しかける。
「なあ、あいつら……きゃんきゃん喧しい女三人組がどこに行ったか知らないか?」
「ああ? そうだな……少し前くらいに、『烈風の洞窟』に行くって話をしてたかな……」
「そうか……そんなに長いダンジョンでもないし、戻ってくるのを待つかな」
彼女達の向かった先は中盤のダンジョンだ。ロクにゲーム知識の無かった彼女達だが、きちんと自分達のペースでゲームを進めているようで、もっと信用してやればよかったなあ、なんて自己嫌悪に陥りながらも彼女達の帰りを待つ。
「遅いな……」
原作のキャラクターと会話しながら時間を潰すなんていう、何とも贅沢なことをしていたのだが、一向に彼女達は帰ってこない。クリアするにせよ、脱出するにせよ、全滅するにせよ、そんなに時間のかかるダンジョンじゃないはずなのだが。何か時間のかかる要素があっただろうかと、脳内データベースにアクセスして、ダンジョンの敵構成や落ちているアイテムといった情報を思い出していく。
「……!」
そして一つの重要な情報を思い出した時、俺は焦った顔になり席を立つ。
「どうしたんだ?」
「……『烈風の洞窟』は、バグがあるんだよ。『3人でダンジョンに入ると、フリーズする』っていう致命的なバグが!」
ゲームをクリアした後に、レビューサイトを眺めていた時にたまたま見つけたこのバグ情報。その時は、フリーズしたならリセットすればいいじゃん、そこまで致命的でもないだろなんて考えていた。しかし実際にゲームの世界に行って冒険するとなれば話は違う。リセットしてくれるプレイヤーさんなんて、どこにもいないのだから。
「行かなくちゃ。俺、皆を助けなくちゃ。リーダーだから……仲間だから」
酒場の皆に別れを告げると、弓矢とアイテムを抱えて外に飛び出し、ダンジョンへと駆けだした。
阿修羅の爪……DS『降魔霊符伝イヅナ』。クソゲーじゃないけど他人に勧める程の良ゲーかと言われたらなんか悩むようなそんな感じのゲーム。
タラコクチビル……PS『アザーライフアザードリームス』。ローグライクとギャルゲーと組み合わせた感じのゲーム。DSで続編のようなものが出ているが、面白くなかった。
俺は悪くねえ!……PS2『テイルズオブジアビス』。仲間が自分の事を棚にあげて主人公を責める屈指の胸糞イベント




