Lv8.焼き豚をプロデュース LESSON 2
女の子なら誰もが夢見る職業、それはアイドル。
20××年、世界に羽ばたくトップアイドルやアーティスト、プロデューサーを輩出するために国立のアイドル養成校『薔薇のアイドル』学園が誕生。
しかし、アイドルの世界は厳しい。数千の倍率を勝ち抜いてきたアイドル候補生が毎年108人入学するが、1年後には半分も残らない。レッスンに耐えかねて退学、人気投票で最下位なので退学、いじめで退学……もう一度言う、アイドルの世界は厳しい。
そんな『薔薇のアイドル』の狭き門を叩く少女が、また3人……
「努力! 根性! 気合! 天下無敵の格闘系美少女、網野黄龍!」
「闇の炎に抱かれて消えなさい! 頼れるあなたのラスボス系美少女、魔王宮ラボ!」
「伝説の勇者の名は伊達じゃない! 年上の娘系美少女、雨宮ああああ!」
俺の目の前で、三人のアホ共が決めポーズと共に訳のわからんキャッチフレーズを謳っていた。
「どうしてお前等は自分を美少女って言い切れるんだ? 男で自分のことをイケメンなんて自称するやつは滅多にいないぞ? お前等全員おかしいわ」
「は? アタシ美少女でしょ、こないだクラスの女子格付けランキングなんてものを一部の男子が作ってたから首謀者ボコボコにしようと思ったんだけど、アタシの校内偏差値55だったから半殺しですませてあげたわ」
「偏差値55ってこないだ受けた模試の俺の校内偏差値だぞ」
「え、ひょっとして微妙!?」
平均よりは上だが決して美少女と言っていいレベルではないと思う。というかボコボコよりも半殺しの方が酷そうな気がするんだが……
「私達は二次元のキャラだから文句なしで美少女よ」
「二次元出身でも三次元に具現化してるじゃないか。ラボちゃんの元々の姿わかんないよ。あーちゃんに至っては元がドット絵だし」
「今のハードでリメイクとかされないかな……それで正式な勇者のパーティーになるとか」
「あーわかったわかった、皆美少女皆美少女。しかしさっき頭の中にOPが流れてきたんだが、この世界は『学園闘舞バラノアイドル』か……黄龍が見たアニメの原作とか、ネットアイドル育てるゲームとか、発見伝とかアイドルゲーは結構あるのに、よりにもよってこれか」
プレイした当時を思い出してため息をつく。はっきり言って、このゲームはクソゲーだ。いや、魅力的な部分もあるんだが、ゲームバランスとか仕様とかが全てを台無しにしているのだ。
「どんなゲームなの?」
「私も今回はゲームについてとか詳しい依頼とか全然わからないわ、説明して」
「へいへい。ま、主人公でありプロデューサー科の一年である俺が、アイドル科の一年であるお前等を育てて行く感じのゲームだな。プレイアブルキャラは12人だけど、何と108人もの生徒が登場するんだぜ」
「なんだか凄く面白そうなゲームじゃない、早くアタシをトップアイドルにしなさい」
きっと彼女達は煌びやかな学園生活の中で、友人たちと切磋琢磨しながらトップアイドルになる、なんて甘い事を夢見ているのだろう。その幻想をぶち壊さなければならないのが、少し悲しい。
『もうすぐ入学式が始まります。新入生の皆様は講堂へお集まりください』
アナウンスと共に俺達は講堂へ。そこには黄龍達と同じくトップアイドルを志す人達がたくさん集まっていた。ちなみに俺のようなプロデューサー科やマネージャー科の人間もいるはずなのに、新入りアイドルには新入りプロデューサーがつき、お互い成長していくという設定なのに、全く姿が見えない。作中でも全然出てこなかったし実はこの科の生徒は俺だけなのかもしれない。まあアイドル育成ゲームにNPCのプロデューサーやマネージャーなんてどうでもいいということだろう。
「君新入生? 菊野真南緒、よろしくね。君も空手経験者だろう? 僕もなんだ」
「へえ、一目でわかるなんてなかなかの実力者ね。アタシは網野黄龍よ、よろしく」
早速友達を作ったらしい黄龍。積極的な黄龍でなくても、何せ108人もいるのだ、ラボちゃんやあーちゃんも気の合う人達を見つけて仲良く一緒にトップアイドル目指そうねとかほざいている。甘いんだなーこれが。
「それでは早速君達の実力を測るために試験を行う。一定期間以内に総合ステータスをEランクまであげるんだ」
入学式の最後に教師がそう言って課題を出す。基本的には決められた期間以内に課題をクリアすれば次の段階へ、クリアできなければゲームオーバーで課題が出された時まで巻き戻る……という感じだ。
「ステータスを上げる、いい響きね! さあ、早くレッスンしましょう? 歌ったり踊ったりしながらステータスを上げるんでしょ?」
特訓だとかそういう言葉が大好きな黄龍が目を輝かせる。今度5桁の塔を登らせてみようかと思いつつ、俺達は早速レッスン場に行くことに。
「……ねえ呉人。アタシの目にはこれは洞窟に見えるんだけど」
「ここがレッスン場だよ」
「とても歌ったり踊ったりする場所には見えないのだけど」
「レッスン場って言えば、鏡とかがある広い部屋とかじゃねえの?」
誰がどう見たって俺達がやってきたのはRPGとかに出てくる洞窟だ。不安そうな三人を引きつれて洞窟の中に入る。しばらく歩いていると、前方からゴブリンらしきモンスターが何体か襲いかかってきた。
「よし、黄龍。お前の声量を見せてやれ」
「……え?」
「いいから叫べ、この前みたいに」
「わ、わかったわ。……『はっ!』」
戸惑う黄龍が洞窟の中にその声を轟かせる。黄龍の口から♪のマークが飛び出してきてゴブリンにヒット、ゴブリンは消滅した。
「ラボちゃんは踊って! あーちゃんはにっこりスマイルだ!」
「私はこんなことがしたくてアイドルの門を叩いたわけじゃないのだけど」
「にっこりスマイルって言われても……キラッ……恥ずかしいわ!」
まだ残っているゴブリンを掃討すべく、ラボちゃんはその場でくるくると回り、あーちゃんは精一杯の笑みを浮かべる。同様に★と^^のマークが飛び出して、ゴブリン達を見事全滅させることができた。
「最初の課題はチュートリアルみたいなもんだし、後数回戦闘すれば大丈夫だな。よし、次に進もう」
「ちょ、ちょっと待って。もしかしてこのゲームって……RPG?」
「うん」
俺の非情な肯定に、がっくりとうなだれる少女達。他のアイドルと仲良くなったり、自分のアイドルと仲良くなったりとアドベンチャーパートも勿論あるが、基本的には『歌』と『踊り』と『笑顔』という属性を武器に戦うRPGなのだ。一説には納期が間に合わずまともなレッスンを組み込めなかったため、昔作っていたRPGのシステムを流用したとか。
「よし、これで目標達成だ。お疲れ」
「え、ずっとこれを続けるの? 戦闘も単調すぎない?」
「お前等は実際に戦ってるだけマシだろ。俺は指揮官だからこの戦いを眺めることしかできないんだぞ。まあ、期間はまだ余裕があるから、それまでは他のアイドルと仲良くしたりするといいよ」
「そういう要素もちゃんとあるのね、よかった……」
数回戦闘をしただけだったが、全員無駄に疲れ果てている。癒しを求めるかのように、皆は入学式に知り合った友達の元へ向かって行った。……悲劇が起こるとも知らずに。
「次の課題は、歌の能力だけを使って遺跡にいるガーディアンに自分の力を認めさせるのだ。今回の課題は6人までパーティーを組んでいいからな」
しばらくして課題をクリアした俺達に次の課題がやってくる。
「結局ダンジョンを攻略しろってことでしょ? アタシでもわかるわよ……でも6人までパーティーを組んでいいってことは、他の人達誘っていいってことよね?」
「ああ、そうだな。3人いるし、一人ずつ誘ってきなよ」
「了解」
アイドルというイメージからかけ離れた、華やかではない、単調な戦闘も仲間と一緒なら乗り越えられる。そう信じて少女たちは思い思いの仲間を探しに行く。やがてラボちゃんはオカルト大好きアイドル、あーちゃんは天真爛漫系アイドルを連れてきたのだが、黄龍だけ一人で帰ってきた。
「……おかしいわね、どこを探しても真南緒がいないんだけど」
「……ああ、悲劇が起こってしまったか」
「悲劇?」
黄龍の肩をポンと叩き、学園のニュース等を見ることのできる掲示板へ。そこには、
『菊野真南緒 課題をクリアできなかったため退学』
アイドル界の厳しさを、痛い程伝えてくれる一文が書かれてあった。
学園闘舞バラノアイドル……学園都市ヴァラノワール。アニメばかり有名
闇の炎に抱かれて……馬鹿なっ!
ネットアイドル育てるゲーム……らき★すた ネットアイドルマイスター。賛否両論
発見伝……アイドル八犬伝。ホエホエむすめは名曲




