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ラスボス・クエスト  作者: 中高下零郎
Lv7.大人になるって悲しいわよね
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Lv7.大人になるって悲しいわよね 最終章

「アタシ、戦うわ」


 翌日、私の覚悟を汲み取ったからなのか、私に心を支配されてしまったのかはわかりませんが、黄龍は戦うことを表明します。


「ヨヨヨ、一体どうやって彼を」

「……お願いです、何も言わずに今は戦ってくれませんか」

「……」


 救世主の復活を皆が歓迎する中、私が彼をどうやって説得したのか聞いてくるバルバロイに私がそう言うと、察してしまったのかそれ以上は何も言いませんでした。再び帝都に向かい、この前よりも少し完全体に近づいているのか更に邪悪になったアジダハーカと対面する私達。


「ま、前よりでかくなってるだと? こんなの勝てるのかよ……」

「大丈夫よあーちゃん。私に任せて」


 醜悪で凶悪で邪悪な姿に恐怖することなく、聖剣を手にアジダハーカへと走り出す黄龍。私達がどれだけ攻撃しても傷1つつかなかったアジダハーカの鱗に、彼の一閃が切れ目をつける。


「人生って虚しいわよね。どれだけ努力しても、手に入らないものってあるわ。それも血筋だとか運命だとかどうしようもないものでね。アタシはアンタを倒すことができる唯一の存在みたい、どんな剣の達人でも大魔導師でも英雄でもできないことが、アタシはできるのよ。そんなアタシですら、どれだけ頑張っても手に入らないものはある。好きな人の心とかね」


 アジダハーカに同情しているのか、悲しい顔をしながら攻撃を加える黄龍。アジダハーカが苦しそうな声を呻くと、周囲に大量の魔物が現れます。


「皆、召喚された魔物を倒して彼を援護するのです!」


 彼が攻撃に専念できるよう、私達は回復や補助の魔法をかけたり、邪魔をしようとする魔物を倒す私達。


「アンタが何で世界を滅ぼそうとしてるのかわからないけど、気持ちはわかるわ。こんな下らない世界、壊れてしまえばいいって、姫があの男と楽しそうにしているのを見る度に思った」


 今の彼に、SRPGの常識なんてものは通用しないのでしょう。最終決戦ですら私達がターン制で戦う中、一人だけARPGをしているように、何度も何度も攻撃を加えます。


「でも、アタシは孤独じゃないの。利用されるだけでもいい、幸せになって欲しいって思える存在がいるの。それが、アタシが世界を救う理由。アタシが勝つ理由」


 何百回と斬撃を与えた後、とどめの一撃だと言わんばかりに剣を輝かせ、大きく飛翔してアジダハーカの首を斬りつける。そして――





「終わったわ」

「……いえ、大変なのはこれからです。崩壊した帝国領の統治や、戦地の復旧、やらないといけないことはたくさんあります」

「そうね。でも、とりあえずはアタシ達の場所に帰りましょう」


 崩壊していくアジダハーカを背に、私達は共に戦ってきた龍に乗り、民の待つ故郷へと戻ろうとします。しかし、一瞬寒気がして振り返ると、


「グオオオオオオオオオオオ!」


 最後のあがきなのか、アジダハーカが私に向かって暗黒の魔法を放ちます。咄嗟のことで反応が遅れ、死を覚悟する私の前に、バルバロイが両手をあげて立ちふさがり――




 ◆ ◆ ◆



「浮かない顔ですね、黄龍」

「姫」

「明日には国王になるのです、名前で呼ぶのに慣れませんと」


 数日後、戦後の対応に追われていた私が気分転換にバルコニーに向かうと、そこには先客がいました。結果から言えば、バルバロイは私を庇って死にました。私がどれだけ癒しの力を使っても傷は癒えることなく、最期まで彼は私に怪我が無くてよかったと笑っていました。世界を救った英雄である黄龍と私に国王、つまり私の父は退位を決め、明日には結婚式と新たな王の誕生式をこのバルコニーで、たくさんの民の前で行うのです。


「ごめんなさいヨヨヨ。アタシ、今からアンタに酷いことをするわ」

「酷いこと? ……っ!」


 先に謝った後、黄龍は世界を救ったその剣で私の腹を貫く。私のドレスが、赤く染まる。黄龍は、私の血を自分の腹に塗りながら笑った。


「あの男が生きていて、アンタと結ばれるのならば、それはそれで諦めがついたはずなのよ。でも、アンタはアタシと結ばれてしまった。アンタは最愛の人を失った悲しみに暮れ、アタシは最愛の人に偽りの愛を貰いながら生きていくの、救われない世界平和ね。いえ、必死でアンタは彼を忘れてアタシに乗り換えようとするでしょうね。自分のために、アタシのために。でもアンタには無理よ、一緒にいたアタシだからわかる。平和な世界の中で、アタシ達は悲劇のヒーローとヒロインであり続ける。だから悲しみの連鎖は、ここで断ち切ることにしたの」


 黄龍は、崩れ落ちる私の身体をずっと抱いていた。やがて覚悟が決まったのか、私から剣を引き抜くと、躊躇いなく自分の腹を貫き、同じように崩れ落ちる。


「ねえヨヨヨ。アンタは何を手に入れたのかしら? アタシは――」


 人が、集まってくる。




 ◆ ◆ ◆


「……はっ!」

「おう、目が覚めたか姫様……じゃなくて親父」


 後味の悪いエンディングに跳ね起きる。そこは私の部屋だった。


「ここは、どこですの?」

「ちょっと、口調が直ってないわよ気持ち悪い」

「……! そ、そうか、俺はさっきまでヒロインをやっていたのか。途中から完全にゲームの世界だなんて忘れるくらいに没頭してたよ」


 自分の身体をぺたぺたと触る。うん、男だ。思考も元に戻っているようだ。記憶もはっきりしている。レジェンドオブバハムート、確かにああいうストーリーだった。


「……というわけでおめでとう。無事にゲームクリアよ。さあ、貴方に問うわ。彼女を許すのかしら、許さないのかしら」


 ラボちゃんが俺に問いかける。自分自身が女になってまで経験した彼女の人生を、もう一度振り返る。


「……女として本能のままに、燃え上がる情熱のままに生きる道。姫として理性で自分を押さえつけ、模範のような存在となり、献身的に生きる道。ずっと自分の道に悩んで、どちらかを完全に捨て去ろうと、あるいはどちらも得ようと、精一杯彼女は戦ったんだ。ああ、許す、許すさ」

「その言葉で、きっと彼女は救われたわ」


 思えば、彼女は可哀想な人間だった。エンディングで刺殺されても、『自業自得』『ざまあ』という感想ばかり飛んでくるヨヨヨ姫。そんな彼女を、俺は許そう。


「……許せない!」

「気が付いたか黄龍」


 こうして悪女は少しだけ救われましたとさ、めでたしめでたし。となるはずだったが、代わりに新たな敵を作ってしまったらしい。気が付いた黄龍が、ヨヨヨ姫を罵倒し始める。


「女のアタシから見て、あの女は本当に最低の屑だわっ!」

「お前さっきまで男だったじゃねーか」

「……いえ、撤回するわ。最低の屑なのはアンタよ、この浮気者!」

「しょうがないだろ、そういうシナリオだったんだし……」


 どうやら女に戻った途端、ゲームの中でとはいえ俺が明確な浮気をしたのが気に入らないらしい。


「姫に同情してるみたいだけど、どう考えたって主人公の方が可哀想じゃないの。あー思い出しただけでムカムカする」

「まあまあ……主人公は被害者だし、姫は確かに主人公に対して加害者ではあるだろうけど、姫もまた被害者なんだよ」


 男になっていたからか主人公に同情的な黄龍と、女になっていたからか姫に同情的な俺の言い争いが続く。悲しいかな性別が逆転しても、男女の溝とは埋まらないのである。



 ◆ ◆ ◆



「今日は朝から二人ともあんまり目を合わせないね。喧嘩?」

「あー、まあそんなとこ」

「今すぐ謝った方がいいんじゃねーの? キレた網野ちゃんなら刺してもおかしくねーぞ」


 翌日、結局喧嘩になってしまい今日は朝からご機嫌斜めな黄龍。昼食の席で園田君と友人に心配されながら、もう刺されましたよと心の中で自嘲気味に笑う。女子グループの中でも同じ話題になったようで、俺は自然とそれに聞き耳を立てる。


「トリプトファン、雨宮君と何があったの? ギャルゲーやってたとか? そうだったらそのくらいは許容した方がいいと思うけどなあ」

「……男の人と浮気した挙句にアタシを体で黙らせたわ」

「……!?」


 黄龍の声が大きいことと、たまにある教室中がやたらと静かになるタイミングであったため、その問題発言はクラス中に響き渡ってしまう。


「うげ! お前二刀流かよ、こっち寄るな!」

「しかも体で黙らせるって……」

「ご、誤解だ! おい黄龍、てめえ何抜かしてやがる!」

「間違ったこと言ってないもーん」


 ドン引きするクラスメイトに慌てて黄龍を睨みつけるが、悪びれもなくツーンとそっぽを向かれてしまう。その後一緒に実機であのゲームをもう一度プレイし終えるまで、彼女の機嫌は直らなかったのだから恐ろしい。



最後らへん……ガンパレードマーチとかFFTとか

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