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ラスボス・クエスト  作者: 中高下零郎
Lv7.大人になるって悲しいわよね
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Lv7.大人になるって悲しいわよね 第五章

「おら、今日からここがお前の部屋だ!」

「きゃっ!」


 他国の姫という肩書きも、帝国にとってはどうでもいいことなのでしょう。私は拘束されたままカビの生えた地下牢に連れていかれ、拘束を解かれると共に乱暴にその中に閉じ込められてしまいました。


「……なんだあその目は、まさか助けが来ると思ってるのか?」

「思ってますとも。黄龍様達を侮らないでください。すぐにでも私を助け、あなた達を打ち滅ぼすことでしょう」

「おーおー強がっちゃって。その強がりがいつまで持つかなあ、ひひひ」


 ゲラゲラと下品な声をあげて去っていく帝国の兵士。牢の中に取り残された私は、窓から外を眺めて黄龍様達に祈りを捧げようとしますがここは地下牢、そんなものは存在しません。仕方なく粗雑なベッドに寝転がり、天井を見上げてその時を待ちます。急な展開に疲れが溜まっていたのか、すぐに眠気が私を襲いました。



 ◆ ◆ ◆


「おら、今日からここがお前の部屋だ!」

「きゃっ!」


 他国の姫という肩書きも、帝国にとってはどうでもいいことなのでしょう。私は拘束されたままカビの生えた地下牢に連れていかれ、拘束を解かれると共に乱暴にその中に閉じ込められてしまいました。


「……なんだあその目は、まさか助けが来ると思ってるのか?」

「思ってますとも。黄龍様達を侮らないでください。1度全滅したくらいでは諦めない方達です、不死鳥のように甦り、必ずや私を助け、あなた達を打ち滅ぼすことでしょう」

「おーおー強がっちゃって。その強がりがいつまで持つかなあ、ひひひ」


 ゲラゲラと下品な声をあげて去っていく帝国の兵士。牢の中に取り残された私は、仕方なく粗雑なベッドに寝転がり、天井を見上げてその時を待ちます。急な展開に疲れが溜まっていたのか、すぐに眠気が私を襲いました。


 ◆ ◆ ◆


「おら、今日からここがお前の部屋だ!」

「はい」


 ゲームオーバーによる同じイベントのループも、帝国にとってはどうでもいいことなのでしょう。私は拘束されたままカビの生えた地下牢に連れていかれ、拘束を解かれると共に乱暴にその中に閉じ込められてしまいました。


「……なんだあその目は、まさか助けが来ると思ってるのか?」

「多分50回くらいゲームオーバーになる前には……」

「早く来るといいなあ、ひひひ!」


 どこか同情的な表情と共に去っていく帝国の兵士。牢の中に取り残された私は、少しイライラしながら粗雑なベッドに寝転がり、天井を見上げてイベントが進むのを待ちます。


「ああ! せめて私が指揮を執ることができれば!」


 察するに、私を助けるために黄龍様たちが帝国と戦うにつれ、帝国に囚われている私のイベントが進むのでしょう。しかし囚われているという設定上私が戦闘の指揮を執るのは流石におかしいので、主人公役である黄龍様に任せるしかない。そして黄龍様は頭が少々弱いので、十分な戦力があっても負けてしまう……そして前回セーブしたところまで巻き戻ってしまい、同じイベントがループしてしまう……本当に助けは来るのでしょうか? 永遠に黄龍様達はゲームオーバーになり続け、私はずっとここに囚われたままなのでしょうか? そう考えると、恐怖に身体を支配されてしまい、現実逃避するかのように私はベッドにくるまります。



「お、こいつか、例のお姫様ってのは」

「……はい! 私が例のお姫様です!」

「な、なんだぁ? 恐怖でイカれちまったのか」


 どのくらい眠っていたのでしょうか、先ほどよりも更に下品そうな声が聞こえてきました。イベントが進んだのだと私は嬉々としてベッドから飛び上がりながら、牢の前にいる男を見つめます。


「よくわからねえが、いい女じゃねえか。生け贄にするまでまだ時間があるんだ、ちょっとくらい楽しんだって罰は当たらないだろうて」

「生け贄? そ、それより楽しむって、まさか……」

「げへへ、そのまさかさ」


 イベントが進むといっても、決していい方向に進むとは限らないのが世の常です。これはひょっとして、エロ同人みたいなアレでは!? しかもこの後の戦闘イベントで黄龍様が負けるたびに、このイベントが繰り返されるのでは!? 淫靡な螺旋地獄に囚われてしまう自分を想像して吐き気を催していると、


「やめろ」

「バ、バルバロイ様!?」


 その男の横に大きな鎧を着込んだ、長身の男がやってきました。彼の顔を見た瞬間、心臓の鼓動が早くなります。一体何故でしょう? 長身の男が一喝すると、下品な男はそそくさとその場を去り、後には鉄格子を挟んで私達だけが取り残されました。


「あの、ありがとうございます。貴方は……」

「帝国四将が一人、魔竜のバルバロイ。……別に覚える必要などない。貴女はもうじき、帝王が神になるための生贄となるのだから」

「……!」


 そう言ってすぐにその場から去ろうとするその男に、私は気が付けば、


「あの、お話をしてくれませんか?」

「話?」

「はい。貴方の話でも、何でもいいのです。ここは退屈で……」

「……物好きな女だ」


 そう声をかけていたのです。本当に退屈だと思っていたのか、帝国の中でも地位の高そうなこの人に媚を売れば、脱出のチャンスがあるのではないか? という邪な考えがあったのかは、今の私にはわかりません。私を見てクスリと笑ったバルバロイ様は、暇な時にでも相手をしてやると言って去って行きました。




 それから定期的に、バルバロイ様は食事を持って私に会いに来てくれるようになりました。バルバロイ様は色々な事を鉄格子越しに私に話してくれました。帝王の狙い、奴隷剣闘士から成り上がった自分の話、黄龍様達が破竹の勢いで帝国軍を打ち破り、帝王が焦っていること(イベントが何度かループしているので、推定20回くらいはゲームオーバーになっていますが)。皮肉にもそれにより、私が生贄にされる日が近づいているそうです。


「貴女の国を過小評価しすぎていたようだ。四将も残るは私一人、貴女が生贄になるのが先か、私が戦地に散るのが先か……どちらにせよ、こうして話をする機会ももうないだろう」

「……そうですか」

「だが、貴女は生きなければいけない」

「それはどういう……?」


 懐から鍵を取り出すと、ガチャリと牢を開けるバルバロイ様。ずっと牢屋の中にいたので歩くこともままならない私の手をとると、そのままどこかへと連れていきます。


「バルバロイ様、どうかなされましたか?」

「帝王より、儀式をするから生贄を連れて来いと言われてな」

「へ? 儀式の予定はもう少し先のはずでは」

「私の言う事が信用できないのか?」


 途中で見回りの兵士に見つかる私達。怪訝な顔をする兵士にバルバロイ様が凄むと、


「いえ、滅相もありません。バルバロイ様は常に部下である自分達の事を気遣ってくれる素晴らしい将です。バルバロイ様が白と言えば、白なのです」

「良い部下を持ったものだ」


 何かを察したようで兵士はニコリと笑い、私達を見送ってくれました。その後しばらく歩くと、薄暗さに慣れた私には眩暈がしそうなくらい眩しい光が見えてきます。外に出たのです。そこには一匹の、大きな紫の竜がおり、私を待っていたかのように、私を見て鳴き声をあげました。


「あの、バルバロイ様。これは一体どういう」

「逃げるのだ。竜の巫女である貴女ならば、このバハムートも素直に言う事を聞いてくれるだろう。さあ、気づかれないうちに、早く!」

「そんな、そんなことをしたらバルバロイ様は……!」


 バルバロイ様は、私に逃げろと言っているのです。しかしそれが何を意味するか。帝国の将であるバルバロイ様が、生贄を逃がした後どうなってしまうか、黄龍様にだって予想がつくというものです。


「……どうせ散るなら、愛する人間のために散りたい。ただそれだけだ」

「……! それならば、せめて共に生きましょう!」

「駄目だ。貴女を愛してしまった気持ちも本物だが、帝国への恩義を捨て去ることは私にはできない。甘んじて私は罰を受け入れよう。……さあ、行け、バハムートよ!」


 私を無理矢理竜に乗せると、竜は大きな鳴き声をあげて飛び立とうとします。私は咄嗟に手を伸ばしましたが、バルバロイ様のたくましい手を掴むことは叶いませんでした。そのまま竜は大空へ飛びあがり、黄龍様達の待つ、私の住む国へと向かいます。



「ああ、私は、私は……!」


 竜の背に跨りながら、私はずっと泣いていました。私は利用したのです。心のどこかで、最初からバルバロイ様を利用して、どうにか逃げることができないかと考えていたのです。黄龍様には出さなかったような甘えた、黄色い声を使って、薄幸そうな印象を醸し出して、自分に同情してくれればと思っていたのです。しかし実際にそれが叶った今となっては、自分の罪深さに打ちひしがれるのみ。やがてどこか懐かしいお城が見えてきます。


「敵襲か!? ……いや、あれは姫様だ! ヨヨヨ姫様だ!」


 龍騎士団が用いている小屋へと降り立った私を、大勢の人が出迎えてくれます。その中には、黄龍様の姿もありました。


「姫! ああ、よかった、本当によかった!」

「黄龍様、黄龍様……!」


 黄龍様に抱きついてわんわんと涙を流す私。その涙の理由は、黄龍様と再会できたからでは、きっとないのでしょう。そうとも知らず、黄龍様は私をぎゅっと抱きしめるのでした。

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