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ラスボス・クエスト  作者: 中高下零郎
Lv7.大人になるって悲しいわよね
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Lv7.大人になるって悲しいわよね 第四章

「今回の戦いも完全勝利ですわ! 寄らば癒します!」

「すげえ……あの姫様、癒しながら戦ってる」


 帝国との戦いに身を投じるお転婆なお姫様こと私ですが、その溢れるセンスで指揮官としてヒーラーとして、獅子奮迅の大活躍。更に私が最初から覚えていた範囲魔法の使い勝手が非常によく、ラボちゃんの出番をすっかり奪ってしまう形になってしまいました。


「この分なら、次の戦闘に入る前に稼ぎなどはしなくてよさそうですわね」

「……ちょっと待って! アタシのレベルより姫のレベルの方が高いじゃない、駄目よそんなの。稼ぎましょ。姫がアタシより強いなんてあってはならないことだわ」

「ふふ、ムキになって可愛いですわね黄龍様は。けれど確かにメンバー内のレベル差が広がりすぎると後々大変ですから、この辺りでレベルを揃えましょうか」

「役に立たないあっしらのために……姫様! 一生ついていきますぜ!」


 戦いを終えた後本拠地であるお城に戻り、すぐにフリーマップに出撃して皆のレベルアップのお手伝い。今回は指揮を取らずに黄龍様やAIに戦闘を任せて、これ以上経験値を稼ぐと黄龍様が嫉妬しそうなので初期配置の場所でゆっくりとしていると、隣であーちゃんがため息をついていました。


「あら、あーちゃんは稼がないのですか?」

「いや……だって俺の能力の伸びが低すぎてやる気起きないんだよ。特技も意味不明なのばかりだし」

「メイドですものね……」


 私達龍騎士団は近衛騎士の黄龍様や宮廷魔術師のラボちゃん、元山賊のリーダーや東の国からやってきたNINJA、ネクロマンサーといった層々たる面子で揃えられておりますが、あーちゃんは設定上は家事の腕を買われて騎士団に同行しているただのメイド。レベルがあがってもほとんど能力はあがりませんし、覚える技も他人にMPを分け与えるだとか単体の睡眠魔法だとか微妙なものばかり。やる気が無くなってしまうのも仕方のない話なのでしょう。


「唯一差別化できそうな連続行動のユニークスキル『あーの奇跡』も1割くらいでしか発動しないみたいだし、もうずっと二軍でいいや」

「きっとレベルを上げれば発動率もあがりますし、上級職に転職とか色々できますわ! だから頑張って!」

「ステータスが貧弱すぎて稼ぎもままならねえよ! メイドと言えば癒しだろ!? 何で回復技持ってないんだよ、俺が癒しのイメージとかけ離れてるからか!? 母さん達の育て方が悪い」

「そんな酷い……」


 前回の世界では美談っぽく終わりましたのに、まさかこんな所で育成方針に文句を言われるとは思いもしませんでした。あーちゃんは恨み言を言いながら低い移動力で敵に向かって行きますが、敵に攻撃を与えたと思いきや反撃がクリティカルヒットしてそのままお陀仏。きっといつか救済措置があると信じて、他のメンバーを見守るのでした。



「どうやら帝王は各国から竜の巫女を集めているようね。全ての竜を従えて、竜王にでもなるつもりなのかしら」

「しかし竜王になって帝王はどうするつもりなのでござろうな? 全国各地にいる竜の巫女を集め、全ての竜を従える程の力があるなら、世界征服だってできると思うのでござるが」

「お偉いさんの考えることはよくわからんねえ」


 帝国との戦いが続く中、私の秘密だとか帝国の野望だとか、色々な事が明らかになっていきます。主人公なのにストーリーをあまり理解していない黄龍様ですが、RPGの主人公は終始無口も多いので問題ないのでしょう。そろそろ敵の四天王とかが出てきそうですわねえと思いながら休むために自室に戻って寝ようとしましたが、またも黄龍様がノックもせずに部屋に入って来ました。


「姫、今日も姫を慰めてあげてってラボちゃんに言われたわ! そんなわけでBをしましょう!」

「げほげほ……黄龍様、Bの意味わかってます?」


 唐突にそんな事を言いだす黄龍様に思わずむせてしまいます。キスならいいかと簡単に身体を許してしまった私ではありますが、AとBでは大違い、ほぼCと言っても過言ではないレベルだと思っています。


「馬鹿にしないでよ、少女漫画とか読んでるんだから……えーと、Bだから……『ベ』ッティングでしょ?」

「……で、その『ベ』ッティングは具体的にどういうことをすると思ってますの?」

「ベットは賭けるよね、つまり、かけるんでしょ? アタシの」

「……」


 無言で思いきり黄龍様の頬を叩き、もう付き合ってられませんとばかりにベッドに潜り込みます。性別が逆転すると、ここまでうまくいかないものなのでしょうか?


「な、何で叩かれたの? アタシが間違ってたから? ……は! そういうことね!」

「あ、あの、黄龍様? 一体何を……」


 首をかしげていた黄龍様でしたが、何かに気づいたのかもそもそと私のベッドに勝手に潜りこみ、私と身体を密着させてきます。


「ベッティングのベットって、布団のことだったのね。つまり一緒に寝ましょうってことね」

「……」


 性欲はあるのに性知識があまりない黄龍様と、性欲はないのに性知識はある私。一体どちらが汚れているのでしょうか? これ以上何を言っても無駄だと悟った私は、大人しく黄龍様と一緒に寝ることにしました。


「子供の頃もこうして一緒に寝てたわよね、幼稚園の時とか」

「私達は保育園ですわ。黄龍様は昔からやんちゃでしたわよね、よく泣かされた思い出がありますわ」

「昔のアンタ……じゃなくて姫は地味だったわよねえ、家も近いし同い年だし遊び相手としては最適だったけど。まさかいきなりゲームをやって引きこもりになるとは思わなかったわ」

「失礼ですわね、引きこもってませんわ! ゲームを買いに行ったり、友達の家でゲームやったり、アウトドア派ですわ!」

「インドアね……」


 性別は逆転していますが、昔話に花を咲かせる私達。幼い頃に結婚の約束はしていませんが、何だかんだいって昔から私達は仲がとてもよかったことを再確認します。


「はー、何だか寝ながら喋るのって結構疲れるわね。ていうかラボちゃんにも、星を眺めながら話をしなさいって言われたのよ。テトリス?」

「……テラスのことですの? 確かに二人一緒のベッドで寝ると暑苦しいですしね、少し涼みにいきましょうか」


 ベッドから起き上がり、バルコニーだかテラスだか正式な名前はわかりませんが、よくお姫様が祈ったり攫われたりするあの場所に行き、星を眺めながら話をします。


「敵も段々強くなってきたみたいだけど、アタシと姫がいれば余裕ね!」

「……その事なのですけど、恐らく私はそろそろ離脱しますわ」

「へ?」


 ずっと考えていたのです。私のステータスは確かに高めで、最初から持っている技も有用なものばかりですが、レベルを10、20あげても新しい技を覚えません。これが何を意味するか、数々のゲームをプレイしてきた私にはわかってしまうのです。


「私のステータスは途中離脱を前提に設定されています。多分そろそろ、いえ、恐らくもうすぐ来ます」

「来る? 何が来るっていうのよ、アタシにもわかるように話してよ」


 黄龍様が困惑している最中、敵が奇襲をかけてきたことを見張りの兵士が叫びます。前方から、大量の魔物がこちらにやってくるのが見えてきました。


「敵!? 姫は念のため部屋に戻ってて、敵の目的はきっと姫よ!」

「……無理です」

「無理ってどういう……あれ、身体が動かない」


 先程から、石になってしまったかのようにピクリとも体がいう事を聞きません。ここで部屋に戻ったら、お話が成立しないから。ゲームのイベントという名の運命に逆らう事はできないのです。魔物がこちらにやってきて、私を乱暴に掴み飛びあがります。


「姫! どうして、どうして動かないのよ!」

「私はここで敵にさらわれてしまう、という展開だからです。……待ってます」


 すぐに黄龍様達が私を助けに来てくれることを願いながら、私はお城から遠ざかります。黄龍様がずっと叫んでいますが、すぐに聞こえなくなりました。こうして私は、帝国に囚われることとなったのです。

寄らば癒します!……ユグドラ・ユニオン。可愛い鬱ゲー

あーの奇跡……トゥハート2 ダンジョントラベラーズ。名作

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