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ラスボス・クエスト  作者: 中高下零郎
Lv7.大人になるって悲しいわよね
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Lv7.大人になるって悲しいわよね 第二章

「これは一体どういうことですの!? ああ、喋り方まで……」

「見ての通り、このゲームのヒロインであるヨヨヨ姫になったのよ。今のあなたは思考も口調も女の子、それも温室育ちのお姫様」

「そんな、これではまるで呪いではありませんか!」


 健全な男子が女の子になったら興奮するはずなのに、全然そんな感情が湧いてきません。まるで産まれた時から女の子だったかのように、下半身に違和感も覚えないのです。


「ヨヨヨ姫の人生はまさに呪われた人生。その身で彼女の苦しみを理解するのよ」

「酷いですわ……そういえば黄龍様、黄龍様が主人公役ということは……」


 呼び捨てにしようとしても、本当に呪いの類いなのか様づけになってしまう。黄龍様をよく見ると、そこまで無かった胸が、更に無くなっているではありませんか。


「ええ、アタシは男になったみたい。口調は変わってないけど、身体に違和感も感じないし、何となく男らしい気分だわ。ああ、可愛い女の子に様づけで呼ばれるって、気持ちいいわね」

「私は宮廷魔術師、あーちゃんはメイドの役割よ。今までで一番冒険らしいでしょう? わくわくするでしょう?」

「冒険なんて野蛮なことしたくありません! わくわくなんてするわけないでしょう!?」

「あら、男の時は冒険がしたい、ちゃんとした戦闘がしたいって言ってたのに」


 冒険や戦闘よりも、このゲームの要素で言えば……とここでもう1つの不思議な事に気づきました。


「思い出せません! このゲームのことが、さっぱり思い出せませんわ!」


 トラウマになりながらもクリアしたゲーム、他のゲームよりもイベント等は鮮明に覚えているはずですのに、どんなストーリーなのか、ヨヨヨ姫が何故叩かれるのかがさっぱり思い出せませんの。


「ええ。このゲームに関する記憶はほとんど封印させてもらったわ」

「そんな……不安ですわ、私は一体この後どうなってしまうのでしょう……」

「大丈夫よ姫。確かゲームタイトル、レジェンドオブバハムートでしょ? つまりバハムートの伝説。バハムートってドラゴンよね? つまり、私が伝説を築き上げていくのよ。そして最後は姫と結ばれて王様になるんだわ」


 腰に引っ提げていた剣を高らかに掲げて自らのサクセスストーリーを語る黄龍様。とりあえずはイベントが起きるまでロールプレイでも楽しむといいわと、ラボちゃんとあーちゃんは部屋から出て行ってしまいました。



「……姫! 姫は今日も美しい……そう、まるで……まるで……」

「黄龍様、語彙が無いなら無理しなくてもいいですわ。とりあえず外に出ませんこと? 私達の置かれている状況とかを確認したいのです」

「黄金の騎士たるこの黄龍が、姫を守ってあげるわ」


 小さい頃からおままごとなんてつまらないと言っていた黄龍様でしたが、主人公になれたのが余程嬉しいのか、男になったことによる変化なのか、とても嬉しそうに私の手を引いてお城の中を探検して行きます。彼女……いえ、彼のそんな笑顔を見ていると、なんだかこっちまで微笑ましくなりますわ。

 お城の人の話を聞く限り、ここは小さいながらも平和な国で、私は竜と会話する特殊な能力を持っているお姫様。黄龍様は私の近衛騎士という立場だそうです。最近は西の方にある帝国が不穏な空気を漂わせているらしく、近々戦争が起きるのではないかと懸念している家臣もいるものの、大半の人間が平和に慣れすぎてしまっている……という状況のようですね。


「なるほど……読めたわ。きっとこの後武闘大会があって、それに優勝したら姫と結婚できるのね。その後なんやかんやあって魔王が復活して姫がさらわれて、それも倒してハッピーエンド」

「あの、このゲームのストーリーを思い出せないのですが、それは多分違うゲームだと思います……それもバッドエンドの」


 あの話のヒロインも悪女扱いされてましたわねと昔プレイしたゲームを思い返していると、前方から不服そうにホウキを持って歩いてくるあーちゃんの姿が。


「メイドだから物語が進むまでここを掃除し続けないといけないとか、何の拷問だよ……母さん……いや、今は親父か。今回の世界はゲームのストーリーをそのまま体験するって趣旨で、親父が主人公だから、親父が行動しないことには物語が進まないんだ。何をすればいいかはラボちゃんが教えてくれるはずだから、とっとと進めてくれよ」


 お城に仕えるメイドの役である以上、メイド服を無理矢理着させられて働かなければいけないそうです。言われるままにラボちゃんの部屋へ行くと、黒いローブをまとったいつも以上に闇属性っぽいラボちゃんが水晶を磨いていました。


「あらいらっしゃい。城下町に出てもう一度城に戻るとイベントが発生するわよ」

「そんな事教えていいの?」

「それがこの世界における私の役割だし」


 私は色んなゲームをやってますから、進行フラグとかは何となくわかりますけど、黄龍様のような頭の悪い、あら失礼、初心者の場合どうすればいいのかさっぱりわからないこともありますから、彼女のような占いで指示をしてくれる人は大事なのです。言われた通りに私達は城下町に出たのですが、


「さて帰りましょうか」

「ちょ、ちょっと黄龍様! いくらなんでもそれはあんまりですわ! タイムアタックじゃないのですから!」

「だって早く戦いたいもの」


 城下町に出た途端すぐにお城に戻ってイベントを発生させようとする黄龍様。展開的にこの後戦争が起きるのでしょう、最悪城下町が火の海に包まれるかもしれません。その前に平和な城下町を堪能しておきたいのですと、心優しいお姫様という設定である私は思い、黄龍様を連れて城下町でデートをすることにしました。


「ああ、この平和がいつまでも続けばいいのに」

「ふふふ……この国がもうじき私のものになるのね。一度国を経営してみたかったのよ」

「黄龍様、どう見ても悪役のセリフですし仮に王様になったとしてそこでゲームは終了だと思いますわ」


 平和な街並みを見てこの後の展開を考えナイーブになる私とは対照的に、既にエンディングで自分が王様になることを確信している黄龍様。男の子ってそういうものなんでしょうか?

 その後満を持してお城に戻ると、どうやらお城から離れたところに盗賊のねぐらがあるらしく、最近被害が多発しているとのことで。黄龍様やラボちゃん、あーちゃんと言った優秀な戦士達は盗賊を討伐するために出かけて行ってしまいました。私は勿論お留守番、籠の中の鳥なのです。


「ああ、黄龍様……どうか御無事で」


 RPGのお城によくある、ベランダみたいな、お姫様が星を眺めてそうな場所で黄龍様達の無事を祈っておりましたが、数分後、突然私は寝室に移動していました。


「……?」


 目の前には何やら怒り心頭の黄龍様と、呆れ顔のラボちゃんとあーちゃん。


「あの、どうしたのですか? ……あら? 先程まで夜でしたのに、窓の外が明るいですわ」

「ゲームオーバーになったのよ、最初の戦闘で主人公がやられて」

「セーブをし忘れたから最初からやり直しってわけ」


 最初の戦闘、それも相手が盗賊なんてチュートリアルのようなもののはずですのに、一体何があったのでしょうか。悔しそうな黄龍様に恐る恐る聞いてみると、


「だって! アタシが敵を全滅させようと向かって行ったら、敵の前で動けなくなったのよ! その後敵にボコボコにされて……」

「黄龍様、このゲームはSRPGです。移動できる範囲とかが決まっているのです」

「おまけに一人で敵を全滅させようとして、私達を移動させてくれないの」

「だってだってだってー!」


 絶望的なゲームセンスを見せつける黄龍様。ああ、思い出しました。小学校の時に黄龍様と将棋をした時、王将単騎で攻めてきました。当然すぐに詰みになったのですが、『アタシが負けるわけないじゃない!』と私の駒を全て盤から除外した挙句、私にプロレス技をかけてきたのです。彼女は、いえ、彼はそういう男なのです。


「ああ、おいたわしや黄龍様……」

「はい、そういうわけでもう一回城の外に出て戻ってきなさい。出撃前には記録をつけるのを忘れずにね……それから、あなたが加入するのはもっと先なんだけど、戦闘パートの指揮お願いね」


 黄龍様を主人公にしてしまった事を若干後悔しているラボちゃん。その後もう一度先程イベントを繰り返し、盗賊の討伐に皆様が出かけて行った後、脳内に浮かび上がる戦闘画面を頼りに、寝室から指揮をとって無事に盗賊を壊滅させたのでした。




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