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ラスボス・クエスト  作者: 中高下零郎
Lv4.ぼっちだってコンプがしたい!
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Lv4.ぼっちだってコンプがしたい! 最終章

「……うん、カッコよさと強さを兼ね備えたパーティーだ」


 様々な魔界を渡り歩き、強くてカッコいいをコンセプトにデビルを集めていた俺。ケルベロスにクーフーリン、アスラにヘカトンケイル。センスが光るというものだ。


「あ、いたいた。どう? 強いパーティー出来た?」

「お前も集めてきたのか?」

「ええ、コンセプトは四神よ」


 対戦だけではなく交換の依頼もあるだろうからと戦いに使わないデビルでも積極的に捕まえていると、黄龍が興奮した様子でこちらにやってくる。


「四神?」

「ええ。アタシの名前、黄龍ってのはね、東西南北を守る四神を束ねる存在なのよ。両親がね、東西南北どこからの攻撃にも対処できるように中央に陣取りなさいという意味を込めてつけてくれたの」

「いやまあそれは知ってるけど。よく集めてきたな」


 青竜、朱雀、白虎、玄武。中国の妖怪? の中ではトップクラスの知名度を誇る連中だ。けれどこのゲームにおいては野生で出てこない、特殊な合体をしないと駄目なレアなデビルだったはずだが、詳しくないのによく集めてきたものだ。


「それがね、見つからなかったからそれっぽいので代用したわ」

「それっぽいの?」

「ええ。まずは東を守る蒼き龍、青竜!」


 黄龍が銃を空に向けて撃ち、魔法陣からにょろにょろと青い竜が出てくる。……竜?


「いや、これ青竜じゃなくてみずちだろ。確かに青いけど、どっちかと言うと蛇だと思うぞ」

「でも青いし細長いし、似てるでしょ?」

「似てるってお前、本物に会った事あんのかよ」

「さあ、次よ。南を守る聖なる炎の鳥、朱雀!」


 突っ込みを無視して黄龍は次なるデビルを召喚する。魔法陣からは炎に身を纏った大きな鳥が現れ、


「フェニーーーーーックス!」


 すぐにネタ晴らしをしてくれた。フェニックスってそう鳴くのか。


「不死鳥じゃねえか」

「甘いわね。朱雀もフェニックスも、起源は同じだって言ってる人もいるわ。だから大丈夫」

「さいですか」


 ちなみにこのゲームには鳳凰もいるが、朱雀と鳳凰は同一の存在らしい。他にも同一の存在を違った宗教から見た結果、別々の存在として扱われるデビルとかもいてややこしいのだ。


「三体目、西を守るは気高く美しい、白虎!」


 次はどんなパチモノが出てくるのかと期待していると、今度は羽根の生えた白くもない虎が出てくる。


「白くないけど、虎だし、羽根生えてるし多分聖なる虎でしょ」

「羽根の生えた虎……? ってこれキュウキじゃねえか! 四神どころか四凶だよ、邪悪な存在だよ!」

「あちゃー、邪悪な存在かあ。でも大丈夫よ、アタシの渾身のパンチで服従させたから、多分黄龍パワーが染み渡って聖なる存在になってるわ」

「……で、最後は?」


 彼女の話を聞いていると頭が痛くなってくる。そんな俺の苦悩も知らず、黄龍は最後の一匹である玄武、もといアスピドケロンを召喚した。鯨を見てびっくりした昔の人が、巨大な亀だと思った事で誕生したらしい。


「そして中央に位置するは、このアタシ黄龍! どう? カッコいいでしょ?」

「何かカッコいいをコンセプトにしてきた俺がアホみたいに思えるからやめてくれ」


 自分を客観的に見た気分になって落ち込んでいると、ラボちゃん達もデビルを集めてきたらしくやってくる。あーちゃんはニコニコとしているが、反対にラボちゃんは凄く落ち込んでいた。


「二人とも、いいパーティーできた?」

「うん! えーとね、きりんさんに、ぞうさんに、らいおんさんに、おうまさん!」


 あーちゃんはニコニコしながらデビルを召喚し始める。麒麟キリンさんにアイラーヴァタさんに獅子バロンさんにおユニコーンさん。かなり強力なデビル達だ。


「すごいね、全員かなりのレアデビルだよ。よくゲットできたね」

「よくわかんないけど、みんなあつまってきたの」

「皆聖なるデビルだからね、純真な心を持つあーちゃんに惹かれてきたのかな」


 ユニコーンに跨るあーちゃんを見て自分も乗ってみたいと思い近づくが、ユニコーンは俺を容赦なく後ろ足で蹴り飛ばした。


「いてて……俺も昔は純真な心を持っていたのになあ」

「アタシは乗れたけど?」

「ユ、ユニコーンは清らかな女の子にしかなつかないって言うしね、別に俺が清くないわけじゃなくて、男だから乗れないだけで……そうだ、ラボちゃんも乗りなよ。ラスボスの精霊なんて邪悪な存在が乗れたら、こいつはただのエロ馬ってことになるからさ」

「はぁ……」


 拒絶されることなくユニコーンに乗ってニヤニヤしながら見下してくる黄龍に歯ぎしりをしながらラボちゃんに声をかけるが、先程からどうも元気がないようでため息ばかりついている。


「どうしたのさラボちゃん」

「……私のアイデンティティって何? 私はラスボスなの? 精霊なの? 死神なの? 鎌使いなの?」

「そんな事言われても……」

「コンセプトが定まらなかったの。結局中途半端なメンバーになってしまったわ。はぁ……」


 童心に戻った俺はともかく、どうしてラボちゃんがコンセプトとかに拘っているのかはわからないが、確かに精霊のウンディーネ、死神のアンクー、鎌使いのカマイタチとバラバラだ。ラボちゃんはラボちゃんじゃないかと慰めようと思ったが、何だかありきたりな言葉すぎて言うのを躊躇ってしまう。


「そんなことより、さっさと交換しに行きましょう? 本物の四神を揃えないと」

「利己的な女だな……」


 ラボちゃんの悩みをそんなことと一蹴し、近くにいた残留思念の少年に四神をよこせと詰め寄る黄龍。交換どころかカツアゲじゃないか。



 ◆ ◆ ◆



「やった、これで図鑑が全部埋まった! ありがとう、お姉ちゃん!」

「いえいえ、アタシもこれで四神が揃ったわ」


 その後魔界中を駆け巡って、残留思念と対戦をしたり交換をしたりしながら成仏させていく。割と地味な作業で途中から飽きてきたが、対戦も交換も乗り気な黄龍が俺に代わって仕事をしてくれた。恋人がこんなに役に立つ存在だとは思わなかった、恋愛って素晴らしい。


「お疲れ様、後はそこにいる男の子でおしまいよ」

「あいよ、今回は割と簡単な任務だったな……あれ、こいつどこかで見たような」


 戦ったり、交換したり、ゲームについて語るだけで満足してくれるのだから楽なものだ。それにしても、最初こそ思い出のゲームだからとテンションがあがっていたが、途中から段々と尻すぼみになってしまった。数年前のゲームを数年前と同じ気持ちで体験することは、残念ながら俺にはできなかったようだ。

 さっさと終わらせて元の世界に帰り、最新のゲームを最近の気持ちで楽しもうと最後に残った男の子を見る。既視感というやつだろうか、俺はこの子を知っている。


「クラスメイトの園田君じゃないの?」

「ああ、確かにクラスにいたな。全然話したことないけど。君、園田君?」


 ぼさぼさの髪で目を隠している空気系男子で、誰にも話しかけない、話しかけられない、典型的なぼっちの園田君。男の子に問いかけると恥ずかしそうにコクリとうなずき、対戦をして欲しいとデビルを召喚し始める。


「うお、滅茶苦茶ガチパじゃないか、かなりのゲーマーとみた。ふふ、忘れかけていた少年の心を思い出してきたぜ、全力で戦ってやろう」


 今までは対人戦に慣れていない連中ばかりだったため俺が手を下さずとも勝てるような相手だったが、少年時代の園田君のパーティーは大会に出てもかなりの成績を残せるような計算されたパーティーだ。クラスにこんな逸材がいることに感謝しながら、俺も自慢のデビルを召喚し、全力で彼の相手をしてやる。


「……負けちゃった。でも、対戦って楽しいね!」


 数分後、彼の最後の一匹を撃破して決着をつける。悔しそうで嬉しそうな園田君の身体が段々と薄くなっていく。どうやら彼も満足して成仏していくようだ。


「君もなかなか強かったよ。そうだ、友達になろう」

「本当? 約束だよ?」


 一度戦えば戦友、ガッチリと握手をする俺達。やがて園田君はキラキラと光の粒子となって消えていった。


「泣ける話じゃないの、これにて任務完了ね。でも根本的な問題は解決してないわ」


 ぱちぱちと拍手をしながら、依頼の終了を告げるラボちゃん。


「根本的な解決?」

「ぼっちがいる限り、彼等は生まれ続けるのよ。こんなの応急処置にもならないわ」


 確かにラボちゃんの言うとおり、こんなのは氷山の一角でしかないし、こうしている間にもぼっちゲーマーの無念は次々発生していくのだろう。


「それはどうしようもないなあ……あ、でも一人は救えそうだな」

「それより、図鑑を埋めましょう!」


 随分とこの世界にのめり込んだようで、帰りたがらない黄龍。もうすぐ新作が出るから一緒にやろうぜと言いくるめて、俺達は現実世界に戻るのだった。



 ◆ ◆ ◆


「雨宮よー、友達に聞いてみたけど、皆してガキ臭いからポケデビ買わないってよ。昔はほとんど皆やってたのに、年をとるって悲しいもんだなあ。お前は強すぎて相手にならねーし、ネットで対戦すっかなあ。でも、やっぱゲームってのは顔を合わせてやるもんだよなあ、ピンチになったら他人のコントローラー引っこ抜くとか、最近のゲームにはそういうのが足りねえんだよ」


 翌日、教室につくと友人がアンニュイな顔で語りかけてくる。ピンチになったら黄龍にリアルでKOされる俺としては、そういうのは足りなくて結構。


「実は黄龍に初代ポケデビやらせたらハマったらしくて、新作も買うんだよね」

「へえ、恋人を俺色に染めるってやつか。やるねえ」

「……あ、そうだ」


 俺は教室の片隅で窓の外を眺めている少年の元へ向かうと、声をかける。


「なあ園田君。園田君って、ポケデビの新作買う?」

「え? あ、うん。買う、けど。よくわかったね」


 俺に話しかけられるとも、ポケデビの話題を振られるとも思っていなかったようで恥ずかしそうに受け答えする園田君。


「何となく君からはゲーマーの匂いがしてたんだよね。他には何やるの?」

「割と、オールジャンルに。RPGとか、SLGとか、考えるゲームが得意かな」

「あ、何? 園田もゲーマーだったの? それなら早く言ってくれよ、クラスに話せる奴がこの廃人くらいしかいなくて寂しかったんだからよ」

「あはは、僕は雨宮君程コアじゃないけどね」


 初めて彼の笑う姿を見たような気がする。こうして俺は少年との約束を果たし、、一人のぼっちゲーマーが救われたのだった。めでたしめでたし。


デビル共を画像検索したらソシャゲの擬人化カードの絵ばかりで切なさ乱れ撃ち

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